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中学受験で公立校との併願はなぜ少ない?最近の併願のトレンドは?(塾講師による「二月の勝者11巻」読書会①)

自律学習サカセルの講師一同は、週刊ビッグコミックスピリッツに2018年より掲載されている漫画「二月の勝者」を愛読しております。
この漫画、綿密に取材され、中学受験業界を面白おかしく、とてもリアルに描写しているから塾講師が読んでもおもしろい。

そこで、自律学習サカセルの講師、三宅、増田、夏田の3人によるこの漫画の座談会を通じて中学受験と中学受験塾業界についてご紹介したいと思います。(各講師のプロフィールは自律学習サカセルHPよりご覧ください。)


中学受験で私立と公立の併願はあまりない?

ー今回は島津君の関連で公立校の話が登場しました。皆さんは私立と公立を併願する生徒を担当したことはありますか?

夏田:自分はないです...

三宅:集団塾で教えてた時は3日に桜修館受ける子とかいたけれど、あんまり勧めないからな―。

増田:僕も自分から勧めたんじゃなくて、受けるって言っているから対応するのがほとんどです。

増田:対策する方法が私立中学と全然違うんですよね。

三宅:適性検査という形で算国理社の学力よりも、与えられた資料を読み解くとか、自分の考えを書くという点数化しにくいものを試験内容にしているから、明確な対策を立てにくいな。まあ、自分の経験不足かもしれないけど。

夏田:塾によってはコースが根本的に違いますよね。

三宅:島津君は地頭が良さそうだからチャンスあるかな。

ー公立校の魅力とは何なのでしょうか。

増田:例えば小石川中等教育学校だったら、目指しているところは開成と同じなんですよね。

三宅:実際今年は大学受験の実績は良くて卒業生110人くらいで東大10数人だったから、率としてはかなり良くなってる。そういう教育の実験、拠点校になっているから、先生も熱意のある先生が多いらしい。

夏田:あとはもちろん学費の面は挙げられますね。

三宅:立地もそれぞれ割といいところにあるよね。各地域の拠点になるところにあるだろうから。

夏田:都内の場合ですけどね。

ー学校によってはスーパーサイエンスハイスクールに指定されていますが、何か利点があるのでしょうか。

夏田:自分が学生時代にいたところはそうでしたけど、特別なことはなかった気がしますね。

夏田:月に1回科学のえらい先生が講演にきてくださって、感想文書いて終わりでした。

三宅:まあ、学校の運営面の利点が多いような気はするなー。

増田:肩書よりも中身をしっかり見ることが大事ですよね。

ー私立と比べて面倒見の良さはどうですか?

増田:大抵良くはないと思う。

増田:どうしてかというと、公立だから転勤があるからなんですよ。だから卒業後何年かして遊びに行っても恩師がいないという状況が普通にありえる。

増田:それに公立のトップ校だったりって多くあるのが放任なんですよね。手をかけているアピールをしているけど、実際は面談を1回やって終わりなんていうのはよく聞きますね。

ーそれでは公立向きの生徒というのはどういう子になるのでしょうか。

増田:6年から受験勉強始める子。

三宅:俺もそれがドンピシャだと思う。

三宅:知識の量というところで合否が決まるわけではないから、受験勉強のスタートが遅れても、考えること、書くことに力があると思ってるならチャンスがあるんじゃないかな。

三宅:実際見た目の倍率はすごい高いけど、記念受験みたいな子もたくさんいるしね。

増田:1年で論理思考がついて、ちゃんと割合のことを理解したり、表・グラフとかを読めるようになったり、作文や記述が出来るようになったりという、その後にも繋がる勉強ができますしね。

増田:地頭がいいかというよりは、真面目に勉強できる子がいいのかもしれないですね。

増田:問題自体は難しくないので、言われたことをやって、受験したいというモチベーションがあれば十分に戦える気がします。

ーそうすると私立と公立を併願というのは結局少ないんですか?

三宅:やっぱり準備の質が違うからな。ほとんどないんじゃないかな。

三宅:国立の方がまだあるな。

最近の受験はますます忙しくなってきている?

ー併願決めというテーマの延長線上で、複数校を同日に受けることについて聞きたいと思います。最近これは増えている傾向なのですか?

三宅:今のトレンドとしては午前午後受験は当たり前になってきていると思う。

三宅:それはまず人気のある学校が午後受験を設けるようになったから。午後受験の学校って発表の早い学校も多いこともプラスに働いている。

三宅:要は早い日程、つまり1日の夜とか2日の夜の段階で進学してもいい学校を確保できる。それによって3日以降の併願戦略をより柔軟に立てられるようになっている、というところがとても良いポイントだと思う。

夏田:学校側からしても受験日を増やして受験者数が増えることにはいいことがあるんですよね。まず、「今、人気の学校」みたいに特集されることもありますし、受験料の収入を得ることもできます。巣鴨なんかはこの方式で復活した学校ですよね。

三宅:巣鴨は1日の午後に算数受験という、流行りにそのまま乗っていく形。午前に開成受けて、午後に巣鴨を受けるというのは移動部分も楽になってて、受験生にとってはいい制度になったと思う。

三宅:桐朋も「できる子」を持っていかれてたけど、2月2日に受験日を作ることによって、人気、偏差値ともに戻している感じ。サカセルの周りだと世田学もそう。

三宅:今までは1日の午後に高輪しかなかったからね。

三宅:女子も、1日の午後の普連土が算数1科目で上位の子を囲いに行ったり、香蘭も1日だけだったのが、1日の午後に2科の試験を作って附属校狙いの子に来てもらう工夫をしている。2日の午後の時点で進学先が取れているかどうかによって柔軟に対応できるのはメリットだと思う。

三宅:デメリットとしては金がかかることかな。

増田:後は体力を使うことですね。1科目だけの試験でも新しい場所での試験、移動時間も考えるとしんどいんじゃないかな。

夏田:次の日もありますしね。

三宅:まあでも、子供たちは2日の午後ぐらいまでは元気よ。親御さんもテンション高くて大丈夫。4日の待合室あたりで親御さんが力尽きる。

増田:3日に現実を知って、4日に心が折れそうになる方が多い。

増田:3日は御三家チームの結果が出始めますからね。

三宅:でも10年くらい前だったら2月3日の朝の時点でまだどこも合否分かってないからね。みんなそこまでも不安だったと思う。

増田:その時点では武蔵しか分からなかったはず。

三宅:男子だったら、東京、神奈川御三家を受けている生徒は3日に浅野受けているか、筑駒受けているかだと思うけど、1日2日の合否を何も知らない状況だった。それで気が散っちゃってという子は実際多かったから、そういうのを回避できるメリットが午後受験にはあるよね。

増田:学校にとっても起死回生の一手だし、受験生にとっても、日程的に厳しかったところを受けるチャンスができますからね。懸念点は体力と金銭面だけですかね。

増田:ただ、何回も受ければ受けるだけいいかというと、そうではない。2月1日とかに行かせてもいいなって思える学校のラインナップが増えてきたので受験後半の日程ではそんなに午後受ける必要はないんじゃないかなと思いますね。

増田:4日とか3日とかになると「とにかく1勝」となるので1日、2日の午後までとは意味合いが変わってくるかなとは思う。

三宅:1日、2日までは午後まで受けるけど、3日以降は不透明になるかな。平均出願数に関してはデータみないと細かいことは分からないけど、10年前よりは増えているんじゃないかな。ただ、コロナで減ったとは言われてるけどね。

ー全般的に受験が忙しくなってるのですね。

三宅:1日の段階で次の日どこ受けるか分からないということが往々にしてある。

夏田:受かったらどうする、落ちたらどうするという分岐図を書く家庭も多いですね。

三宅:昔よりは組みにくくなってるな。

夏田:僕の場合生徒の気持ちも考えて、1月校で難易度が低いところをおすすめして1つ合格を取れるようにすることもあります。また、1日、2日の午前午後で絶対受かる学校を入れるようにという風にはしますね。1日の午後受験の結果で、2日の午前受験の学校を変えるということもありえますね。

増田:昔は「お守り」っていいましたね。合格があればあるほど自信になるんですよね。

増田:子供って不思議なもので合格って見るほど変わるんですよね。逆に不合格が並ぶと何も受かる気がしなくなってきてしまうので、1月で1つ合格を取らせて挙げたいですね。「片目が開く」なんていってました。

増田:片目も開いてないとかなり危険ですね。

三宅:人によるけどね...1月は1校だけといって、不合格でも気を引き締める家庭もいるだろうしね。俺も1つは合格取らせてあげたいけどな。

三宅:合格を取る学校と、落ちたら厄落としのチャレンジという学校と1つずつという組み方をするケースが多いかな。

ーそのほか親御さんに併願校をおすすめするときに気を付けていることはありますか?

三宅:選択肢の数が多くなったからといって、受ける学校の数をむやみに増やすと対策が薄くなって逆に心配。だから例えば、本郷を受けるんだったら、1日,2日,5日と複数回受ける。残り2つの日程も出来る限り対策のする必要のない学校かもしくは3日、4日とか午後に同じ学校を受けるようにしている。とにかく対策がばらけないようにというのは意識している。

増田:国語を担当している僕の場合ですけど、作文が来ても記述が来ても「やることは変わらない」ので「三宅先生のGOサインが出るか」を重要視しています。中学受験において、一番壁があるのは算数です。算数だったり、理科だったりで生徒によってはどうしても「向いてないパターン」があるので、そういう学校をなるべく避けた形でプラン提案するようにしています。

増田:一般的には国語の先生って「記述の多い・少ない」で色々決めるんですけど、うちは基本的にそうしないですね。

三宅:あとは複数回受験の優遇がどのくらいあるかも気にしてる。ボーダーの際に優遇する。各回の一番いい点をとって判定する学校などがあるね。

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今回は併願校決めを中心に話してきました。

島津君のような「私立の受験を考えて中学受験塾に通う生徒」にとっては、公立校の併願というのは対策も異なるため、珍しいケースと言えそうです。

しかし、習い事などで受験勉強のスタートが遅れた場合は選択肢の1つとして考えてもよいと言えるでしょう。

また、近年の中学入試では、午後に受験日程を作る学校が増えてきています。生徒にとっては選択肢が増え、3日までに合格がもらえる可能性が高まったというのは安心材料ですが、忙しさや金銭面、体力面でより管理が難しくなってきていると言えるでしょう。

そこで大切になるのが直前期の日程をしっかりと組み立てシミュレーションをすることです。二月の勝者の中でも予定表が登場しました。次回はその予定表に組み込むべき内容、直前期に家族で決めておきたいことなどを中心に話します!

個別指導・家庭教師の
自律学習サカセル

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