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志望校はどう決める?小学生の夢or偏差値?(塾講師による「二月の勝者3巻」読書会①)

自律学習サカセルの講師一同は、週刊ビッグコミックスピリッツに2018年より掲載されている漫画「二月の勝者」を愛読しております。
この漫画、綿密に取材され、中学受験業界を面白おかしく、とてもリアルに描写しているから塾講師が読んでもおもしろい。

そこで、自律学習サカセルの講師、三宅、増田、K・Mの3人によるこの漫画の座談会を通じて中学受験と中学受験塾業界についてご紹介したいと思います。(各講師のプロフィールは自律学習サカセルHPよりご覧ください。)

小学生の夢を元に中学受験の志望校を決めることはそもそもない?

ーまずは3巻に登場するフレーズをテーマに進めていきたいと思います。「小学生の夢なんかを志望校選びの理由づけにしていませんよね?」という言葉がありますが、皆さんは塾講師として自分でもこれに賛成ですか?

K・M:夢の定義って将来の夢?やりたいこと?

ー小学生でやりたいことを具体的に業務内容などで言語化できている子は多くないと思いますので、職業ということになると思います。

K・M:自分は勉強すれば何でもいいかな、って思います。勉強の動機になれば。将来の夢というよりもよくあるのは野球をやりたいから早稲田実業に行きたいとかなんですよね。

K・M:最近電通に入りたいという男の子はいましたが、具体的な夢を持っている小学生の方が少ない印象です。漠然としている子が多いかなと思います。

K・M:そもそも将来の夢の話を小学生が教室で話しているの聞いたことはないですね。なので、実際に小学生の夢を志望校選びに使うことも、提案することもほとんどないですね。

増田:僕も教室では聞いたことないですね。

三宅:僕は一応授業で聞くよ。単純にネタ作りとして。

増田:実際、サカセルでもそうだし、前の職場の時もそうですけど、将来の夢って何ですかって聞いて、一番出てくるのって医者なんですよ。医者が親族にいるご子息が多いからというのが1つと、単純に憧れられる職業だからというのがあって、医学部に行きたいですという女の子が特に多い印象ですね。

増田:法学部に行きたいですという人は聞いたことがないですね。

三宅:子どもにとって将来の夢っていうのはあくまでも子どもが経験したものにしか結びつかないと思う。だからYoutube見てユーチューバーになりたいとなるのが自然。そんな小学生から弁護士にお世話になってる子はおらんのよ。

三宅:結局親の職業とかを見てそれを選ぶとかしかないんじゃないかなと。

増田:だからお弁当食べてる時に俺〇〇になりたいみたいな話よりお前どこ受けるの?という方が聞く気がする。

三宅:結局小学生の夢なんてどうせその後経験積むにつれて変わってゆくと思うから、志望校選びの理由づけにはならないと思います。

三宅:小学生、子どもの夢というのは半分親の夢。親がこういう仕事があるよって提示したもの。その中で子どもが選んだものにすぎないと思うし、学校選びの基準にはならないけど、親の夢というか親の希望として、開業医ののご子息とかだったら、数千万かけて自分が作った病院を自分の代で終わらせるわけにはいかんのよ。開業医というのは2代目にならんと儲からんていうしね。やっぱり医学部に子どもに行ってほしいとなった時には志望校選びとして限られてくることはある。

三宅:例えば、その場合は早稲田の付属校に行くことはない。あと英語に強いとかそういう学校だったら理系への進学部分が弱くなったりすることがあるから、お医者さんを目指している場合は理系への進学率、医学部への推薦枠が多いような学校を、提案するところまではあるかなあとは思うけど、それは親主体の話。

増田:そもそも中学入試から入れる医学部ついてる付属校ってほとんどなくて、偏差値順には、慶應、日大、東海くらいなんですよね。しかもその間にすごく差があるんですよね。だから付属校もあまり行かない。

三宅:防衛医大付属とか国立医大の付属あったらいいにね。

増田:それだと防衛大付属が先になりそうですが...まあ、結局どうしても医学部のことを考えたときにそういう付属校事情があったうえに、慶應とかでも内部進学枠がすごく狭い。15くらいしか枠がない。だから慶應に入ったからって医学部に行けるわけではない。結局進学校寄りのチョイスになることが多いんですよね。将来医学部志望予定だと。

ーそうすると結局医者を目指す子を含めて、常に偏差値の高いところを目指すべきという話になるのでしょうか?

三宅:よく言っていることだけど、選択肢を狭めないためには上位校に行った方がいい。そっちの方が周りのお友達の影響もうけて、より上を目指すような環境もあるんじゃないかなという話をする。

増田:俺は東大じゃないと出世が遅れる職場がある話をします。官公庁のことですけどね。

増田:そもそも東大9割、他の学校1割の世界だから、じゃあ上にあがるという話になった時に、自分の出身大学のやつとそうじゃないやつどっちあげるかみたいな話とかになって、中学受験の時に自分が選んだ学校で有利不利決まっちゃうことがある。それならなるべく可能性をひろげた方がいいんじゃない?という話はします。アプローチは違いますが、三宅先生と結論は一緒ですね。

ーちなみにこの新入社員のキャラクターのような悩みは皆さんにはありましたか?

一同:いやなかったね~

三宅:彼女は設定的に中学受験をやってないから夢持ってるんじゃないかな?

増田:俺は忙しくてそれどころじゃなかったですね。

増田:塾講師もっとスレてるやつが多いっすよ。
  
ー生徒の言っていることが変わりやすいという話が1巻の読書会でありましたが、これも生徒の夢をあてにしてはいけないということに繋がってきますよね。

増田:変わらないのは志望校だけかな。第一志望校だけ。

三宅:いや、結構変わるで。自分が見てた人でもSS始まった時までは、慶應普通部と言ってたのが、10月くらいに麻布とか言われたことがある。

増田:それは、僕がいた塾が前期から志望校別のクラスを立てているからということもあるかもしれないですね。早稲アカは名前を付けたコースを設置するのが早いんですよ。

増田:だから生徒の第一志望校への思い入れが強くなるのかもしれません。まあ、担当があの手この手でその学校の良さを語るんですけどね。

そもそも志望校を小学生が自分で決めることはあるのか?

ー自身の夢とか関係なく、「あの学校に行きたい」と小学生が決めるものは提示されたものの中からということが多いのですか?

増田:本当に塾は環境が人を育てるいい例ですよね。開成の「か」の字もない生徒がなぜか合格しちゃったからそのコースに行ってみて、自分の偏差値がある程度あって、本当は海城くらいでいいかなって思っていたけど、開成目指しますみたいなケースって普通にあるし。

三宅:夢とかそんなのよりも、自分の成績で受かる可能性のある学校。その中でいろんな情報を得て選択していくだけの話だからね。

増田:三宅先生みたいに超、超トップ層だった人は違うかもしれないですけど、数字持ってる人は当然ここ狙うでしょ。みたいな雰囲気があるかも。俺は自分で選びましたちなみに。

K・M:自分は高校受験の時は自分で選びましたね。アメフトがある学校みたいな感じで、中学受験に関わっていても野球をやりたいから早稲田実業、だから早稲アカに入りましたという生徒はいるんですけど、結局、野球って親の影響なんで...

三宅:でもそうは思っていても、子供が自分で何も無いところから見つけてくるってことはないんじゃないかな。結局親に見せられたり、塾で話題になったり。

ー自分は塾に来た先輩に話を聞いて自分で志望校を決めた口なのですが、それはあまり多くないのですか?

三宅:日能研だったらOB・OGと会う会を設けてやってくれるからきっかけになるかな。SAPIXは勝手にくるだけだね。

K・M:早稲アカはそういうことないですね。

増田:そうなるとやっぱり、親と塾以外の情報を得る手段があんまりないんですよね。で、そこで意外と偏差値の依存度高くなるんですよ。

増田:自分の偏差値を見て、そこより上しか狙わないんですよね。

三宅:うん。実際、自発的な生徒も偏差値表を見て、その学校の案内をちらっと見て、文化祭行くは親にお願いしてというぐらいないんじゃないかな。

ー結局、小学生が自発的に選んでいても環境によって選ばされているという状況なのですね。

増田:たまたま家の前に憧れの学校があったとか、そういうケース以外無いんじゃないかな。でも、結局その家も親が狙って引っ越したなら親の影響だし、先祖代々この家に住むみたいのがあって、伝統的にそこにいてたまたま気に入ったとかなら違いますけど、そうじゃなかったら、やっぱり親と塾の恣意が入るんですよ。

増田:子供が自立しててもその自立している子が得ている情報が親や塾に作られてることが多い、ネットニュースと同じ状況です。

増田:実際、1番上のクラスとかにいて、俺、偏差値40の学校が第1志望なんだなんて言ったら、「は?」ってなりますよね。

増田:僕は別に1位とかじゃなかったんで、偏差値表の自分のところより上見てたんですけど、三宅先生はどうだったんですか?

三宅:自分の偏差値的に合う学校。

増田:上じゃなくて同じラインか下ですか

一同:(笑)

三宅:とりあえず偏差値が一番上の中で、「自由」って書いてあるか、「厳しい」ってかいてあるか。選択肢なんてそれだけ。

増田:やっぱ、覇者の発言は違いますよ。

三宅:でもSAPIXの上位の子なんてそんなもんじゃないか?実際試験当日になって開成に初めて足を踏み入れました、なんて子も普通にいるし。

三宅:実際α1(※SAPIXの最上位クラス)で攻玉社を受けますという生徒はおらんからね。それどころか、開成以外だったらざわっとする。

偏差値にとらわれずに目指すべき学校...?

ー常に偏差値の高い学校を目指すべきってさっきも出ましたけど、例外的な学校ってありますか?

増田:武蔵と麻布...自由だから。

三宅:後付属校じゃないかな。

増田:あとは、生徒の親が通っていた場所。

K・M:国立系もですかね。

三宅:流行りの公立中高一貫校もね。近くて安い。

三宅:でも実際、普段中学受験塾で使っている偏差値とはまた違う指標で試験問題が作られて、評価がされるから教えていることがそのまま結びつきにくいし、あまりオススメしないかな。

ーでは完全に向いていそうな子どもにだけこれらの学校を勧める形になるのでしょうか?

増田:学芸大の例だけ挙げると、結構残酷な結果になることが多いんですよ。あそこって、大泉が抜けて、世田谷、小金井、竹早で、どこが一番学芸大附属の進学者出したかっていう競争をずっとやってるんですよね。年によって竹早が一番多いとか。それまでは世田谷が一番いいとか。

増田:これで何が起きるかっていうと、大体、よくて半分進学者みたいな中で、残り半分は内申点もさして良い点数が付けられずに外の高校を受験しなければいけない状況になるんです。だから、まじめに自分で勉強できる子以外は実はあまりオススメしない方がいいんじゃないかなと思います。これ実際早稲田アカデミーなんかでもよく見た光景です。

増田:筑波大附属なんかだと中学校の間は校則が厳しいんですけど、そこで引き締めた生活を送ってもらって、高校に入るっていう形になるかな。で、学芸大附属ほど残酷に外には出させられない。

増田:結局、ある程度生活の安定みたいなことを考えるなら、筑波大付属以上を狙わないといけないのかな。で、お茶の水女子大は適性検査になったんですよね。

三宅:はい。

増田:お茶の水女子大附属中学は男子も入れるんですけど、男子は高校ないので受験確定。女子もですけど、適性検査になったので事情変わってくるかなという感じですね。結局中高一貫と公立中高一貫と変わらない状況になってるかな。

三宅:ただ、やっぱりこの進学塾っていうのは私立の中高一貫校を目指すためのものだから、また別物かなと思う。

増田:試験の種類が違うのでやらなきゃいけないことが変わるんですよ。

K・M:早稲アカも専用の別のコースがありますよね。公立中高一貫用の。

増田:難関私立はSAPIXが鉄壁なんですよね。で、難関中高一貫公立は早稲田アカデミー以外ではenaが強いですよ。

三宅:強いというかやってへんからなよそが。実際対策やってもしゃーないからなそういうところ。

増田:一番見た目上の数字が良さそうに見えているのがそこ。で、早稲アカがそこのシェアを取りに行こうとして、小石川講座を設置して、みたいな話になっていますね。

増田:まあ、国公立に行ったからって、幸せとは限んないということです。外に出されるかもしれないし、塾漬けになるのが前提だし。

増田:単元終わらないとこが多いんですよ。中3までに。進度公立と変わらないのに、終わらないんですよ。塾に行っていることが前提になってるからね。だからそもそも積極的に勧めることは少ないかな。

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さて、今回は「小学生の夢なんかを志望校選びの理由づけにしていませんよね?」というフレーズから、

- 塾講師はそもそも小学生の夢をあまり教室で聞かない。→実際志望校選びの理由づけにはあまりしない。
- 小学生は自分で志望校を決めているようでも、やはり家族や塾に進路を規定されている。そして特に偏差値の影響が強いのではないか。
- 自由であるという御三家の学校や国立、公立など偏差値に縛られない学校もあるが、サカセル講師はいつもお勧めするわけではない。

という話になりました。

そういえば、延期されていた二月の勝者の放送は10月に決定しましたね!漫画の方も佳境に入ってきて今後どのような展開になるのか楽しみです。

次回は、「偏差値55と60の断絶」についてをテーマにして話した内容をお届けしたいと思います!それでは!


個別指導・家庭教師の
自律学習サカセル

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