見出し画像

黒木先生はいい塾講師?(塾講師による「二月の勝者1巻」読書会①)

自律学習サカセルの講師一同は、週刊ビッグコミックスピリッツに2018年より掲載されている漫画「二月の勝者」を愛読しております。
この漫画、綿密に取材され、中学受験業界を面白おかしく、とてもリアルに描写しているから塾講師が読んでもおもしろい。

そこで、自律学習サカセルの講師、三宅、増田、K・Mの3人によるこの漫画の座談会を通じて中学受験と中学受験塾業界についてご紹介したいと思います。(各講師のプロフィールは自律学習サカセルHPよりご覧ください。)

二月の勝者は講師目線で読んでもとてもリアル

―「二月の勝者」は巻末の参考にたくさんの書籍が挙げられているように、業界の調査をもとに描かれているようですが、塾講師から見てどう感じられますか?

三宅:実際によくいる例が多くて、「実例を元に作っている」と感じられる作りになっている。
一般保護者から見たらこんな子いるのかなと思う子も「ああ、こいつこいつ、こんな子おったわー!」という子になってる。

増田:まだ出てない子だとLD、ADHDの子ですかね。

K・M:加えて、親の描写がリアルなだけでなく、講師的には親子の組み合わせのあるある感が強いです。

K・M:あと講師目線だと、やっぱり黒木先生の退塾防止の動きはリアルです。塾では退塾率が1%切ったら「神」とされるため、黒木先生は社員として尊敬できるやり方です。退塾率は校舎ごとに数値が出てきて、時給に影響があるところもある。

―では先に各生徒とその家庭に焦点を当てて詳しく聞きたいと思います。サッカー少年の三浦君はどういう生徒のパターンなのでしょうか?

三宅:彼は、親の希望がすごく強いし、親側は客観視できてるんだけど、客観視したくない。現実は見たくない。でも、それを第3者から明確に言われると納得せざるを得ないというパターンかな。

増田:これ(納得)するパターンとしないパターンが現実にはあるんですよ。しないパターンはお前のところはノウハウがあるんだから黙って志望校に受からせろという態度を取る。

三宅:この三浦君のところはパパが自分の行動を振り返ってるからそんなに悪い感じではないよね。

ーということは三浦君が実在したらよい結果の期待が持てるパターンなんですか?

三宅:えっと...生徒自身が納得して習い事をやめている生徒は伸びるケースが多い印象。ただ、この子の勉強的な素質がどんなものかは正直わからん。ただ、勉強させるスタートの立たせ方としては適切だと思う。

三宅:納得して習い事を「やめる」のと「やめさせられる」のは状況が全く変わってくる。

三宅:納得してないと、例えば、日曜日に野球やってた子が野球をやめてじゃあ日曜日野球と同じ時間勉強するかっていったら、ずっと同じ時間ただただボーっとして終わるなんてことはよくある。それで、親と喧嘩して、夕方勉強できてた時間すら勉強しなくなるなんてこともありがち。

増田:ただ「俺この塾入りたい」って言っているので、三浦君は意志が見えるんです。で僕よくいうんですけど、意志がない生徒は本当に最後に馬力がない上に頭使わないんですよ。彼はその逆で、これを見る限りではうまく行きそうですよ。

ーでは今度は窓の外を見てぼーっとしていた加藤君について。彼はどんなタイプでしょう?

三宅:この子に関してはデフォルメしすぎたような気がする。ただ、電車が好きで時刻表見てるからそれが成績に直結ということは少ないかな。もちろん、興味、スタートという点では重要ではあるけども。

K・M:ただ、意志はありますよね。先ほどの三浦君と同じで。

三宅:最初の時点ではどうだっけ。確かなかったんじゃなかったっけ?親に言われたから塾に通って、ただボケーっと座ってるだけ。外の電車を見てるだけ。

増田:まずね。そんな黒木の一言でぱあーっと気持ちが動いたように書いてありますけど、現実では言われてきっかけになって、じわじわ気づくだけなんですよ。

ーじゃあこのステップは本来もっと時間をかけて行われるものなんですね。

増田:そうなんですよね。

K・M:しかも、本来だったら小学校5年生とかでやっておかないといけないステップですよね。

増田:6年だと多分(時間的に)きついんすよ。

K・M:4、5年生の段階で親とかから面談で言われて気が付くならば良い傾向なんじゃないでしょうか。

ーでは4、5年生からこのような気づきをもって意志をもって6年生になるパターンはよく見られるのでしょうか。

増田:上位層は多いです。

K・M:上位層に至るまでの成績上昇のタイミングは人によるんですけどね。

三宅:やる気が出た場合、それが5年の前期だったら、5年の後期にぐっと伸びるんじゃないかな?

増田:やる気が出てから結果がでるまでタイムラグもあるし、実際結果は安定してでるわけじゃない。鉄道研究会を目指すと言ってからこの子一回も失敗してないんですよね。それは普通あり得ないんだよな~。単元とかで得意不得意あるし。

三宅:鉄研は面白いけど勉強はべつやしなー。まあ、そういう所も含めてここはフィクション感が強すぎるかな。

増田:この段階だと伸びるかちょっと怪しいですね。

増田:実際は口だけの可能性があるんですよ。ああ鉄研面白そう!って言って家帰ってずっと寝てる生徒とかいますし。

三宅:鉄道に興味がある→じゃあこの学校に入らなきゃいけない→じゃあ勉強しなきゃいけないって段階は普通に考えて踏めないと思う。
それができるんだったら文化祭に行ってみるだけで十分だしね。

増田:自分の行動に責任を持ちなさいといって子どもは普通持たないですからね。

ーでは、ストーリー的にみたらもう彼のその先は明らかになっていますが、塾講師からみたら普通この子の将来はこの時点ではよくわからないんですか?

増田:分からないですね。

ーそのまま結構普通に読んじゃってうまく行きそうかななんて思っていたんですけどそうじゃないんですね。

増田:いつも言うことなんですけど、集中して勉強する時間がどれくらい積みあがってるかなんですよ。で、それが見えてこないと分からないかな。いろんなところで。テストの結果とか。宿題の精度だったりとか。

黒木先生は塾講師として適正がないのでは?

ーさて、今度は黒木先生について聞きたいと思います。「勉強ができない生徒の気持ちがわからない」と言っていますが、こんな先生はよくいるものなのでしょうか?

三宅:手を挙げる✋

一同:(笑)

三宅:気持ちはなんも分からん。でも共感で成績は上がらんのよ。そうじゃなくって、「できないことに共感する」よりも「なんでできないのかを分析してできるようにする」のがうちの仕事だから。

三宅:だから優秀な東大生たちで教えられない人がいるとしたら、解くことはできても「まず気持ちが分からん。しかもどうしてできないのか分からねえよ」というのが仕事にならない部分じゃないのかな。

ー結局黒木先生は気持ちが分からないからと言ってひどい先生ではないと。職業適正として問題ないということなのでしょうか?

増田:(できない生徒の気持ちが)分かった方が有利だとは思いますよ。俺は分かるから。わかんない人でも仕事はできるんですけど、分からない人は三宅先生みたいに一工夫入れなきゃいけないんですよ。

増田:分析するってのが一工夫だし、別にどんな人が塾講師をやってもいいんじゃないか思う。ただ、この黒木先生はこれだけコミュニケーションが下手そうな雰囲気出しているけど、親にあれだけ話してる時点で塾講師として適正がないわけじゃなく、むしろ適正あると思います。

増田:ただ、実際はあんな金の話ばっかりしないけどね笑

---

さて、今回はここまで。次回は1巻読書会の続きで作品中に登場した「凡人こそ受験をすべき」というセリフについて考えます。

この二月の勝者、とても面白いのでまだ手に取ったことのない方は是非ご覧ください!

二月の勝者はドラマ化され、7月から放送される予定だったのが、延期されていつ放送されるのか現在未定のようです。非常に楽しみです。それでは!

1巻の読書会後半はこちら

個別指導・家庭教師の
自律学習サカセル

〒154-0001
東京都世田谷区池尻3丁目4-2 SSビル池尻901
Tel:03-5787-5563

HP:https://sacacell.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?