読書感想文「ヨルノヒカリ」畑野智美さん

*極端なネタバレにならないよう書いていますが未読の方はご注意くださいませ。
*あくまで私個人の主観による読書感想文です。

畑野智美さんの新刊「ヨルノヒカリ」を読み終えました。

素敵な装丁の印象通り、優しさのたくさん詰まった心温まる物語でした。ただ、心にしみる優しさが印象的なのは、そこに悲しみや寂しさがあるからで、考えさせられるところも多かったです。

読んでいる途中から読み終えた今も考えているのは、『普通』って何だろうということ。
自分にとっての『普通』が相手にとっての『普通』であることは当たり前ではないはずなのに、日本は古い世代が『普通』としておきたい状態への同調圧力がやはり強いんだなと感じます。
多様性というフレーズが必要なくなるくらい、誰もが気ままに生きられるといいですね。

そして、あらためて自分が生まれ育ってきた環境が幸せだったんだなということを実感しました。
決して裕福だったわけではないけれど、両親は毎晩家にいたし、その日のご飯の心配をせずに暮らしてきましたし。
テレビにもウェブにも悲しいニュースが溢れていますが、幸いなことに(この表現は違うかな)自分の周りがわりと平和な状態だとやはりどこか他人事になってしまいます。
ニュースで見たような悲しい出来事が物語のなかで解像度高く描写されると、他人事だったものが少しだけ自分の近くに感じられて、身近に困っている人がいたら声をかけよう、手をさしのべようと思えたりします。もちろん単純に読書が好き、ということが先なのですけれど。

畑野智美さんの作品は、デビュー作「国道沿いのファミレス」を手にとってから、南部芸能事務所シリーズなど何冊も楽しく読んできました。
「ヨルノヒカリ」はマイルドで優しい物語だったので、ひさびさにデビュー作の『若気の至り』的な物語を読みたくなりました。

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