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違和感と眼差し

何年か前、サマーインターンに参加した時、どうしてもよく分からないというか、心に引っかかることに出会った。

そのインターンは、名の知れた企業のものであったからか、はっきりと理由は分からなかったが、倍率が高く、参加しているのはそのとんでもない倍率を勝ち抜いた有名大学の人たちばかりだった。

私はというと、当時運営していたコミュニティの運営のヒントを得るため、そして就活が本格化する前にそもそも就活とはどんなものなのかを知りたくて、大学2年でそれに参加した。

自分は学歴も全国的に見てそんなに高いわけではない。

まぁ、大学2年で変なことやってる奴いるな〜と面白がられて受かったのだろう。

就活を意識したインターンであるため、もちろん周りは歳上ばかりで、歳上に囲まれる環境は慣れていたのだが、超高学歴の、いわゆる世間では勝ち組と呼ばれる人たち(私自身、勝ち組など、人にレッテルを貼るのが好きではないし、そもそも学歴だけでその人自身は測れないという価値観を持っているのだが、分かりやすくするために今回はこう表記させていただく。)と一緒に何かをするのは初めてだった。

インターンは2、3日に渡り、6人前後のグループに分けられ、一緒にワークをこなしていくという内容のものだった。

私のグループは、やはり高学歴な人たちばかりで、トップクラスの大学に行っている人たちばかりだった。

これから、大企業や勢いのあるベンチャー、あるいは官僚など、日本社会を牽引するような職就くような世界線にいる人達ばかりで、この人たちはどんな価値観を持っているのだろうとワクワクしていた。

しかし、インターンを進めていく中で違和感がどんどん拭え切れなくなっていった。

私のグループにはとても可愛い女の子がいた。みんなその子を事あるごとに可愛い可愛いと褒め続けた。

そして、お互いの良いところを褒め合うというワークになった時でさえ、彼らは可愛いとしか言わなかったのだ。

正確にいうと、可愛い以外のことも言っているのだが、それは取って付けたような言葉たちで、本気で思って言っているのは「可愛い」だけだったのだ。

チームを手助けしている10歳ほど上の社員のチューターでさえも、可愛い可愛いと言い続け、可愛い以外の部分はあまりピンとこないことを言っていた。

私には、その雰囲気がただ不思議で、不思議で、不思議だった。

彼女は賢いし、場を回す力もあるし、よく頭が切れる。なのにみんなは可愛いとばかり言う。

まるで外面しか見ていないような反応しかない。

この人たちは何を言いたいのだろう。

内面じゃなくて、その外見を保つ努力でもなくて、外見ばかり、ただ可愛いと褒めるって失礼じゃないのかな。

表面のことばかり褒められて、虚しくないのかな。

私自身ファッションは好きだから、外見を褒められることは嬉しいが、それから深く質問されるわけでもなく、そればかり単調に連発されるとあまり良い気はしない。この人は私のことを見てないなと思うからだ。

説明されたわけではないが、そもそも、おそらくこのワークの目的は、本人が自覚していないその人の良さを、他人の目線を借りて自己理解を深めるというものだろう。

密度の濃い時間を過ごしたインターンの仲間に、相手を見つめるといった課題の中でさえも、外見のことばかり触れられるこの状況は、正直疑問であった。

それと同時に、この先社会の中心になっていくだろうポジションに進む確率が高いエリート層の彼らが、社会に出て働いている10歳程上の人生の先輩の彼女が、そんな表面の事しか触れていないことに正直落胆さえした。

「女は歳を取ると若さと可愛さだけではやっていけなくなる」とはよく言われている話だが、本当に、若さと可愛さだけを武器に彼女らは生きているのだろうか。

彼女たちは賢い。自分をよく知っているし、この社会を生き抜くために、そんなものだけに頼らずに、策略を立て、戦って生きている。

そうやって、向き合って生きている彼女らは、顔の造形がとかスタイルがとかいう話ではなく、ただ人として美しい。

美しさが滲み出ているのだ。

それは紛れもなく、彼女たちの経験や努力によって養われた人間性や感性から生まれたもので。

それなのに、それをただ「可愛い」という一言で形容してしまって良いのだろうか。

可愛いだけで纏めてしまうのはいささか冒涜とでも言えるような気がする。

ただ、自分には、彼女自身を見つめようとせず、表面の部分だけ掬っている行為にしか見えなくて。

それなのに、その言葉を終始褒め言葉として繰り返す彼らの考えている事がよく分からなかった。

何か、少し、居心地が悪かった。

もちろん彼女はとても可愛い。アイドル的な可愛さだ。

そして、確かに、女性であるから、可愛いからで得をすることはある。

しかし、それだけでやっていける程世間は甘くないし、それを彼女たちも理解しているし、だから戦っている。

入り口で得をしたとしても、着地するのは本人の力量だ。

なにも、女性だから軽んじられているだとか、そういう話をしているわけではない。外見が整っている男性が外見のことばかり言われていることにも同じことを感じる。

何か自然と、わかりやすい「何か」が見えた時、その奥にあるものを見ようとする眼差しが溢れ落とされてしまうことが、複雑で。

表面の何かよりも、その人の、その物の中にある何かを見つめ続けていきたいし、そこに敬意を払い続けたい。




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