オビラプトルの名前を変えたい。
子どもの影響で、恐竜にくわしくなるのは、子育てあるあるのひとつではないだろうか。
自分も子どものころ、好きだったなあ、恐竜。
……と、そんなふうに懐かしく思うばかりではないのが、この分野の奥深いところである。
たとえば、最新の研究によりティラノサウルスには羽毛が生えていた可能性がかなり高いとされている。
あのティラノサウルスに、羽毛。
ショックである。
学校一の不良が、おばあちゃんの手を握って横断歩道を渡るのを目撃してしまったような感覚になる。別にいいんだけれど、君はそのキャラではないだろう、と言いたくなる。
羽毛なんていいから、ゴツゴツしたうろこで、むき出しの牙で、植物食恐竜を襲っていてくれ。(ちなみに「牙がむき出しだったら唾液が止まらず脱水で死んだはずだから口は閉じられていた」とか「骨格から考えるに自重を支えることに精一杯で、走って狩りをすることはできなかった」とか、羽毛以外の幻滅仮説も多い。)
いや、ティラノサウルスに限らない。恐竜から進化して鳥類が誕生した、というのは、今の図鑑では常識のように語られており、もはやめずらしくもなく、ページをめくればあいつにもこいつにも羽毛が生えている。
科学の進歩って、本当に目覚ましく、時に残酷だ。
こんなにも羽毛が生えているヤツばかりになると「始祖鳥」の重要性も相対的に低下しているようで、最古の鳥類という長老の座を譲り渡し、「アーケオプテリクス」などという名前で、その他の鳥っぽい恐竜と並列にされている。
名前といえば、「アーケオプテリクス」は「古代の翼」を意味するように、すべての学名には意味があるようだ。
「ティラノサウルス」は「暴君トカゲ」だし、「トリケラトプス」は「3本のツノのある顔」なのだそうだ。
映画『ジュラシック・パーク』で悪役として大活躍した「ラプトル」には「泥棒」という意味があるそうで、たとえば「ベロキラプトル」で「速い泥棒」となる。
このラプトルと呼ばれている恐竜のなかに「オビラプトル」がおり、それは「卵泥棒」という意味である。
図鑑でオビラプトルを調べると大体、こんなことが書いてある。
「プロトケラトプスの物と思われる卵の上に重なる形で発見されたので『卵泥棒』と名づけられましたが、のちにその卵はオビラプトル自身の物であることがわかりました。」
……いや、ちょっと待って。
じゃあ自分の卵を温めていただけだよね?
「わかりました。」じゃなくて、最新科学でわかったのであれば、名前、変えませんか?
「赤子の背中をバシバシと叩いていたので『折檻野郎』と名づけられましたが、のちにそれはミルクのあとに嘔吐せぬようげっぷを誘発させる行動だとわかりました。」とか「子どもを空中に放り投げていたところを目撃されたので『ぶん投げおじさん』と名づけられましたが、のちにその行為は高いたかーいの進化系で、腰の痛みと引き換えに子どもを大喜びさせるためのものであることがわかりました。」と書かれたら、謝罪と訂正をしてもらわないと私なら納得できない。
「わかりました。」じゃねーよ、と。
オビラプトルもきっと同じことを思っているはずだ。
ちなみに、オビラプトルと同じように巣の卵とともに見つかった恐竜に「マイアサウラ」がいるが、これは「よいお母さん」という意味である。
かたや「卵泥棒」、かたや「よいお母さん」じゃ、オビラプトルが、あまりにもかわいそう。
オビラプトルの名前を変えてあげたい。
ちなみに我が家では、子どもに本の帯を奪われることを「オビラプトル」と呼んでいる。