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『コンビニエンス・ラブ』

-『推し』とは、『アイドル』とは?
ちゃんとライブに行くくらいアーティストやアイドルを好きになったのは6年前、そこから数え切れないほど、新しい人を好きになった反面、見に行くほど熱を帯びたのは少ない。
※ kuroyuyuyuさん、画像お借りしました!

『コンビニエンス・ラブ』を読んだ。
タイトルに惹かれて。こんな感じのテーマの質感で、わたしの好きな有川ひろさんが短編を書いていたと思ったので。
読み進めてみたらまさかの、アイドルと恋愛のお話で驚いたけれど、私はこういう小説が好きだ。柚木麻子さんの『デートクレンジング』と言い、朝井リョウさんの『武道館』と言い、もちろん、『推し、燃ゆ』も。

好きな人に恥じない人間でありたいと思う。
この人のファンは素敵だね、と言われたい。
だから徳を積もうとするし、嫌がることはやりたくない。私の好きな人たちはここで呟いていること自体も嫌なのかもしれないけれど。

推し文学があるとしたら、大体には炎上がつきものだ。アイドルだって人間だ、と。
そりゃあ恋もするだろうし、恋人自慢したくもなっちゃうかもしれないし、追っていったら怪しいって考察されちゃうかもしれない。
仲のいい友人がいて、やんちゃしたくなる日もあるかもしれない。一瞬の気の緩みも許されないなら、こんなの、プライベートは出せないよなと思う。今やストーカーだけじゃなくて皆が色々知れちゃう時代なのだ。見せないのがプロ、なのかもわからない。

『コンビニエンス・ラブ』に関しては、帯にもあるように2度読み返したくなる仕掛けがある。なるほど、終盤の違和感はこれか、って感じだった。そして、ずっと伏線になると思っていた箇所は特に何も無かった。考えすぎでした。

アーティストとアイドルの境目ってなんだろう。アイドルの本来の意味が“偶像”なら、アーティストだってバンドだって広義ではアイドルと言えるのかもしれない。

そんなことは置いておいて、視点一人称の愛生はやけに設定がぼんやりしており、いい意味で読者の想像に身を委ねる感じがあった。
気になった部分をいくつか置いておきます。

アイドルだとかアーティストだとか、いまどきそんなカテゴライズはナンセンスだし、観客がそれぞれ決めることであって俺たちが決めることでもないのかもしれない。それでも、「俺たちはアイドルじゃない」──その言い訳があるからこそ、ここまでやってこられたのもたしかだった。

p.85

アイドルじゃないと言い訳したところで、「リアコ営業」している俺たちにも責任があるのはまちがいなかった。ファンが幻想を見るのが先か、こっちが先に幻想を見せているのか。カメラに向かって甘い言葉をささやいたりウィンクや投げキッスをしたりして、積極的に不特定多数を誘惑しておきながら、何事もなかったように陰で他のだれかとよろしくやってるなんて道理が通らない。

p.95

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