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EV600kmドライブ&充電でフランスで泣きそうになった話/ラグビーW杯2023観戦ツアー③

飛行機も宿も私にとって「手段」です。

今回の旅行の一番の「目的」はラグビーW杯観戦でしたが、もう一つが、EVドライブ&充電。実は、私は10年以上前にはEVウオッチャーだった時期があり、経済メディアの取材で、初代三菱「アイミーブ」を1カ月試乗したり、日産「リーフ」で白馬まで行ったこともありました。

2023年のフランスではEVってどうなのよ?を試してみたかったわけです。10年前の記憶で、EVは数時間乗ったところで何も分からず、数日以上生活して初めて意味があると思っているクチ。

EVドライブは移動「手段」か旅の「目的」か

いつもは慎重で、EV否定派だった夫が、今回はEVレンタカーに乗り気。だったら、「EVドライブ&充電」を旅の目的にしてしまおうと思ったのです。多分、移動「手段」ではなく、旅の「目的」にしないとツライだろうなという予感はありました。

リヨンでレンタカーをすることは決めていたので、そこでEVを選択。夫が乗り気だった理由の1つは、「充電カード」を一緒に予約できたから。

ところが…

空港レンタカーのスタッフは、あっさり、「充電カードの用意はありませんが、クレジットカードがあれば大丈夫!」と調子よく言うではないですか。

仕方がないので、とりあえず、クルマで空港を出発したのでした。

リヨンで2泊、その後、ブルゴーニュ地方の農村で3泊し、Dijonなどを観光する6日間。走行距離は、約600kmのドライブです。

リヨンでの2泊はホテルに普通充電器があり、難なく充電完了。いよいよ、ブルゴーニュ地方に向けてロングドライブ開始。

1泊11€の定額制

高速道路のSAには、日本と同じ感覚でガソリンスタンド、充電器がありました。ただ、充電器の数は圧倒的。7~8台が並んでいることもザラ。

複数の大手メーカーが展開しているのですが、規格がバラバラで操作方法もまちまち。QRコードを読み取り、クレジットカード決済で実行。

まずは、Shellが展開しているIONITYにトライ。ここでも難なく充電開始。満充電までおよそ45分。その間に、トイレに行ったりカフェに行ったり。急ぐ旅でもないのでのんびり休憩できました。

この時は3台が同時に充電中

ただし。「のんびり休憩」できたのはここまで。

ホテル、IONITYと連続して難なく充電できたので油断していたら、その後は、充電できない充電器が続出。電池のゲージがどんどん下がっていき、航続距離が短くなっていくのはなんと心細いこと。

毎度、違う充電器に遭遇するたびに、アプリをダウンロードしたり、メアドを登録したり、クレカの番号を入力したり。やっと、「充電ゴー!」かと思ったら、クレカ決済が止まったり、通信エラーになったり。そもそも、充電器が故障していたり。結果的に充電できたのは、engieとIONITYだけ。「勝率」は3割くらい…か。

最大のハプニングが待っていた

そして、今回の旅、最大のハプニングは充電器の前で起こりました。

充電ゲージが心もとなくなり、その日最後の充電トライをしようと、宿泊先近くのスーパーマーケットで普通充電器の前に駐車。クルマに積んである充電コードを充電器とクルマの双方に差し込みました。

残念ながら、充電器が故障中のようで充電が始まらない。ここまでで何度も充電器の故障を見てきたので、私たちも驚きません。充電をあきらめ、コードを外そうとするも…

抜けない。。。いや、そんなはずはないでしょう…。

クルマ側のコードが抜けない!!

色々と試すも、30分経っても抜けず、さすがに焦り始める。サマータイムで日没が遅いフランスでも、20時近くになると真っ暗。スーパーマーケットは20時閉店。駐車場が閉鎖されたらどうしよう…?

夫がレンタカーのコールセンターに電話するも、つながるまでに30分以上。オペレーターに状況を何度も英語で説明するが、なかなか理解してもらえない。「いえ、バッテリーはまだあります」「いえ、動けません。コードがささったままで、クルマが始動しないんです」

この電話がつながるまでの間、私たちは軽くパニック。ここからどうやって脱出すれば?駐車場から出ていけと言われたら?この緊急事態を誰に言えばいいの? 泣きそう…

フランス語のできない私たちが、ここで助けを求められるのは、airbnb宿泊先のオーナー、マチルドだ!と思って、「今、近くのスーパーで充電トラブルで動けないの!」とメッセージ。すぐにマチルドからは、「クルマのことはわからないけど、迎えに行くことはできるわ。必要だったら言ってね」と温かいメッセージ。ああ、やさしい!

オペレーターに30分以上説明して、ようやく状況を理解してくれたものの、電話口では解決できないので、ロードアシスタントが向かうとのこと。1時間くらいかかるけど、動かずに待っているように言われる。

ちょうど、そのころ、スーパーマーケットのスタッフが、閉店の作業を終え、不審な面持ちでクルマにやってくる。英語の話せないスタッフさんに、DeepLも使いながら説明すると、事情を理解してくれ、コードを外そうとトライしてくれる。私たちに同情し、駐車場にいるのは構わないよと言ってくれました。ああ、ここにもいい人がいた!

スーパーのスタッフもトライしようとしてくれる

さらに待つこと、1時間。充電にトライし始めて3時間ほどが経過したころ、ロードアシスタントがやってきた!しかも、レッカー車で!私たちのレンタカーは、レッカーされちゃうの!?

1時間で来るって言ったけど、2時間以上たってますよ?そのお詫びはなし?しかも鼻歌うたってるよ、おじいちゃん。おおらかな国だ。

おじいちゃんに英語で話しかけると…まさかの「ノン!」。英語が通じない!しかも、あれだけコールセンターに苦労して伝えたはずのトラブルの状況が全く伝わってない。

また、ゼロから、今度は英語も通じないおじいちゃんに、スマホでDeepLを駆使して状況を伝える。ようやく理解してくれたおじいちゃんは、テクニカルデスクに電話して対応策を相談する。電話の主がおじいちゃんに状況について質問しているよう。でも、おじいちゃんは英語が話せないので、その質問を私たちに伝えられない。

レッカー車でやってきたロードアシスタントに、必死で状況を伝える夫氏。外気温は12℃

幸い、電話の主が英語スピーカー。直接、夫が状況を説明して、やっとトラブルの状況を理解してくれた。電話の主が、対応策を調べて折り返してくれるそう。

待つこと3分。電話を受けたおじいちゃんが説明を受けながら、クルマの電源を全部落とし、クルマをロックすると…コードが抜けた!!!

おじいちゃんは、「抜けたよ。これでいい?」と朗らかな笑みをこちらに向ける。

ええええ、こんな簡単にコードが抜けたの?
クルマに積んであったマニュアル(フランス語オンリー)を、Google翻訳のカメラをかざして必死に全部読んだけど、書いてなかったよ?
必至にGoogl検索もしたけど、誰も書いてなかったよ?
電話で解決するなら、ヘルプデスクに電話したときに、この指示をしてほしかったよ?
夜中に2時間もかけてレッカー車を手配するコスト、レンタカー会社だって避けたいでしょう?
何より、私たちの3時間を返してよ!

言いたいことはいっぱいあったが、ひとまずトラブルは解決。おじいちゃんは朗らかに帰って行き、私たちもやっと、宿に戻ることができたのでした。充電はできず、電池のゲージは30%ほどのままで…

テスラ充電器でテスラ車以外も充電できる?

このとき私たちが滞在していたのは、ブルゴーニュのトゥールニュという人口6000人ほどの町。ここにも、テスラの充電ポイントは3カ所ありました。2つはホテル宿泊客専用で、1つはレストラン併設のオープンな場所。スーパーチャージャーをテスラ車以外にも開放していると聞き、行ってみることにしました。

両サイドにズラリと並んだスーパーチャージャー、その数、16台。テスラ車以外に充電する方法を検索すると、テスラアプリで、簡単にできるとのこと。日本でダウンロードしていた夫のアプリでは、テスラ以外の車種を選べない。ならば私が、とその場でテスラアプリをダウンロードしてみたら、今度は、ユーザー登録のところで日本の住所を入力できない…

逆サイドにもずらりと充電器が並び、合計16台

よくよく調べると、日本ではテスラ充電器をテスラ車以外が充電することを認められていないため、日本在住者は海外に滞在していてもテスラ充電器でテスラ車以外を充電できない、ということのようです。アメリカ、ヨーロッパに在住している人であれば、テスラ車以外を充電OK。日本のテスラユーザーのみなさまも、海外旅行の際は最新情報をご確認を。

残念すぎる…。

それにしても、こんな小さな町にもテスラブランドの充電器が何十台もあって、テスラユーザーであれば、同じ「テスラ」ブランドのアプリで充電できることの尊さよ。

この6日間、「レッカー車出動事件」を含め、充電トラブルを連日味わってきたからこそ、この尊さが分かります。どの自動車メーカーもEVは作っても、世界中に充電器を設置しまくることをやってはいない。テスラがここまで大きくなったのは、充電におけるユーザーペインを理解し、充電UXを採算度外視でこだわり切ったからでは。ものづくりの発想ではなく、UXの発想。イーロン・マスク、やっぱり、すげえ。

ほかのどんな素敵なEVも、テスラの充電UXの前ではかないませんわ。

600kmEV充電の旅をやってみてのまとめ

  • 10年前の日本の充電体験とあんまり変わらない(ゲージや航続距離を常に気にしてしまう)

  • EVだからこその体験はあった(良くも悪くも)

  • 移動「手段」だったら、EVは厳しい

  • 海外旅行者にEVレンタカーはおススメしない。乗るなら充電カードとのセットは必須

  • テスラ、狂ってる(ほめてます)



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