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K-POPとクリエイティブチームのあり方

最初に結論

K-POP のプロモーション戦略はリーンスタートアップやホラクラシーなどに近い手法や組織体で練られ、制作・実施されているのではないかと思ったという話。


はなしのまくら

最近、YouTube Music の無料体験に登録して音楽が聞き放題状態になったので、作業用BGM 代わりに K-POP をよく聞いてます。

最初は何の気なしに日本でも有名な TWICE を聞いていたんだけど、そのうちもっとたくさん K-POP アーティストを知りたいなと思いはじめて、ヒマがあると YouTube で関連動画をあさったりしていくつか好みのグループとかを見つけたりしまして。まあ順調に K-POP にハマりつつあります。

で、そうやって K-POP を調べていくうちに、K-POP ってものすごく ”よくできてる” なーと感じはじめてきました。

なので今回はそんな話でも書いてみようかなーと思います。


K-POP は"よくできている”

以前こんなツイートをみたことがありまして。

J-POP と単純比較すること自体にはあまり意味はないと思うけれど、でも確かに YouTube を眺めているだけでも K-POP が世界的に認知を広げているっぽい一端が垣間見えまして。
例えば TWICE とか BLACKPINK とか有名アーティストの MV だと、公開から数か月~半年程度の動画でも平気で再生回数が数億回(!)とかだったりするんですよ。

これだけ再生回数が伸びる背景にはやっぱりきちんとしたプロモーション戦略があるはずだし、その戦略を実現するためにはアーティストをプロデュースするためのクリエイティブチームの在り方も重要になってくるはずです。

あくまで外部から見た想像の範囲ではありますが、
そういったクリエイティブのプロセスやチームビルディングについて、K-POP はかなり”よくできている”のではなかろうかと思えた部分があったので書き記してみたいと思います。


カムバックシステム と GIST プランニング

細かい話を始める前に、K-POP アーティストの活動と日本のアーティストのそれとでは大きく違うポイントがありまして、先にそのことについて簡単に説明をしておこうと思います。

K-POPアーティストが出演している音楽番組の動画なんかを YouTube で探しているとよく「カムバック」という単語を見ることがあります。

MOMOLAND の BBoom BBoom リリース時のカムバックステージ。
アインちゃんかわいい。

日本の場合、アーティストは通年を通してずっと歌番組に出演していますが、K-POP アーティストはそうではないんですね。

K-POP アーティストはアルバムを発表すると、プロモーション活動としてそのアルバムの代表曲を引っ提げていろいろな歌番組に出演します。
そして、約1ヵ月のプロモーション期間が終わるとそれ以降は歌番組には出演せず、ライブ活動や歌番組以外の番組への出演など通常のアーティスト活動に戻ります。そしてまた次のアルバムが発表されるタイミングで再び歌番組に出演する、というようなサイクルで活動をしています。

このアルバム曲を引っ提げて歌番組に凱旋復帰することを「カムバック」と言いまして、このタイミングに合わせてどのアーティストも大々的にプロモーション活動を行います。

で、このカムバックシステムが面白くてですね。
アーティストとしての活動が周期的に行われるようなシステムになっているため、それぞれカムバックのタイミングでがっつりと世界観を作りこんでプロモーション活動をしたり、場合によってはイメージをガラッと変えて再出発したりすることができるんですね。

極端な例ですが、例えば「fromis_9」というアーティスト。
2018年6月に「두근두근 (DKDK)」という曲でカムバックした際には、日本でいう乃木坂46のような清純派路線のアーティストだったんですが

fromis_9 の 두근두근 (DKDK)。このころはまだみんな清純派路線。

その次のカムバック、2018年10月の「LOVE BOMB」の際にはここまで雰囲気が変わっています

fromis_9 の LOVE BOMB。急にみんな個性的で大人びたスタイルに。
ナギョンちゃんかわいい。

DKDK の時にはみんなおとなしい感じのキャラクターだったのが、LOVE BOMB では全員ものすごい垢抜けたスタイルに。
特にナギョンちゃんなんてスーサイド・スクワッドのハーレクインみたいな奇抜な髪色です(笑)。
ほぼ別のアーティストなんじゃないかってくらいビジュアルが変わっています。

なかなかここまで大胆にスタイルを変化させることも珍しいですが、カムバックという周期があることによってアーティストがその時々のテーマ性に沿って活動し、その活動から得られたフィードバックをもとに次のカムバックの際にどういった方向にシフトすべきかを検証できるようなサイクルになっているわけです。

これってつまり、リーンスタートアップ仮説検証プロセスとよく似てませんか?

引用:REVOLTMARK, リーンスタートアップにおけるMVP制作のポイント

カムバックという周期があらかじめ決められていて、その周期に合わせてその期のプロモーションテーマを設定する。
そして、設定したテーマをもとに楽曲や衣装、振り付けなどを細かい要素を詰めていく。
それぞれの要素ができたタイミングでカムバックし、設定したテーマ性がファンに受け入れられるかどうかを仮説検証をしていく。

これって GISTプランニングに近い、周期性をもった仮説検証の進行スタイルだなーと。

カムバックシステムができあがった経緯にこういった意図があったかどうかは不明ですが、K-POPアーティストがバリエーション豊かに特色をもって活動できている裏にはこういったプロセスの存在があるのではないかと思います。


クリエイティブとホラクラシー

さて、カムバックシステムによるテーマ性あるプロモーション活動の話をつらつらと書いてきましたが、
プロモーションのトップ(K-POP の場合はプロデューサー?)だけがこのような認識を持っていても、現場のスタッフが同様の意識をもっていなければ足並みをそろえたプロモーション活動をすることはできません。

特にアーティストのプロモーション活動には、楽曲制作や衣装制作、振り付けなど様々な立場の専門家とチームを組んで実施していく必要性があるはずです。

ここでも K-POP はやはりよくできているなと感じる部分があります。

例えば、日本でもおなじみの「TWICE」の「TT」という楽曲。

TWICE の TT。ツウィちゃん推し。

「TT」というタイトルは泣いている絵文字 (T-T) からとっていて、歌詞の内容も片思いの切なさを歌った内容になっています。
そして、振り付けも両手を T の字にするハンドサイン。日本でも非常に話題になったことを記憶している方も多いと思います。

このように作詞・作曲から振り付けまで、一貫してバズをきっちり狙いにいく設計になっていることがわかるかと思います。

そのほかにも、例えば先ほどカムバックの説明で例示した「MOMOLAND」の「BBoom BBoom」は、中毒性のある楽曲と振り付けで、世界中からいわゆる「踊ってみた」動画が投稿されています。

おフランスからの踊ってみた動画。キレッキレである。

通常、振り付けは楽曲の盛り上がりに合わせ、サビに見せ場をもってくるような作りにすることが多いと思うのですが、
MOMOLAND の楽曲は意図的にサビの振り付けを簡単にしている節があり、そのためファンが「自分たちにも踊れるかもしれない」と感じてもらいやすく、それが世界中から踊ってみた動画が投稿される要因になっているように感じます。

このように K-POP は、チーム全体でプロモーション戦略を共有した上で、楽曲制作や振り付けなど、それぞれの専門家がその戦略に合わせた形でコンテンツを作り上げていっているように見受けられます。

これって従来のアーティスト像で考えるとちょっと不思議な話です。
従来のイメージは、まずアーティストがいて、楽曲が決まり、その後に振り付けや衣装が決まり、最後にプロモーションの方法が決定されるという、いわばプロダクトが先にあり、それをプロモーションでどう繕っていくか、という考え方です。

ところがどうも K-POP の場合には、まず先にプロモーションの方針があり、それに従って、楽曲や衣装、振り付けが同時多発的に決まっていっているのではないかと思われます。
いわば、方針が先にあり、その方針に向けたプロダクトを作り上げていく形です。
「バズを狙う」というプロモーション方針がないと「TT」のような楽曲は作れないはずですし、「踊ってみたを狙う」という方針がなければ「BBoom BBoom」のような振り付けはつくれないと思うのです。

こうした制作の進め方は、先ほど説明したGISTプランニングとの相性もいいような気がします。
ゴールが先に設定されており、そのゴールを満たすためのアイディアやステッププロジェクトを出し合って制作を進めていくイメージです。

またこういった方法で制作を進めるためには、最近話題のホラクラシーという考え方がマッチするような気がします。

中央集権的にすべてのクリエイティブをコントロールするのではなく、プロモーションの方向性をすり合わせ、それぞれの専門家がそれぞれの役割を果たす形でクリエイティブを推し進めていく。

こういったクリエイティブチームを作り上げることで、世界的な認知を狙えるアーティストを育てることができているのではないかと思います。


クリエイターの役割の変移

さて長々と書いてきましたが、ここまで書いた内容って K-POP だけに限定された話ではなく、プロダクト開発の在り方としてもとても現代風だなと感じました。

音楽にしろプロダクトにしろ、ユーザニーズが多様化した昨今において一発決め打ちスタイルの開発はリスクが大きく、仮説検証のサイクルを回しながらロールベースのチームで継続的に開発を繰り返していくことが定石となりつつあります。

そしてそれに伴い、チームメンバーとして実務に携わる個々のクリエイターの役割もこれから徐々に変化していくものと思われます。

例えば開発に関わるいちエンジニアの立場であっても、昔のように自分が担当する開発領域のクオリティだけを上げればいい時代は終わりを迎え、製品開発における戦略をふまえたうえで自身がどういった役割を果たすべきかを自ら勘案しエンジニアリングに落とし込むような役割を担わなければならなくなることでしょう。

そういった意味でも今後、テクニカルディレクターのようなビジネス的な勘所をもちつつ技術的な方針を決定できる人材が求められるようになっていくのではないかと思います。


…と、相変わらずの長文になってしまいましたが、本日の考え事はこんな感じです。

あ、あと、需要はないかもしれませんが最後に poipoi おススメの K-POP アーティストを紹介して終わりにしようかと思います。
ご興味あればみなさまぜひ聞いてみてくださいー


おススメ K-POP アーティスト

MOMOLAND

記事中でも紹介した MOMOLAND。
韓国国内ではジュイちゃんがテレビ番組でみせた全力ダンスで人気が爆発したというシンデレラストーリーを持つグループです。

中毒性の高い楽曲とダンスが特徴。ハマったらエンドレスループ必至です。
poipoi 的推しはヨヌちゃんとアインちゃん。
アインちゃんは美しすぎるブルゾンちえみとして一時期話題に。


fomis_9

記事中でも紹介した fromis_9。この綴りで「プロミス・ナイン」と読みます。
LOVE BOMB 以前と以降で雰囲気ががらっと変わっていますが、個人的にはどちらも好み。
ただ、LOVE BOMB 以降の方が各メンバーの個性が際立っていて推しを見つけやすいかも。
センターのジホンちゃんはなんと齢15才にしてこの色気。やばいです。
poipoi 的推しは ナギョンちゃんとギュリちゃん


PRISTIN

テンポの速い楽曲と耳に残るフレーズが特徴的な PRISTIN。
I.O.I という韓国で有名なオーディション番組発のグループに在籍していたナヨン、キョンギョルが加入して2017年にデビューしたグループです。
poipoi 的推しは ナヨンちゃん。
ベイビーフェイスにもかかわらず身長171cm。スタイル抜群。


LOOΠΔ(이달의 소녀)

グループ名は「ルーナ」と読むのですが、韓国語名を直訳すると「今月の少女」という意味に。
デビュー時から毎月1名ずつメンバーが追加されていき、1年かけて全メンバー12人がそろうという変わったスタイルで活動をスタートしたグループ。
正統派なスタイルと楽曲が日本のアイドルに少し似ているので、日本人にもとっつきやすいと思います。
poipoi 的推しはキムリップちゃん。


SATURDAY

2018年7月にデビューしたばっかりのグループ。
なぜか WiFi やじゃんけんという謎なテーマをチョイスした中毒性の高いサウンドが特徴。
poipoi 的推しは チョヒちゃん。
リレーダンスとか見ると基本ぴょんぴょんしてる。

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