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2020/8月読書日記


気がつけば前回の更新からほぼ丸々一年経っていた。
どうにも夏は読書日記をつけたくなる季節らしい。というわけで、またぼちぼち読んだ本の感想を随時更新していきたい。


2020年8月12日

九龍妖魔學園紀OOAのシナリオが面白すぎたを発端に一気に幼少期に憧れていた考古学への浪漫が蘇ってきたの巻。
せっかくの機会なので色々と本を買ったり借りてみましたの第一冊目は『NHKスペシャル エジプト発掘:解き明かされる4つの謎』日本放送出版,2009.。
この本は元々「ピラミッド」「ツタンカーメン」「クレオパトラ」「ハトシェプスト」の4項目を取り上げ、NHKで放映していた特集番組だったらしい。ツタンカーメンの妻の花輪の話は以前にテレビで見た記憶があるので、あるいはそれがこの番組だったのかもしれない。
テレビ番組を文字にまとめ直したものだけあって、簡潔で読みやすく、分かりやすかった。
特に印象的だったのは、松本健氏の「発掘、そして守り手渡すべきもの」というエッセイ。
現地の人々との交流や遺跡発掘の楽しさ、それと同時にイラン・イラク戦争の直前直後ともに現地に向かった松本氏の語る未来へ繋いでいくものの話には、形や中身や方法は異なれど文化の保護継承に少なからず関わる人間としては思わずじんとこみ上げてくるものがある。
ふと、学部の頃に学んだ西アジア工芸文化史の先生のことを思い出した。
先生も、松本氏と同じように現地の紛争で帰国せざるをえず、その時の文化財に対する懸念と悔いと祈りをお聞かせいただいたことがある。
自分がこうしているあいだにも、何が起きているのか気になって仕方がない。撃たれてもいいから戻りたいけれど、国がそれを許してくれないのだと、そう歯痒そうな表情で仰られていた。
講義は1年で終わってしまったので、その後のことは存じ上げないけれど、先生は今も発掘をしているのだろうか。
と、思い出話は置いておき、他にもクレオパトラの妹の骨格からの顔の再現や兄弟間での争いの話、ハトシェプスト時代のエジプトと景行天皇の時代の日本の復元古代船での航海の挑戦等もとても興味深かった。


8月17日

引き続き古代文明と考古学に胸を躍らせている夏である。
二冊目は井上たかひこ『水中考古学:クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで』(中央公論社)2015。
完全に趣味の息抜きの本として借りてきたのだけれど、思わぬところで自分が少し前まで数年かけて調査していた案件に関わる内容と出会い、世のなか何と何が繋がっていくのか分からないものだなとしみじみとした。
こんな風に、研究とは離れた内容の本を読んで気づきを得ることは、これまでに幾度もある。こうした体験ができることこそ、読書の醍醐味の一つなのだろう。
内容は、著者の方が関わった難破船や沈没船にまつわる調査の内容について。保存処理のノウハウ等、専門的な知識も交わられているがとても読みやすい。
また、陶磁器一つから造船期や航海の期間、どのような身分の人が使用していた、あるいはどのような用途で船荷に積まれたのかを割り出す。地元の漁師への地道な聞き込みと口承から未発見であった難破付近の浜辺で描かれた絵巻を見つけ出す。食料として載せられた植物の実から船員の国籍に検討をつける。保存のための薬品についてや、潜水のノウハウなど、豊富で横断的な知識と水中遺跡にかける情熱には脱帽した。
水中考古学はもともと日本ではあまり(2015年時)知名度がなく、資金集めをはじめ様々な局面で苦心したとある。最近は、船の考古学などYouTubeで配信しているのを拝見したりするので、少しずつ状況も変わってきているのかもしれない。
周りを海に囲まれている島国日本であるからこそ、著者の方の言うとおり埋もれたままの船はきっといくつもあるのだろうし、今後ますます発展していく分野になることを心より願っている。
余談だが、科博主体の「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」も個人的にワクワクとしながら見守っていたので、ここにリンクを貼っておく。
Twitter(https://twitter.com/koukaiprj)
公HP(https://www.kahaku.go.jp/research/activities/special/koukai/index.php)



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