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8月前半に読んだ本たち

読書の記録を載せることは、頭の中身をまるごと見られるような感覚に陥ってしまい、抵抗があった。それに、わたしの本の読み方はとても偏っていて…というとジャンルの偏りに聞こえるかもしれないがそうではなく、読む頻度やペースの偏りだ。半年間1文字たりとも読まないときがあるかと思えば、1日に2冊も読破するなど、とにかく偏っている。

そういう事情が重なって、これまで、読書記録と題したnoteを書いたことはなかった。本について触れる場合も、「拙者ブックレビューは不慣れでござる」のスタンスでやってきた。

上記マガジンの説明が、すべてを物語っている。

でも、今月はちょっと、久しぶりに、たくさん読んだ。活字を欲していた。せっかくなので、初めて、2週間の読書記録をまるっと公開する。

【以下、小声で】なんか、お勉強テイストの本ばっかり読んでた。テストで点数とれるタイプのがり勉じゃないけど、好奇心の赴くままに読みあさるのは好き。
前回からnoteの文体が硬めなのは、直近で読んだ本の影響としか思えない。

まずは書名一覧代わりの目次から。

猪木武徳 社会思想としてのクラシック音楽

リンク先はDMMブックス。
今月はじめに新潮社の70%還元という、とんでもないキャンペーンがあったので購入した。ブラウザ閲覧のできない本で、アプリでのダウンロード読み一択となるので迷ったけれど、これを機にアプリを入れることにした。

タブレットを持っておらず、iPhone(しかも初代SEという、5と同サイズの小さな画面!)で読むことに不安はあったが、いざダウンロードしてみると、目に優しいレイアウトとなっており、小さな画面でも不都合なく読むことができた。ただし、紙で出版されているものが300ページほどであるのに対し、電子版レイアウトでは700ページの超大作と化したため一層の気合を要したのは、ここだけの話(笑)。

内容としては、音楽史の苦手な人に、ぜひ読んでほしい。わたしもそうだけれど、歴史の苦手な人というのは、よっぽど興味がない人を除けば「関連性が認識できない」という課題をかかえていると思う。興味はあるから一つ一つの史実を取り出すとおもしろさを感じるのに、時代や国のつながりがわからないせいで、結局なんだっけ?と首をかしげてしまう…そんな風に頭が弱いのは、わたしだけだろうか。

この本は、いわゆる歴史本ではないものの、「コラムを読み進めるうちにいつの間にか、過去から現在へといざなわれていました」というような、ありがたい構成になっている。

また、著者の専門分野が音楽ではないことも、この本の読みやすさにつながっていると思う。もちろん、専門家が書いた本にはそれ相応の魅力があるけれど、どうしても「専門家による専門家のための~…」というような、ある種の堅苦しさや専門性の高さが露呈してしまう。

そうした心配は、この本に関しては無用。
音楽史をなんとなくでも学んだ経験のある人には、頷きながらさらりと読める楽しい本、音楽のことはほとんどわからないけど興味があるから読んでみようという人にも、とっつきやすい1冊だと思う。

岸田奈美 家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

リンク先はDMMブックス。

noteユーザーさんにはもはや説明不要かもしれないけれど、ひと言だけ書いておくと、岸田奈美さんのご家族の話が詰まったエッセイ集だ。

ぶっちゃけてしまうと、著者のnoteを見ている人には、覚えのあるエピソードが中心。
それでも、おそらく書籍用に校正をかけていると思う。ネット上で話題になったものが書籍化される場合、媒体の違いによる適合・不適合というか、画面を通して読むにはぴったりな文章が、紙に印刷された途端にその魅力を失ってしまう…というような、ギャップによるもどかしさを感じがちだが、この本はちゃんと書籍仕様になっている。だから、読んだことのあるストーリーでも、新しい読み物として楽しむことができた。

わたしは電子版で購入したため「紙に印刷された文章」としては読んでいないものの、電子/紙媒体のどちらで購入しても、満足感は高いと思われる。

古賀史健 取材・執筆・推敲 書く人の教科書

ライターさん向けに書かれた本だけれど、そうではないわたしが読んだのは「文章の世界にいる人って、どんな風に文章と向き合っているんだろう」という好奇心から。

以前にも表明した通り、わたしは書くことを仕事にしようとか、そういう意識がない。読まれる文章を書きたいとかも、まったくゼロと言っては嘘になるかもしれないが、きわめて優先度の低い願望だ。

そんなわたしでも、文章を書く人がどういう視点でその世界に立っているのか、については興味があり、それを知るにはライターの手引書なるものを読んでみるのが早いと考えていた。
失礼ながら、何をきっかけにこの本のことを知ったのかは思い出せない。でも「気になるリスト」に入っており、せっかくなのでこれにしよう、と決めた次第。

内容について細かく触れるつもりはないが、読んでよかったと思える1冊だった。ライターさん・あるいはライター志望の人向け、という前提の下で書かれた本なのに、外野のわたしが読んでもおもしろかったので、ちょっぴり悔しい。

読む前でこそ、「分厚いから時間がかかるかな」「全10章だから10日間かけて読もうかな」などと後ろ向きな気持ちにもなったが、読み始めたら手をとめるのが惜しいくらいだった。

河合隼雄 昔話の深層 ユング心理学とグリム童話

リンク先はDMMブックス。絶版という認識のもと電子版で購入したけれど、絶版になっているのは元の単行本(福音館)のほうで、わたしが購入した講談社のものは、今でも紙の本で手に入る文庫版だと、後から知った。それならば紙のほうが断然読みやすかったな…と、この本に関しては電子版での購入を少し後悔している。

とは言え、自分の専門分野ではないので、むずかしいなと感じるところは、少し流し読みにもなりつつの読書。
きっちり読み込むのであれば紙のほうが、と感じるものの、さらっと中身に触れておきたいだけのわたしには、電子版でも問題はないと言えよう。

先述の通り絶版だと思い込んでいたことにより、気になったのは学生時代だったのに、手に取るまでずいぶんと年月を要してしまった。内容についてはわたしの勉強不足もあり、というか今回の読書の目的(さらっと触れたい、との思い)にそぐわないため、ここでは書かない。

阿満利麿 日本人はなぜ無宗教なのか

以前、「日本人は本当に無宗教なのか」(礫川全次、平凡社新書)を読んだときに、有名な先行研究としてこの本が挙がっていたので、手に取った。先に「日本人は本当に…」を読んでいたおかげか、それともこの本の単独の魅力か、それは断言しかねるが、読みやすく感じた。著者の言いたいことが、わかりやすくまとまっていると思う。

本文中に柳宗悦のことが出てきて、柳のことを2~3年ほど前にいろいろと調べていたわたしとしては外せなかったので、同じ著者の本をすぐに注文した。

阿満利麿 柳宗悦 美の菩薩

楽天さんのあす楽のおかげで、即行で届いたのがこちら。あまりにも「すぐ読みたい」気持ちが強すぎて、購入後すぐに読み始められる電子版と迷ったものの、サンプルページで確認した体裁が好みでなかったため、紙の本にした。

余談だが、わたしはページのデザインが(フォントの種類や大きさ、行間なども含めて)好みでないと、読むペースが落ちてしまう。読めないわけではないにしろ、せっかくの本文内容をきちんと吸収しきれないような感覚に陥るので、できるだけ見やすいものを選ぶようにしている。

新書じゃなくて文庫なのに1000円もするから、どんなに難しい(ページ数の多い)本なのだろうと身構えていたけれど、届いてみたらそうでもなくて安心した。

先述の「日本人はなぜ無宗教なのか」然り、読みやすい。柳についての本を読むのは久しぶりとはいえ初めてではないので、予備知識はあった。それでも決してライトな内容ではないはずのこの本が、読みやすいとは。やはり著者の持つ力なのか。
こうなってくると、阿満氏のほかの本にも興味がわく。

実は、1つ前の投稿とも少し関係してくるのだけれど、わたしが音楽の道に進まなかったのは、音楽をただ音楽としてだけ捉えることに違和感があったからとも言える。柳が美を宗教とするように、音楽ももっと広い概念で展開できる分野なのではないかと思う。それをことばで説明したり、まして体得したりなどするには到底及ばないが、音楽だけを勉強すること(音楽分野での大学院進学)は選ばず、芸術と言う概念に思いを馳せながらフリーターをしていた。

誰かに師事するわけではなく、積極的・恒常的に研究を展開しているわけでもないわたしだけれど、こうして思い立ったときだけでも本を読んだり考えたりする姿勢は、忘れずに持ち続けたい。

七志野さんかく△


▼▼▼追記
この期間に読んだ本がもう1冊あるのだけれど、本文の流れ上うまく組み込めなかったので、ここに残しておく。

吉松隆 クラシック音楽は「ミステリー」である

全体的に興味深かったけれど(この本は多少、音楽の予備知識を持っているほうが、楽しめると思います)、特筆すべきは第三章!
モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」をミステリー作品として捉えて、考察した章です。最後には「この話はフィクションです」との注意書きがありながらも、それっぽく読めて、なにより楽しめてしまうところが、秀逸。とある別作品にまで話をつなげているので、非常にエキサイティングでおすすめです。

絶版本のため、リンク先はDMMブックス。夏のセールで、今ならポイント50%還元で購入できます。

このnote、本文は基本的に読んだ順(時系列)で記載したのだけど、その法則に忠実に従うと、「クラシック音楽は…」が阿満氏の2冊を分断するタイミングに挟まっているのです。短期集中でたくさん本を読むときにありがちな、「とにかく読みたい!」「活字摂取するんじゃ、うおおお」的な高揚感が抑えきれず、阿満氏の2冊目を注文して届くまでのひと晩で読破。
ちょっと載せづらくて、後回しにしてしまいました(てへ)。

基本的に「読書は紙の本」派のわたしですが、このごろようやく電子書籍にも手を出しはじめ、使い分けを模索中です。

お読みいただきありがとうございました。みなさまからのスキやフォロー、シェアなど、とても嬉しいです! いただいたサポートは、わたしもどなたかに贈って、循環させていきたいと思っています。