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ふみの日は過ぎたけれど【お手紙note:ぽこねんさんへ】

大好きなマガジン『とるにたらない話をしよう』が、ひとつの区切りを迎えた。

創刊当初からずっと、わたしの日常に寄り添う大切な存在だった。

以前にも書いたように、わたしは文字見知りが激しく、初見の書き手さんによる文章を心地よく読み進められることは稀である。

でも、この方の文章は特別だった。
はじめから、すっと入り込んできたのだ。

わたしがnoteを始めたのが去年の6月半ばで、しばらくは他の方の文章を読みに行っていなかったから、ようやく読み始めた頃に、そのマガジンが始まったことになる。

心地よい文章だな、もっと読みたいな。

そう思って見ていた人の記事が、今後はマガジン中心になってしまう。購読しなきゃ読めないんだ、と寂しく思い、すぐさま購読した。

と言いたいけれど、実は少し悩んだ。ごめんなさい。

なぜかというと、それまでデジタルコンテンツに課金をしたことがなかったから。

課金という言葉も、あまり好きではないのだけど、今はあえて使う。好きでないからすぐにはできなかったのだという、言い訳も兼ねて。

デジタルで提供されるコンテンツという、なんとなく実体の薄いものに対して、お金を払う行為。

それは、わたしの日常とは無縁のものだった。

以前、雑誌のweb購読サービス(初月無料)に登録したことがあるが、数日で解約した。
わたしにとって雑誌とは、「紙をめくる楽しみ」や「必要に応じて残す(=切り取ることができる)楽しみ」を兼ね備えたものであり、あくまで紙媒体を前提としているからだ。たとえ同じ内容でも、デジタルでは面白みに欠ける(ように、わたしには感じられた)。

漫画や小説でも、画面を通して見るそれは、味気なかった。あくまでも「わたしにとって」という枕詞とセットだが。

そして、音楽のサブスクも使っていない。
あまり音楽を流す習慣がないこと、流すとしてもクラシックやインストのものを好むので、サブスクで手に入りやすい系統とは異なることが、主な理由だ。

ほかには何があるだろう、ゲームとか?
課金以前に、そもそもゲームというものをほとんどしないわたしには、全くもって関係のない話だ。

…というように、デジタルから得るものに対してお金を払うことが、ほんとうになかった。ウイルスバスターぐらいだよ、一定の期間への対価を払っているものなんて。

もちろん、お金を払うこと自体が嫌なのではなく、それまでお金を払いたいと思うものに出合わなかっただけなのだけど、実はマガジンの購読を躊躇したときには、そんな簡単なこともわかっていなかった。「デジタルになんぞ、金は出さん!」みたいなへそまがりじいさんが、わたしの中に居座っていて。

それでも、最後は、読みたい気持ちが勝った。当然と言えば当然だ。まず、そんなに悩む時点で、へそまがりじいさんのような「問答無用で購読しない」という選択肢は無意味だからだ。

かくして、マガジンとのお付き合いが始まった。めでたしめでたし。

ちなみに、マガジンの創刊案内は、誰よりも早く見ていたはずなんです。だって、スキがひとつもついていなかったんだもの。でも、実際に購読したときには、いくらか出遅れていたんだろうなあ。
ってちょっとだけ嫉妬していたり。自分のせいなんだけど。

なんだかもったいないことをした気もしつつ、結果的には納得してお金を払うことに決めたので、わたしには上出来だった。

そう、わたしにとって「納得」というのは、とても大事なことだ。こだわりの強い特性があるのではないかと、ちょっと疑っているのだけど、医学的な証明はされていない。でも、自分の状態に名前がつくことよりも、自分の状態を自分で把握してうまく付き合っていくことのほうが、優先されるべきだと思うから、ひとまずそのままにしている。

そして、そんなわたしの日常で大きなウエイトを占める、「自分にとって納得できるか否か」という基準。わたしは、たくさん考えた上で、それでいてある意味では直感的に、自分が納得できる結論を導き出す。だから、自分で決めたことには、自信を持っている。

大げさかもしれないけど、マガジンひとつ読むのにも、そうやって自分にとって心地いいポイントを探っています。

こんな風に読み始めたマガジンだから、最初から最後まで、どの記事を取っても、わたしの日常に違和感なく存在し続けてくれた。「初めて会った気がしない」という、ドラマの中でしか聞かないようなセリフが、ぴったりだった。

だからどんなに大きな喪失感がやってくるのだろうかと、身構えている。その反面、期待もしている。日常に溶け込むあまり、抜け落ちても気づかないんじゃないか、って。

重い愛を語ってしまったけれど、新しい8月の到来は楽しみでもある。
書き手にとってのみならず、読み手にもそういう8月が訪れるのだということを、言葉にしておきたかった。マガジンの終わりをネガティブにとらえすぎず、明日からの日常も、「納得」を拾い集めて、たんたんと過ごせるように努める。

七志野さんかく△

たんたんと は、ぽこねんさんがよく使われる言葉の中で、好きなもののひとつです。


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