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ep.39 懐かしさのお薬だしときますね

ひさしぶりに口内炎に悩まされています。悲しい、急にとっても生きづらい。笑かしてやろうっておもしろいことを思いついたときも、口を開くのが痛くて機を逃してしまいます。辛い調味料も沁みる。悲しい。口内炎がなかったあの頃に今すぐ戻りたい。

こんばんは。たまです。居場所であるラジオブースが文字でよかったなと今日ほど思った日はありません!(涙目)


ここは、小さなラジオブース、あるいは寝る前の談話室。水曜日は「生活の日記」と「今夜の1曲」をお送りします。


生活の日記

5年会えていない友だちからLINEが送られてきて、ベッドから飛び起きる。上海で就職することになったよ、日本に出張に行くときは連絡するね、と綴ってあった。

彼女と会ったのは、大学のオーケストラサークルで。わたしが3年生のときの1年生。年齢は彼女のほうがひとつ上。留学生だった。

母語は中国語だった彼女だけれど、すでに英語を習得していて、日本語も勉強中だったから、わたしたちふたりの会話は英語と日本語のミックス。英語がてんでダメなわたしも、翻訳アプリを介して、身振り手振り表情筋フル活用で、言葉を尽くした。

それでも言語の壁はやはりあった。伝えたい単語がお互い見つからないなんて、ざらにあって。あるときのおしゃべりでは「イノシシ」という日本語にたどり着くまでに30分くらいかかって、もはやふたりだけのクイズ大会となっていた。

彼女といると心が通うことへの純粋な喜びがあった。お互いが優しいほうの自分を持ち寄ろうとしていたからか、会うだけで心がやわらかくなった。

それにしても、精神的にもスケジュール的にも、練習がハードなサークルだった。ただでさえ留学生活は大変だったはずで、悩ましい思いもたくさんしていたと思う。それでも、「だいじょうぶ?」といつもわたしを気にかけてくれる彼女は姉のようで、「これわかんない!」って尋ねてくるときは妹みたいだった。

当時のわたしは、深海の底みたいなところにメンタルが沈んでいてしんどい日々を過ごしていたのだけれど、必要としあっている友がいる、ということに毎日救われていた。

卒業してからも仕事や研究の近況を伝えあったり、ごはんを食べに出かけたり。だけど、やっぱりコロナ禍でどうしても疎遠になってしまって。元気かな、まだ覚えてくれているかな、とひっそり思い浮かべていたものの、時間が空けば空くほどに連絡はすっかりできていなかった。

だからこそ、LINEがきたとき、文字通り飛び跳ねた。覚えてくれている!会いたかったって言ってくれた。嗚呼うれしくって仕方ないときってこんなに満ちた気持ちなんだねえ。

誰かを想うメッセージが、こんなに明るい心をくれるなら、わたしからもちゃんともっと送ってあげたかった。まったく、愛を伝えるのをためらっちゃだめだ。ごめんね、反省です、これは。

離れた街で暮らしていても、ずっとずっとあなたの味方でいたいって思ってるよ。支えてくれた若き日々のこと、ありがとうって今も抱きしめてる。

ベッドから起き上がり、身支度をして、お弁当をつくる。電車の時間が近づいて、慌てて家を飛び出た。生活の目まぐるしさにかまけずに、愛なんてどんどん伝えていくぞと誓った朝だった。


今夜の1曲

森高千里渡良瀬橋 を。

どうしようもなくその人が滲み出ることばや音楽に触れたとき、無意識のうちにゆさゆさっと感情がゆすられる。それにちっとも色褪せない。だから好きだ、森高千里の歌は。

親が若かったころの文化にやたらと憧れる時期があって、こっそり棚の奥から手に取った古いCDが森高千里だった。普段あまり意見一致のみられない父母が「モリタカの歌ってなんかいいんだよね」と話すのを聞いて、妙に気になっていたのだ。”聖子ちゃん”や”明菜”ともちがい、ふたりして”モリタカ”と苗字で呼んでいたのも不思議だったから。

「私がオバさんになっても」「あるOLの青春〜A子の場合〜」「非実力派宣言」……。曲名も歌詞も、彼女の音楽は愉快でへんてこで、10代のわたしには他にない新鮮なオンパレードだった。

だけどやっぱり「渡良瀬橋」がすき。夕日がきれいな町をいっしょに眺めた、(わたしにはないはずの)あなたとの思い出に胸がきゅっとなる。MVを締めくくるクレジットも、やけに業務的でかえって良い。

このひとにしか描けない歌だなあと沁み入るのに、誰も彼もの懐かしさの琴線にも触れちゃう、魔法みたいな歌だと思います。


半袖、解禁しましたか?わたしは、暑いのか寒いのか、今週ずっと錯乱状態です。この暑さで半袖を始めちゃって、夏のわたしだいじょうぶなの?なんて要らぬ心配をして、間をとって七分袖でやり過ごしたりなどしています。

混乱しながらもどうにか木曜日も金曜日も乗り越えようと思います、がんばろう洋服。

今日もおつかれさまでした。あなたも、わたしも。


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