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【エッセイ】久々にBefore Sunriseを観たんだけども

ドイツから飛行機で帰ってくる際に、機内の映画リストに「Before シリーズ」が入っていたので、久々に「Before Sunrise」(邦題「恋人までの距離」☚うわ、ださいっ)を観ることにした(1995年の作品なので、画質とかはよくない)。

イーサン・ホーク扮するアメリカ人青年ジェシーと、ジュリー・デルピー扮するフランス人女学生セリーヌが、パリ行きの長距離列車のなかで出会い、意気投合し、ウィーンで途中下車をして、一夜限りのデートをするというもの。

ストーリーはとてもシンプルで、特になにか大きな事件が起こるわけではない。ただ、ウィーンの美しい街を背景に、二人の会話が延々と続くのである。この会話がまたすごくおしゃれで、2人のあいだに特別なバイブがあることがよく伝わってくる。だからこそ、たった一日だけど、それが2人の人生にとって特別な1日となることに説得力がでてくるのである。そして、何より俳優たちの演技がとても自然でうまい。久々に観たイーサン・ホークは、とっても若くて、恋に落ちたばかりの男の子ってこんな顔するよねっていう表情や、彼女に触れたいけどどうしようっていう仕草を見事に表現していた。

Before シリーズの面白いところは、各シリーズ(「Before Sunset」、「Before Midnight」)が9年ごとに撮影されていて、映画も、現実の役者と同様に、9歳ずつ年を重ねた2人の関係性が描かれていることである。

あんなにロマンチックに恋に落ちた2人であっても、「Before Midnight」にもなると子育てや結婚生活など、圧倒的な現実のなかで、不平・不満がさく裂する。終盤、ジェシーが久々に夫婦の時間を取ろうとしたのに、些細な会話がきっかけで言い争いに発展してしまうのだけれど、そのとき、セリーヌはおっぱい丸出しというあられもない恰好で、大声を張り上げる。「Before Sunrise」のあの美しい女学生セリーヌはどこにいったの?と仰天してしまう。それでも、最後には、セリーヌに愛を語るジェシーに、発展した2人の関係性と、深い愛を感じる、という粋な構成になっている。

どんなに大恋愛だったとしても、その恋は続くの?
3年後、10年後はどうなるの?
生活を一緒にすると、ロマンスは消えていくの?

という、誰もが一度は抱いたことのある疑問に対する1つの回答を与えてくれるのが、ビフォア・シリーズである。なんだか夫婦関係がまんねりして、ちょっと浮気心がうずいているという人にこそ、観てほしい映画かもしれない(この観点からは、Netflixのマリッジ・ストリーもすごくよかった。マリッジ・ストーリーの2人は結局は別れるという選択をとるのだけど。嫌いではない2人の別れの過程をみるのは切なくていたたまれなかった)。

平均寿命が延びて、しかも女性の社会進出も進んでいくと、どうしても年を重ねていくうちに、2人の人生設計がうまく重ならなくなってしまうことって起きてしまうと思う。そんなときに、どういう選択をとっていくのか。ただ好きだとか、愛しているだけでは済まないところが、ディズニーのおとぎ話とは違う、私たちが実際に直面する現実で、それに対する回答は夫婦の数だけあるから、なかなか友人にも相談できない。そんなときに、こういう映画をみると、少し頭の整理にもなるかもしれない。

ちなみに、私が「Beforeシリーズ」を観たことがある人との会話で好きなのが、このシリーズのなかで、どの作品が一番好きかっていう質問にお互いに答えること。みなさんは、どれが好きですか。

私は、いつも悩むのですが、出会って十数年後のリアリティよりも、やっぱり恋に落ちた瞬間のリアリティの方が好きだなっていう理由で、正直に答えるときは「Before Sunrise」だと答えます(周りの様子をみて大人ぶりたいときは、「Before Midnight」って答えることがあります笑)。映画なので、夢にひたっていたいという恋愛脳が飛び出してきちゃうのかもしれません。

それと、「Before Sunrise」の撮影の時期が、ちょうど5月か6月なんです。ヨーロッパの5月・6月って本当に美しくて、自分がドイツに留学してたときのことをどうしても思い出してしまう、っていうのもあります。なんだか自分の青春時代を追体験しているような気持ちになるんですよね。

あっ「Before Sunset」もパリ市内が美しいですよ!自分の年齢的にはもしかすると、いまは「Before Sunset」が一番刺さるかもしれないので、またドイツに帰るときにでも観てみようと思います。

まだ、観たことがないという人は、ぜひぜひシリーズ全作を観てみてくださいね。


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