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≪詩≫Family History #シロクマ文芸部(お題:冬の色)

冬の色に染まったこの豪雪がそうさせるのだろうか
そのまっさらな誰の手もついていない雪のうえを
ぎゅっ、ぎゅっと 踏みしめて歩くと、
人はどうしようもないことを思い出し、考えてしまう。

記憶の断片をかき集めてつないでいけば
家族の歴史ができあがった
そこには
どうしようもなく人間らしく足掻いた人々の痕跡があった
悲しみも、醜さも、憎しみも、愛おしさも
時折り訪れる春の陽光のような喜びも
不完全な形で集積しては、離散していく

蓋を開けてみれば
小さな社会の創造と破壊の歴史ではないか
破壊者の正体はいつだって弱く傷ついた個人
破壊者が、個人の闘争の意味も理解せぬまま
巨大な社会と対峙するさまは痛ましくもあり、
時に滑稽ですらあり、そして憎々しくもある
その渦に巻き込まれれば、小さな社会など
いとも簡単に崩れていくのだから

しかし不思議にも、
小さな社会は、破壊者と同時に再生者をも生み出す
再生者はその慈しみの心で
傷ついた過去を洗い流し
許しを与えてきたというのだろうか
破壊者は捨てた道の先で救われたのだろうか

奇妙な均衡のうえに
人という人が無様に転がっていく
私の存在もそのなかの小さな点でしかない
脈々と受け継がれていく血は
個人の意志と選択を超えるというのだろうか
それを運命という者もいる
しかし、私はそれを信じない



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