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小説みたいな

帰り道、たまにやっているマルシェを通りがかった。

いつもは素通りしてしまうのだけれど、今日はちょうどそこを通過するタイミングで電話が。立ち止まって通話しながら新鮮そうな野菜やワインを眺めていたら、ちょっと寄ってみたくなった。

「ギリシャワインってどういうものなんですか?」

お店の人に聞いてみる。とても感じのよい方で、無知なわたしにギリシャの歴史から作り方まで、色々と教えてくださった。小柄で、ポニーテールがよく似合うお姉さん。せっかくなら「ギリシャワインと言えばこれ」というのを飲んでみたいと伝えると、好き嫌いが分かれるからまずは飲みきりサイズがお勧めとのことで、小さなボトルを買ってみることにした。

そのまま横に3歩すすむ。つづくは八百屋さん。ワインを買ったからには真っ赤に熟れたトマトを無視せずにはいられなかった。

『桃太郎 1かご400円』
トマトなのにというツッコミはオジさんみたいだからやめておく。

「ワインにトマト、良いねぇ。もう今日飲んじゃうでしょ。」と朗らかに笑う店主のおじいちゃん。思考が読まれている。ワイン屋さんのお姉さんも笑っている。その通りです、とわたしも笑った。

「ワイン好きな女性は焼酎でも日本酒でもなんでも好きだ。気づいたら財布の中身も女の人もいなくなってるんだよナァ。愛くらい置いてってくれればいいのに。」

ニコニコと楽しそうに話すおじいちゃん。ワイン屋さんと一緒にふふふと聞いていると、さらに3歩すすんだところにある乾物屋のお兄さんが、「またろくでもないことばっかり言って」と昆布くらいの堅さの釘を刺した。良い味出てる。

お会計を済ませ、「明日、飲みすぎて会社に来られないかもしれません」と言うと、3人とも笑いながら、気をつけてねーと見送ってくださった。お酒にも帰り道にも気をつけなければならない。

ああ、なんだか小説みたいだ。そんなこと思いながら久々にnoteを開き、じんわりあたたかくちょっと浮かれたきもちで帰路に着くのであった。

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