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69. お金の話など

 朝一に転職面談を入れ、エージェントのお姉さんに褒めてもらうことで機嫌良く一日を始める。褒められたこと以外あまり聞いていない。

 社会人になってから褒められることの多さに驚く。当たり前に働いて、当たり前に仕事を片付けていくだけで(これといって目立った成果を出しているわけではなく、片付けているだけ)、事あるごとに褒めてもらえる。最高じゃん。
 簡単なミスをする回数が、これまでの人生と比較して格段に減った。お金を貰えればまじめにやるといった有様である。当然といえば当然だが、お金の力はすごいなぁと思う。家族が始終金銭的な問題で揉めていただけに、3年目にしてもう守銭奴の兆しが見られる。

 以前どこかの偉い人が、絶対に無償では手伝わせません、ということを言っていた。とても人望のある人で、その人から技術を学びたがる人が絶えなかったのだろう。ボランティアの精神は素晴らしい。僕もその善意は賞賛したい。ただ、お金によって生まれる責任感を持ち続けてほしい。仕事の先に人がいる限り、この責任感なしには働かせられない、という主旨だった。嫌な話だな、と思う人もいれば、感心する人もいただろう。ふーんそんなもんか、と当時は思っていた。その通りだった。

 同じ部署の社員同士であっても、その人の管轄外の数値の話をしに行くのは結構気が引けてしまう。何でも誠意をもって取り組む人と、自分の評価に直結する仕事だけを速いペースでこなしていく人とがいるから。そしてその双方に私は敬意を持っている。腰を低くしてお願いしに行く。数値を上げねばならない理由を丁寧に話して、腹落ちしてるかな、と様子を窺う。適当に済まされることの方が多く、稀に結果が出た時にはいたく感動することになる。

 仕事の先にいる見えない人々よりも、自分の生活に不可欠なお金の方が力は強い。ただ、ほんの少しだけその優劣を崩すものがあるとすれば、感謝や褒め言葉なのかな、と思う。
 毎日うんとたくさん褒められたい。

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