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蛇含草ホテル

「蛇含草」をご存知でしょうか?
蛇が含む草と書いて「ジャガンソウ」
古典落語に登場する、食べると人がどろどろに解けちゃう摩訶不思議な植物です。

この「蛇含草」をテーマにした舞台があり、
尚且つ大好きな噺家さんのおひとりでございます桂米紫さんもご出演されると聞き、これを見逃したら絶対後悔する…!と、立春の日に扇町の劇場へと足を運びました。

マシュマロテントさんの公演を拝見するのは初めてでしたが、
この蛇含草ホテルがすっごく面白かった!

あっと驚く不思議な世界観!
壺算山、ハシビロコウみたいなウグイス、ブラック"時うどん"屋、怪力(…だったのかな?)男と怪力男に乗る女、突然の鳴り物、すみれ畑の住人、噺家さんだけ使えるイタコ術、高校の落研、「天ぷらは衣が多ければ多い方が美味しい」、ヤケクソポテトサラダ、死者にお湯を借りようとする噺家さん、ピーナッツバターつきの焼き芋、落語が聴ける鉄板焼き屋…etc
パワーワードがたくさんあって、ずっと心がワクワクしてました!
こういう、シュールで不思議な世界の物語、大好きなんです。(森見登美彦さんの小説が好きな方はめちゃめちゃハマると思います。)

1時間50分がすごく濃くって、
半日くらい見てたんじゃないかな?てくらい楽しかったです!

劇中の米紫さんの落語(蛇含草)
エネルギッシュでひとつひとつのセリフで表情筋と動きを100フル回転してる!てくらいパワーがありました。
そしてそして、前半の蛇含草(古典落語をショート版にしたもの)と後半の蛇含草(劇のテーマに合わせたもの)の違いにあっと驚きました!
後半の蛇含草をきっかけに、
物語の雰囲気がかわるんです。
落語をこう絡めてくるのか…!すごい…!と鳥肌が立ちました!

メルヘンな蛇含草ホテルの世界ですが
この物語は「孤独死した"静"という女性の真相」が大きなテーマとなっております。

たくさん食べるのが大好きで、
明るくて、優しくて、すごく楽しそうに笑っている静さん。(なんと!元落研。)

静さんを知れば知るほど彼女のことが大好きになりましたし、とても魅力的でチャーミングな女性。

そんな彼女が孤独を抱えて衰弱していき
「なんにもなかったの」と呟くシーンは胸がきゅーっとなりました。

わかるわかる。私にもあった。
大変なことが続いて、ご飯が食べられなくなるくらい悲しくて、孤独で、
「なんにもなかったの」って感じた時。

だけどそんな時、
離れていても大切に思っていてくれる人はいるってことに生きていて気づけたから、
静さんの「なんにもなかったの」のセリフに対する劇中での返答が、
とても温かくて愛おしくて目がうるうるっとなりました。

私は「蛇含草を食べること」=「生きることを諦める行為」と解釈したのですが
それを止めてくれる人が静さんにいて良かったなあ。もしかしたら途中から全て虚構なのかもしれないけれど、でも、嘘でも良いからフィクションの中で静さんは救われていて欲しい。そんな風に思いました。

千秋楽、見に行けて良かったです!