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後期お局の憂鬱

勤続年数の長い女性社員は時に「お局様」と呼ばれます。
ただ長いだけでなく、若手に意地悪するとか裏のボス的存在とか
いろいろ付加価値?がついた呼称ではありますが、
実際どうかよりも、長く勤めているからコワいに違いないという
先入観もあったりするのかなあ…と
後期お局世代としては、思うことがあります。

いまどき、本当に意地悪したり暴言を吐いたりなんかしたら
まともな職場であれば、パワハラで即アウトです。
むしろ、この人材不足業務過多残業不可の現状において、
部署の仕事は優秀な若手に支えられていると判っているから
どちらかというと、若手のご機嫌を損ねることを恐れます。
そもそも、DXやらウィズコロナやらで
新しい技術、新しい働き方がどんどん導入される中で
IT弱者の(特に後期)お局世代は、それだけで立場が弱いです。
長く勤めていれば何でも知っていて何でもできて
だから立場が強い、などどいう単純なロジックは
もはや過去のものです。
年次の長短でマウントが取れる時代ではないのです。
逆に、熱意があるとか頑張り屋さんとか
この子応援したい!と思った相手にはつい
おばさん特有のお節介気質が発動し、意地悪どころか
手塩にかけて大事に育てようと張り切ってしまいます。

一方、お局の上司たち(従ってそれ相応の年齢層)は
自分がさらに上の世代から受けた「教育」があたりまえで
でも今の若い世代に同じ言動を取ったら即辞められてしまうので
若手にはものすごく気を遣って、丁寧に接します。
そして、溜まった鬱憤をすぐ下の世代=お局にぶつけます。
気分次第で相当ビビッドな言葉を浴びせてきます。
ある程度は昔の価値観を共有しているので
「パワハラだ」と噛みついてこないと踏んでいるのです。

つまり、上からはボコられ下には気を遣う、それが今のお局です。

後期お局ともなれば、心身ともに衰えを自覚していて
更年期障害で思考力も落ちるし、新しい人の顔も覚えられず
(中年以上が若手の名前をいつまでも覚えないのは
相手を軽んじている訳ではなく、脳機能の問題です)
アイデア出しもフットワークも若手の軽やかさに敵いません。
立場や所掌によって、求められるものもそれにかかる時間も
もちろん違いますが、傍から見ると「仕事してない」と
思われているのではないかと、びくびくしています。
時間外労働はいくらしてもいいので(定額使い放題なので)
勤務時間すなわち体力でカバーしようとしても、体がもちません。
二十代の頃は20連勤できても、今は7連勤でグロッキーです。

それでも、長く勤めている人というのは、きっと
その会社あるいは仕事に愛着や誇りを持っているので
自分も役に立ちたいと思って、そこにいます。

ボコってくる上司どもはもう処置なしとして
(と考えること自体が古い価値観なのですね)、
せめて下の世代とはいい関係になりたいなあ…と
祈るような気持ちでいるので、そこで端から
「お局だから悪者に違いない」
と拒絶されると、ちょっと寂しい気持ちになります。
初めて話すときに腰が引けているくらいは、まあ
仕方ないかな、と苦笑するしかありませんが。