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「アーリーリタイアも面白い」700人以上と向き合ってきたキャリアアドバイザーが一番大切にしていること

自分の可能性に気付いていない人が、転職活動を通して可能性に気付いていくこと。それが、キャリアアドバイザーの仕事のやりがいです。自分の価値を正しく理解していない悲観的な人も多いので、一歩を踏み出せるように背中を押すのが僕の役目だと思っています」

某大手転職支援サービスでキャリアアドバイザーとして働く33歳のKさんは、これまでに700人以上の転職希望者と向き合ってきた。成果を上げ、会社から評価され、世間的には成功しているように見える。

しかし、やりがいを感じ、評価を得ているものの、Kさんは「会社で働くことに何の未練もない」と語る。アーリーリタイアを視野に入れて、日々を過ごしている。そんなKさんの生き方とは。

「アーリーリタイアという選択もある」定年まで働くのは当たり前ではない

50歳でアーリーリタイアをしたいと考えています。会社では上司と毎週1on1があるんですが、その時に特別評価シートというものを提出します。これはキャリアプランについて考えるフレームワークで、将来やりたいことについての項目にはいつもアーリーリタイアと記入しているんです。

じつは、今の会社に転職するまでは定年退職まで働くことが当たり前と思っていました。

父は公務員、母は教師という家庭で育ちました。2人とも堅実に働き、定年退職しています。だから「自分もきっとそうなるんだろうな」と思っていました。そのような思いが3年前に転職したことでガラリと変わったんです。

今の会社では起業をするために退職して「ダメだったらまた会社で働くか」という働き方に対する柔軟な考えを持つ人が多いです。実際に、45歳でアーリーリタイアをする人もいます。また、投資で稼ぎつつ、好きなことをしている人を身近に見ていると、そのような生き方も面白いなと次第に思うようになりました。

生き方は思っていた以上に多様だと知り、気持ちに随分変化が起きましたね。だからこそ、今までの価値観とは異なることに挑戦したいと思っています。

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「正社員を辞める不安はない」毎年800人の退職を目の当たりにして生まれた変化

以前は正社員を辞めることには抵抗感がありました。

でも、今の会社に入ってから年間で2割くらいの社員が辞めていく状況を目の当たりにして、正社員を辞めることに対する不安はなくなりましたね。社員数は4,000人くらいなので、毎年800人くらい辞めていっていると考えると驚きですよね。

辞めていった人たちは、みんなそれぞれ何とかなっているらしいです。選択肢としては大企業に行くか、中小企業に行くか、独立するかなどさまざま。中には出戻りする人もいます。

今の時代、企業に所属することだけが働き方に対する答えではないです。無職になることを心配する人いますが、70、80年といった人生という長いスパンで考えると、数ヶ月無職になるのは何の問題もないと思います。私自身、明日から会社員を辞めたとしても、どこか拾ってくれるだろうという楽観的な思いがあります。

一番突き抜けているのは社長「自分ももっと自由に生きていい」

私が働いている会社にはさまざまな価値観の人がいますが、一番ぶっ飛んでいるのは社長かもしれません。採用サイトにインタビューが掲載されているんですが、すごく尖ったことを言っているんですよ。上司に対して「あなたのやり方よりも私のやり方のほうが絶対いい」とか「私は会社のために仕事をしているんじゃない」みたいなことを現場に出ていた時に言っていたということを赤裸々に語っているんです(笑)。

極めつけに「自分が考えたことがダメだった時は、何度か坊主にしました」というエピソードも載っていて。社長も成功だけでなく、坊主にするくらいの失敗もしているわけなんですよね(笑)。社長の言葉はとても強烈で、改めて僕ももっと自由に生きていいんだなと思えました。

生きる基準は面白さ「会社と貴族はお金で買える」

今、会社員をやっていますが、会社を買うことと貴族になることを考えています。単純に面白そうだから、興味を持っているんです。

どちらも買うことが難しいものだと思うかもしれませんが、じつは会社って300万円くらいで買えるんですよ。私が購入を検討しているのはもやし会社。もやしの新規営業って面白そうじゃないですか。普段は会社で働きつつ、休日にもやしを売る生活に僕は魅力を感じます。

そして、貴族の爵位も買えるんですよ。貴族は生まれながらの家柄なので、なれないものだと思っていたんです。それが、爵位を買うことによって、貴族になれるってすごくないですか。しかも、値段もシーランド公国の貴族の爵位なら3万円とかで購入できちゃうんです。

大学時代にヨーロッパを旅行した際に新聞に爵位売りますって書いてあるのを目にして「買えるんだ!」と思ったのが興味を持ったきっかけでした。

会社の名刺にも書いていいらしいので、シーランド公国伯爵みたいな感じで書くのもいいですよね。「実はナイトなんです、貴族なんです」と言って名刺を渡してみたいです(笑)。

「面白そうなのいいじゃん」と思うようになったのは17、18歳位からです。両親が自由にさせてくれて、「何やってもいいぞ」「どこ行ってもいいぞ」という育て方をしてくれました。だから高校時代も青春18切符を使って一人で地方旅行によく行っていましたね。

大学に進学する時も「興味があるところに住もう」という基準で選んだんですよ。関東出身なんですが、関西に興味があったので関西の大学に進学しました。僕にとっては面白いかどうか、興味が持てるかどうかが大切な判断基準です。

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自分らしく働くために数値目標の達成を常に意識

日頃、仕事では自分らしくいられるということを大切にしています。ただし、それを実現するためには、会社に貢献するために数値を達成することが何よりも重要です。目標が達成できていないのに「自分らしく」と言っていたら、上司に「お前さ……」と思われてしまうので。

何も言われたくないからこそ、より効率的に、より早く数値目標を達成することを常に意識しています。

なので、仕事でつらいことはあまりなく、ストレスもあまり感じないですね。強いて言うなら転職してから3ヶ月間はきつかったです。前職では会社に行かない生活だったのですが、今の会社では個人情報の観点から毎日出社しなくてはなりません。正直、満員電車での通勤が本当に苦痛でした。慣れるまでは時間がかかるタイプなので、その時は全部がとにかくきつかったです。

「面白いことが一番大切」出世欲はない

数値目標をしっかりと達成していますが、出世に対する欲はあまりありません。次のステージがグループマネージャーという立場になるんですが、あまりやりたいとは思わないです。部下のキャリアに関わるのは自分にとっては荷が重いなと思っていて。

上司から「お前が頑張ったらマネージャーに推薦するぞ」という感じで人参をぶら下げられるんですが。

でも、自分が面白いと思えることをやれるかどうかが僕にとっては一番大切。だから、休みに自分のもやし会社でもやしを売ることにやっぱり魅力を感じます(笑)。

やる権利とやめる権利がある だから挑戦できる

もちろん今の立場で数値目標を達成するだけでなく、人を育てるリーダーの役割を任されることはあります。上司にも期待していると言われていますので、役割を全うして経験を積んでおこう思っています。

ただ、出世欲のない私がそれに挑戦しようと思えるのは、この会社にやらない自由もあるからです。もし、新しい役割を与えられても、実際に取り組んでみて難しいと感じたら、今の立場を降ろしてもらうことができます。やる自由もやらない自由も与えてくれる。それは、この会社ならではの魅力だと思っています。

特殊な会社なので、経験のない新卒での入社はあまりおすすめできません。この会社が普通だと思うと、他の会社で苦労すると思うので。

ただし、やめる自由がある会社はなかなかないので、転職先としてはおすすめです。経験として2年くらい働くと、働き方に対する視野が広がると思いますよ。

「無理な期待は抱かせない、でも最後まで諦めない」キャリアアドバイザーとして大切にしていること

人にはできることと、できないことが明確にあると思うんです。だから、キャリアアドバイザーとしていつも転職希望者には客観的に線引きをしてあげて、期待値の調整をするようにしています。もちろん、本人の希望をなるべく叶えてあげるための後押しは当然します。

同時に変な期待を抱かせてもいけないとは思うんです。だから、「あなたはこんなことができますが、これを実現するのはたぶん難しいです」とはっきりと伝えます。それでも難しいことに挑戦したい場合、「確率としてかなり低いから、つらい思いをするかもしれないけど覚悟はありますか」って念押しします。それで合意が得られたら「僕はあなたのことを全力で応援します」って宣言するんです。

「明日枯れる花にも水をやる」という大平正芳元首相の言葉があります。別にお客様のことを枯れると思っているわけではないですよ(笑)。僕はこの仕事は諦めないことが大事だと思っています。キャリアアドバイザーである僕が諦めたら、お客さまは誰を頼ればいいのかわからなくなってしまう。

だから、可能性が0ではないのなら、どれだけ厳しくても僕はお客さまが望む転職を諦めません。

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プライベートも仕事も「自分もよし、相手もよし」

これまで大切にしてきた価値観は「自分もよし、相手もよし」です。自分も楽しく相手も楽しくいられることが、仕事でもプライベートでも一番ですからね。仕事だと、数字を達成すると上司も小言を言わなくていいし、僕も楽しくいられるじゃないですか。

生きるとは、面白いと思うことをやることだと僕は思っています。アーリーリタイア後はある程度は生活水準を維持しつつ、面白いこと、好きなことをやっていければいいですね。

もしリタイア生活に飽きたらまた仕事しようかなと。だから、万が一ブランクが空いても、ある程度就職できるために今の仕事頑張ります。何だかんだ箔がつくらしいのでこの会社(笑)。

【編集後記】Kさんは私が1年前に転職する際にお世話になったキャリアアドバイザーさん。私のキャリアに多少のブランクがあったにも関わらず、最後まで諦めずに励まし続けてくれました。結果、希望する企業から内定をもらえました。この場を借りて改めて感謝です。今回、Kさんをインタビューを通して深ぼるととても意外な一面が見えました。優秀な方にも関わらず、アーリーリタイアを考え、出世にも興味がないのは驚きでした。仕事で成果を出しているのは、自分らしくいるため、そして面白いことをするため。みなさんは何のために成果を出していますか?私は上司の顔色を見ながら成果を出そうと頑張っていたことが一時期ありました。だからこそKさんの成果を出すための動機を聞いて、少しホッとしました。もっと自分本位に仕事と向き合うのも1つの考え方なのではないでしょうか。

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