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糖尿病をもつ人、一人一人の人生に最適な医療を 第62回日本糖尿病学会学術集会に参加して

少し前になりますが、5月17〜19日開催の日本糖尿病学会学術集会で、運動、食事、医療、疫学などをテーマにしたいくつかのシンポジウムを聴講しました。それぞれのメインの内容についてレポートをとも思っていましたが、全体で感じたことを忘れる前に少し。

今会のテーマは、「糖尿病」のない世界を目指して です。

大会長の植木浩二郎先生のことばを引用しつつ、少し筆者が一部解釈・改変しますと、

日本糖尿病学会は、医療者として、画期的な治療法の開発により「糖尿病」のない世界、治癒を目標としている。
しかし、目標達成に至っていないなか、次善の目標は、糖尿病による「不利益・リスク」をできる限り減らすこと。
これにより、健康寿命の延伸だけではなく、できる限り糖尿病を持つ本人のライフスタイルを尊重して、その人の人生の目標達成に支障をきたさないよう、
最小の身体的・心理的・経済的負担で、
合併症・併存症を阻止できる治療法を選択・提案し、
その内容を理解してもらい、かつ実行してもらうこと、

としています。

こうしたテーマのなか参加して感じたのは、糖尿病を持つ一人一人(個別性)への医療に向けて、さまざまなアプローチがとても、とても、進んでいるということ。

「合併症・併存症を阻止できる治療法」として、
完治する画期的な治療法ではないとしても、素人の私が聞いただけでも、多くの糖尿病治療薬が開発され、医療DXによりデータ収集もどんどん進歩し(その人に病態や背景を考慮したうえでの最適な薬の提案・選択の幅の広がり、機械学習AI? のサポートも進化しそうですね)、ひとりひとり(個別性)に適した治療が進んでいます。
疫学という全体をみる学問においても、「平均」を見るだけでなく、「個人のばらつき(異質性)」に注視すべき、というお話もでていました。

そして
「その内容を理解してもらい、かつ実行してもらう」こと、
ここは、AIでは代わることのできない、人間の役割かと。
糖尿病をもつ人の治療への気持ち、感じ方、そして生活や生き方は、一人一人違い、また変化していきます。
医療として、こうした一人一人(個別性)に、伝えること、聴くこと、寄りそうことの重要性を強く感じました。

大会長特別企画のシンポジウムとして「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」が3セッション企画されたのも、こうした点を学会として大切に感じているからではないか、と。

「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」(1日目)のグラフィックレコーディング 
撮影OKとのこと
「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」(2日目)のグラフィックレコーディング 
撮影OKとのこと
「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」(3日目)のグラフィックレコーディング 
撮影OKとのこと

「シンポジウム33╱病気を考える医学,ひとに優しい医療」で石井均先生が、「QOLを健康関連だけでなく、もっと広く、その人の人生観、幸福ということも含めて考えていくことが大切では」と、話されていたことに、強くうなずいていました。

シンポジウム33をはじめ、いろいろ学んだ内容などを書きたいと思っていたのですがなかなか厳しくなってきてしまいましたので……。“感じたこと”を忘れる前に、でした。そんなわけで抽象的なのは、お許しを。

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