ものもらい

暮らしと音楽 / ことばを紡ぐINFJ-T

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最近の記事

ガムラスタンの古通りに行列ができる日

「ドラマティックに人が死ぬストーリーって売れるじゃないですか。」 されど、ここまでハイパーインフレーションになるとは。 まあ、私だって彼の掌の上で転がされているだけの有象無象のうちのひとりだ。 2019年。19歳。そのときは一人でこそこそ楽しんでいた。読書を嗜むような感じで、ヨルシカという私小説を楽しんでいた。SNSでの評価とか、「#(ハッシュタグ)ヨルシカ」で調べたこともなかった。 後書きに入ったのは、活字中毒の私がどうしてもn-bunaさんのコラムが読みたくて我慢が

    • 吐出

      耐えられない気持ちがあるとこうして泥水のように言葉が氾濫してくる。ここ1-2ヵ月は淀んだ川の上澄みのようなものを飲んだり、吐いたり、そんな季節であった。 6月初旬、母と祖母から暴力を振るわれる。私が勝手に一人暮らしの家を契約したからだ。もっとも、妄想癖の母の中では男と同棲するためだと決めつけていたようで、わたしの部屋を漁った時に物件の間取りを見つけ、発狂して祖母にチクった。遺伝子的にもっと強い妄想癖のある祖母は一段と発狂し、ふたりの発狂した人間の待つ家に、わたしは何も知らず

      • 可哀相

        「可哀相」という言葉が嫌いだ。 人から言われるのももちろん、自分も人に対してむやみに使おうとはしないだろう。 今日はおだやかな文章ではないので、代わりにおだやかな写真を貼っておきます。 母が、「可哀相」という言葉をよく使う。 人に対しても、私に対しても、使う。 もともと母は、人から言われることをそこまで気にしないたちで、相手への言葉づかいも色んな意味で「正直」なところがある。 けれど、そんな親のもと育ったわたしのは、ほとんど真反対の性格で、言葉のひとつひとつを掬うこ

        • à la carte

          note、春の連続投稿チャレンジをやっているみたいなので、わたしも書いてみようと思う。 きょうは #はじめて買ったCD というお題を選んだ。 小さいころから、家の中では音楽が流れているのがふつうだったので、色んなCDを聴きながら育ったけれど、はじめて「買った」CDはきっとこれだったと思う。 藤原さくら EP 「à la carte」(2015年) シンガーソングライター、藤原さくらさんが、まだ駆け出しのころにリリースされたEP。 当時のわたしは中学生。 このCDを買

        ガムラスタンの古通りに行列ができる日

          Blauer Himmel

          わたしの毎週の癒しが、ついに終わってしまった。 さみしくなるなあ。 初回放送から、欠かさず毎週見ていた。こんなに熱心になるのは、かなり珍しいほう。それほどに、わたしの心には、深く深く、入り込む作品だった。 ドラマティックな展開、刺激的なストーリー、気を衒った演出、それらを駆使してどうにか聴衆を飽きさせまいとする令和の──もちろん、それだけではないが、そんな「タイパ」なものづくり時代に一石を投じた、ように思う。 けれども、普段そんな世界で生きているからこそ、金曜日の夜にな

          そこで見ている

          いつもは働いているはずのこの時間、家でぼうっとしていると、ふと学生のころを思い出す。あのころは、持て余すほどの時間──滝のように流れが永遠に続くようにみえた、泡沫の──時間と、そしてそれをどうしていいかわからない自分に悩んでいた。 そんなことを考えて、きょうは午後から会社へ行くのだけれども。自由になんでもできる時間というのは、持て余すほうがつらいことだってある。8時間くらいの労働で得た対価は、なんだか地に足をつけて生きている感じ、をくれる。 途方な時間のなか、浮き足立って

          そこで見ている

          52ヘルツ

          2年前に読んだ、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」。映画化したので観に行った。 当時は、本屋大賞受賞作品とは知らず読みはじめたのだが、深夜からどっぷり作品の沼に浸かってしまい、気付いたら夜が明けていたのを覚えている。 その後、「星を掬う」や「コンビニ兄弟」などなどを読んでいき、ハートウォーミングなそのこさんの文体が好きになった。 52ヘルツのクジラたちは、初読以降、読み返してはいなかったのだが、今年の初夏ごろに仲のいい友人に、「あなたならこの話が分かると思って」

          カメラのワークショップ

          ものもらいです。 先日、Nikonの主催しているカメラのワークショップに行ってきました。 写真の雰囲気がとても好きで見ていた、フォトグラファーさんが講師をされているワークショップです。 わたしは、とくにカメラの経験を積んでいるわけではなく、ただ手元にあるミラーレスカメラで遊んだり、写真編集して楽しんだりしているだけなのですが、ふと応募してしまいました…(笑) じつは応募は2回目。前回は先着順のスピードで負けたのでした。 「初心者向け」の言葉があっても、初めてのことには

          カメラのワークショップ

          爆弾と泉

          静まり返った深夜に、少女のハミングが響き渡る。不規則な音の並びは、不気味に、しかし優しくおだやかに空気を伝ってゆく。 社会の中で「にこやか」な彼女の寝室は、抑制された彼女の思想の住処だった。 一見普通に見えるその空間だが、無機質なソファも、棚も、彼女を安らかに見守っているように思われた。 「実は、枕の中身は綿(わた)じゃなくて爆弾なのよ」なんて、虚空に呟いてしまったりする日もある。見るからに柔らかな布団だって、彼女の目には鉄の鎧のように映っていた。 決して誰にも暴かれないよ