見出し画像

デセールへのゆめ

そしてあたしは駱駝やエミューや蛇や鰐、蠍や胡蜂、烏の丸焼きなどの寄食に歓びあるくように成長した。

成長したあたしにとって社会の人間のひとりひとりはぎりぎりのところで興味の対象ではあったが、やはり期待すべきものではなかった。そして、経験と知識と実績の切磋琢磨する社会という構造そのものが実体として現れ見えてきたときから、やはりあたしは社会からの報酬など求めていなかった。

然るところこの世は刺激的であったがそれを去勢させているのは人間の共同体であると考えていた。

退屈しのぎにあたしは季節の木の芽を香ってはいまだに無法を尽くしたがっていた。
あたしは領地の森で鼠をとり、兎を狩り、牡鹿を撃った。血を抜き、皮を剥ぎ内臓を抜いて、時には冬、まだ温かいその肉体で暖を取った。
生き物の断末魔があたしの血肉となることを知ることが、その歳のあたしの中の実在の棚を満たしていった。

しかしデセールへの空想はいまも続いていた
匣にしまわれたボンボニエールの蓋を、あたしは匣を開けることなく、その中でなにかが金平糖のように結晶化してゆくのを待っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?