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ゆめ覚めたあとのゆめ


カフェーの昏いカウンター席の端っこでまゆこはつまらない男性に手紙を書いていた。ふと顔を上げて、テーブル席で本を読んでいる人が本から目を離さないまま左手がケーキのフォークを探して宙を彷徨っているのをぼんやりみつめた。
まゆこは手紙を書きやめて、便箋を半分に折って封筒へ入れた。
「ね、おねえさん」
声に振り向くと席をひとつあけて隣に座っていた学生服の青年が紙ナプキンを差し出していた。
「ひどく濡れてるよ」
まゆこが手紙を書くために適当に端へ追いやったサイダーの結露が水たまりをつくり、流れてまゆこの袖を濡らしていた。紙コースターを目で探すと、まゆこの足元に落ちていた。
まゆこが差し出された紙ナプキンを受け取らずにいると、学生服はちょっとはにかむ。
「置いておくね」
水たまりに置かれようとした紙ナプキンの束に水が染みるより早く、まゆこはそれを制した。
「いらないわ。結構ですので」
がたんと椅子を鳴らしてまゆこは立つと、まゆこは財布から切手を取り出して怪訝な顔で見上げている学生服に押し付けた。
「切手を濡らしてくださらない?」
学生服が思わず切手を受け取ると、まゆこの言葉を受けて困惑したまま、迷って学生服は自分のアイスコーヒーについた結露で切手を濡らした。
まゆこはそれを奪い去るように受け取ると、今便箋が収まった封筒に貼り付けて、封をすると足早にカフェーを出ていった。
帰り際、一番近いポストにまゆこは封筒を投げ入れた。
ポストに入れたらまゆこは肩の荷が下りたような気がした。そうしたらふつふつと怒りが湧いてきた。あの学生服はハンカチも持っていなかったのだろうか。紙ナプキンをあんなに差し出すなんて。紙ナプキンをあんなに差し出すなんて…。

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