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初恋と別の世界線

過去に戻って別の世界線を生きてみたいと思うことは誰しもあるだろう。その中でも後悔と言うにも足りないほどの小さな淡い思い出もある。


大人になりいわゆる恋バナをすることがほとんどなくなってしまった。

恥ずかしいことに、中高生の頃は、口を開けば恋バナというタイプだった。今とっては、その頃が懐かしい。


私の初恋は小学校2年生の頃だ。

相手は習い事の送迎バスが同じ同級生。もともと幼いときに遊ぶ公園が同じだったらしく、親同士も知り合いの関係。その後引っ越してしまったから住んでるところはとても近いわけではなかったけど、それでも徒歩で30分以内で行き来できたはずだ。

肌の色が白く背が高い美少年だった。習い事でしか顔を合わせる機会もなく、どちらかが曜日を変えたのか、記憶は定かではないけれど会わなくなっていき、淡い感情は自然消滅した。小学生の初恋など、そのようなものだ。


さて時は進み高校生になり、電車通学が始まってしばらくした頃、朝の駅で美少年を見つけた。私立高校のかっこいいブレザーを身に着けた背の高い彼が、初恋の彼だと確信するまでに1秒もかからなかった。

びっくりした。そういえば私は引っ越したとはいえ、お互いの家のほぼ中間くらいに駅はあるので、最寄りがかぶっても不思議はない。

相手は私に気づいているのだろうか。そもそも私を覚えているのだろうか。


相変わらずの美少年を週2回ほど見続ける生活が始まったのだけど、声をかける勇気が出ない。

今の私ならもしかすると思いきって声をかけられるかもれないが、その頃の私は不器用で、失敗を恐れ、行動できなかった。後悔もなくはない。話しかけていたら友達になれたかもしれない。


結局高校3年間、声をかけることはなく、小学生以来話すこともないまま大人になった。今はどこで何をしているか分からない。

美少年はそのまま素敵に歳を重ねているだろうか。

あのとき駅で声をかけていたら、何か変わっていただろうか。

また友達になれたりしていたかな。

人生を共に歩んだりしていたら楽しいかもしれない。

今の生活に満足していながらも、なんとなくそんな別の世界線を想像してみたくなるのだった。

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