【マイソングス】エル・アンヘロ "El Anhelo" 欲望 / イズラエル・フェルナンデス (2020)
前回、『パリらしい曲』というリクエストにお応えしたところ、大変好評頂きました。
みなさま、ありがとうございました😘
フランス男のオシャレなジプシー・ジャズをご紹介してみました。
そしてその時、ついでに『スペインらしい曲も』とのこと。お隣りさん同士、ジプシー続きで二人の男の違い、じゃない音楽の違い、分析してみましょう。
どの国でもポップスチャート、その他ローカル色の強いチャートというのが一応分かれている場合が多いですよね。
日本でもJ-POPと演歌、アメリカならシングル100とカントリーとか。
スペインも然り。スペインの場合本国のポップスに多くのラティーナチャートが加わるので更に入り組んでややこしくなりますが、不動のステータスで君臨するのが、やはりフラメンコ。Olé💃
今回ご紹介する、イズラエル・フェルナンデス、若干29歳のカンタオール。キャリアは11歳から。2018年にユニバーサルから華麗にデビューの、エリートジプシー。
フラメンコも歌(カンタ)、ギター(ギターラ)、踊り(バイラ)に細かく分けられます。
彼の経歴もちょっと今までと違います。一昔前は、大抵ビッグは南の生粋アンダルシア出身のジプシーである事、グラナダのアルバイシン辺り(ジプシー在率が高い地区)の路上でベラベラギターをかき鳴らしていた事などが、段々聞き手を納得させていくのですが、彼はマドリッド近くのトレド出身。
他にも若手カンタオールは居るのですが、イズラエル君、人気、実力共にイチオシです。
ではなぜか。
先ず、この風貌。波打つ様な真っ黒ウェーヴィロン毛にやや暑苦しげな顔ヒゲ。ちょっと流行遅れ(?)の古着屋から出てきたようなジプシーファッション。見るからにヒターノ(スペイン語でジプシーね)じゃな、お前。と言ったカンジ。
MV中ではモチロンの逆光、強風で有名なラ・マンチャの風で髪なびかせ(ボリウッドでも大扇風機で代用するテクニック)、極めつけは、男臭ムンムンに胸ガバーっ。そして自曲のタイトルは「欲望」。これでスペインの女どもは"アタシのパロマ(手拍子)で歌って〜😍"ってことになる(らしい)。
どうです?風貌的に比べると断然暑い...いや熱いスペイン。
前回のフレンチLoverが、白い肌のおぼっちゃまクンに見えてきませんか。
「もっとキスして」とか言ってないでシッカリしてちょーだいよ、って言いたくなりません?
ならない方はど〜ぞご自由に。
それから理由のもう一つ。彼のパフォーマンスは、限りなくカンタオールの神、カマロン・デ・ラ・イスラに近い!
もちろん彼自身神カマロンの崇拝者なんですが。
ここ、来る何年かに色んなことやったりして道外さず、腹筋をもう少し鍛えることを忘れずに、口も思い切り大きく開けて滑舌良く、ビブラートを習得して歌ってくだされば。(やや注文多し)
では、カマロン・デ・ラ・イスラって誰?
どの世界にも神は居るものです。
この人はスペイン南部、アンダルシアの一番西の端っこの港町、カディス出身の「神」カンタオール。
カンタオールトップ10ではいつでも栄光の第1位です。
風貌もヒターノ、歌い方もワイルド、獅子のよう。でも、それに反し名前の意味、カマロンとは"小エビちゃん"です。かわゆし🦐イスラは、"島"で、「島の小エビちゃん」。
ではその小エビちゃんの歌、聞いてみましょう。
曲は、「レイェンダ・デル・ティエンポ"時の伝説"」。
きっと、あれ?
と思われたのではないでしょうか。
あれだけ伝統を重んじるカンタオール界において、なんか軽〜い、と思いませんか?
このアルバムが出たのは1979年なのですが、正に「時の伝説」。
よく見ると、カマロン立ってマイク持って歌ってます。それまで首に青筋を立てながら声を張り上げていましたが、それはナシ。(でもないか)
後ろには、ドラムセット。今まで座っていた箱を叩いてリズムを取ることはありましたが、ドラムセットは初めて。
そしてエレクトリックのベースがグイグイ引っ張り、途中からはエレクトリックピアノも登場。
フュージョンだね! 新しーね! と言うことでつけた名前が 新しい台風の目、"ヌエヴォ・フラメンコ"。
そんなことからスペイン国民誰でも全一致でカマロンを、「最も影響のあったフラメンコ歌手」として崇めております。この曲が入ったアルバムも「死ぬ前に聴く1000枚のアルバム」の一枚としてご推薦です。
詩の方はスペイン、グラナダ出身の偉大な詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカ。彼の劇などは日本語訳もありますね。(by三島由紀夫)
彼は1992年に41歳、肺がんで亡くなりましたが、芸術功労賞金賞🏅受賞しております。
そして必ずカンタオールと一緒にいるのが伴奏のギタリスタ。イズマエル君のギターラはディエゴ・デル・モラオという方で、MVにも一緒に映っていますね。この方も実力派で注目株。
では神、カマロンの相棒とは?
やっぱり神でなくっちゃ。
神ギタリスタは、パコ・デ・ルシアです。
ギタリスタ、トップ10中、別格の第1位。
彼は、ジブラルタル対岸の町、アルヘシラスの出身。ここからモロッコ行きの船も出ておりますので、パコ像を拝みがてら訪ねるのも悪くありません。
曲は「エントレ・ドス・アグアス"ふたつの波間に"」です。
のっけからエレキ・ベース。そこに被る超絶技のボンゴ。
マイアミ・サウンド・マシーンも真っ青。コンガと同じくキューバの楽器ですが、ボンゴは小さい方がマッチョ、大きい方はエンブラと言います。
フラメンコギターは、三味線の太棹、細棹の違いの如く、音が全体的に前へ出るよう、ボディは薄く、ネックも細いのがよろしい。またもや女性と同じ(が理想)。
ビブラートが出るよう時々大きく揺らしてます。
顔はいいから手元が見たい。でも時々イイ顔してます。モミアゲも'70sっぽくセクシーで、こんなにベラベラしてくれるんなら髪の毛なんかなくてもイイー。って言っちゃいそうです。
そして大盛り上がりになるラスト!! あの指動きー!ボンゴも荒れ狂いー! ...いっちゃいましたね。何と5分の短いことか。
彼もまた"ヌエヴォ"な神なのです。
神カマロン + 神パコ = 史上最強コンビ
⇒フラメンコ伝説
という図式でしょうか。
これであなたもいつの日か、アンダルシアのバルでタパスをつまみながら地元のオヤジ連中と談笑することになっても、コワイものはありません!
美味いリオハワインの一杯くらいはタダ呑みできること間違いなし。
それでは、マイソングスを聴きながら🍷
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