見出し画像

主観楽曲分析: “SWEET” Intro/Outro が紡ぐ物語

7月1日から駆け抜けた、とぅばちゃんとイルモアの夏。まだまだ暑い日が続きますが7月は本当に素早く吹き抜けていく夏の風が吹いていたように感じます。

そんな7月5日に待望のALBUM “SWEET” が発売されましたね。まさに今までの彼らの物語、そしてこれからの物語への進む道しるべ。本国ALBUMと似ていないようで似ている、実は繋がっている派生作品のように感じました。
何故そう感じたのか。私の中で非常に重要なポイントとして取り上げる部分があるとしたらそれは完全にIntro/Outroだと思っています。

Intro/Outroがある理由として大まかに挙げるとするならば
・日本ALBUMのConceptを表現するため
・本国ALBUMとの調和

があるかと思います。今回の楽曲分析ではこの2点を軸として分析を進め、個人的ではありますが見解と解釈について述べていきたいと思っています。





Conceptを表現

1点目。これは恐らく皆さんも感じていることだとは思いますが、本当にその通りなんだと思います。
今回のALBUMは本国ALBUMの“The Chaos Chapter” ~ “The Name Chapter” の世界観に入り込めるよう位置づけられているのだと。前作1st ALBUM “STILL DREAMING”も同様にIntro/Outroがありましたが、このような楽曲があることで世界観へのメッセージ性を強く表現しているんだと思います。

個人的にはIntroはオペラやミュージカルにおいての Overture(序曲)だと思っています。Overtureとは何…?と思われる方もいらっしゃると思いますので私の大好きな作品WEST SIDE STORY(ここでは略称であるWSSと表記します)で紹介させて頂きますね。

敬愛するレナード・バーンスタインが作曲を手掛けている名作WSS。
このOverture自体はバーンスタイン本人が編曲したわけではないのですが…(ここら辺語りだしたらキリがないので割愛しますね)
WSSでのOvertureでは
Tonight - Quintet (0:00~1:30) ~ Maria (1:30~3:14) ~ Mambo (3:14~)
と約3曲をメドレーにして編曲されています。WSSの楽曲はどれも名曲揃いではありますが、この楽曲が1幕の始まる前に演奏されることで現実世界から物語の世界へ誘う役割を担ってくれています。

SWEETでのIntro:FLOATINGはWSSのように作中の楽曲を使用している訳ではなく、KeyboardとSynthesizer (シンセサイザー:電子鍵盤楽器)で織りなす新たな楽曲でした。

シンプルかつシンセの多様性を生かし、基盤となるメロデイー&コード進行の強弱で楽曲は進んでいく。そこに裏メロや細かなリズムを取り入れることによって、経験する出来事(ALBUMの楽曲たち)が球状の水のような形状で、自分(世界観での主人公)と同じように浮遊している…ような感覚になりました。それぞれの水(楽曲)に触れることで感情が感化されていき、思い悩み、誘惑に捕らわれていく。楽曲を順番通りに聴いていくことで知っていく自身の感情…それを示唆しているように感じました。別の世界へ誘おうとする蝶(妖精)(悪魔)の片鱗もあるというか…




本国ALBUMとの調和

次に2点目。本国ALBUMとの関係性について分析してみようと思います。
実は今回の“SWEET”で1番衝撃を受けた楽曲がOutro:FALLINGだったんです。

こちらもKeyboardとシンセのみでほぼ構成されている楽曲です。Introと同様に静かな音色から始まりますが、聴いた瞬間に鳥肌が立ったんです。
“Nap of a star と Free Falling のハイブリット版”か⁈、と。そして
“リプライズ”なのでは…!とも思ったんです。

まず初めに“Nap of a starとFree Fallingのハイブリット版”と感じた理由。
皆さんも気づいていらっしゃるかと思いますが0:03から聴こえるguitarサウンドのような部分の音の動きがNap of a starと一緒。

少し早さは違うものの同じ音で構成されています。0:48からはコーラスの声の代わりとして音の動きを変化させて鳴っていたり1:20辺りからは音符の数が増えて進化版のように聴こえ1:50で最初へと戻ります。
また0:48から鳴り響くシンセの音色がFree Falling(1:00頃)を思わせる入り方。

シンセの効果音(鋭い音)がFree Fallingで聴いたことのある動きのように感じました。これがハイブリット版だと感じた理由です。

そして“リプライズ”と明記しました。リプライズとは音楽用語で「反復」を意味する言葉なのですが、ミュージカルでは印象的なメロデイーを他の場面でも使用する時に使われている言葉です。
どういう風に使われているの?と思う方もいらっしゃるかと思いますので、私がこの曲を聴いて思い出したLes Misérables(レミゼラブル…ここではレミゼと表記します)の楽曲たちを紹介させて頂きます。

先にレミゼの概要を少し。レミゼは台詞全てを歌で紡いでいくミュージカル。楽曲数は沢山あるのですが、実はほとんどリプライズで構成されています。これが何とも面白いんです。様々な登場人物がそれぞれの心情を音楽に乗せて歌う中で、伝えたいテーマに合わせて使用する楽曲があるように感じています。分かりやすい楽曲を1つ挙げるとしたら

エポニーヌが歌い上げる“On My Own”という楽曲です。この楽曲を簡単に表現するなら「切ない片思い」を歌っています。冒頭(0:05)からのメロデイーはこの楽曲中でも何度も出ているのですが、次の動画の

(10th記念コンサートなので演者さんたちがオケ前で歌唱しているものです)
・34:07~36:56
ファンティーヌの病床シーン、遠くへ預けてしまった最愛の娘(コゼット)への思いを歌う部分
・2:13:20~2:15:28
バルジャンの最期の告白(自分は本当の父親ではない)シーン、ファンティーヌとエポニーヌが天国へ誘う部分
どのシーンでも誰かに対する“愛”に関わる部分で使用されています。

このような手法を“リプライズ”と呼んでいます。それぞれの人物が抱える思いを乗せていたり、楽曲を通して伝えたい作品のテーマとは何かを観客側が感じ取れるようになっていると思っています。

その“リプライズ”という表現方法を踏まえたうえで私がOutro:FALLINGで感じた“Nap of a starとFree Fallingのハイブリット版”という観点から考えると、楽曲の中の主人公の願い(誘惑された心地よい気持ち)と現実と向き合い進んで行こうとする覚悟のようなテーマが。
つまり本国ALBUMである“The Name Chapter TEMPTATION”の楽曲Farewell NEVERLANDと繋がっているのではないのか?と。
完全なる個人的な見解ではありますが、こうして日本ALBUMが本国ALBUMと調和していると思った瞬間、日本でのALBUMに意味合いを持たせている事務所に震えが止まらなくなりました。



まとめ

個人的ではありますが分析すると、日本でのALBUMを制作する上で彼らの魅力の1つである“世界観”や楽曲構成の“テーマ”を伝えるためには何が必要なのか。それを考えた上でのIntro/Outroだったのだと納得しています。腑に落ちたと言いますか。

Introは世界観を示唆する導入としての物語。
Outroは経験(楽曲)を経て悩みながらも進んで行こうとする主人公の意思を感じさせる物語。
そして「goodbye」に込められた意図とは…

日本のALBUMを別枠と捉えるのではなく本国ALBUMと調和させ、次作への予告のようにも感じ取れる短いけれど内容の濃い物語がそこにはありました。歌唱部分がない分、より聴いている側の解釈や捉え方で考察や謎解きが出来ている。音楽に正解はないからこそ、楽しめているように感じています。

まぁ…事務所がどこまで意図して制作しているかは分かりませんし、完全なる想像の範囲でしかありませんけれども…(笑)

SWEETのおかげで、より本国ALBUMでのカムバックが楽しみになってきています。果たしてどんな物語(楽曲)を紡いでくれるのか…期待しかありませんね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?