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マッチングアプリの社会学?

こんばんは。
昨年末から現在にかけて、マッチングアプリを通して3人の人と出会った。恋愛的な方面ではてんでダメだったが、顔も名前もよく知らない人との出会いは私にとってもはや異文化交流であり、日本の島国精神や昨今のグローバリズムについて考えるきっかけになったので、その話を記録しておきたいと思う(長いよ)。

1人目:Tさん 理系大学院生、カナダ系中国人?

最初に出会ったのは、前回のメルマガでも少し触れたTさんである。実は彼は日本人ではなく、日本生まれ日本育ち、カナダ国籍の中国人だった。海外の番組を見ていると、「○○系△△人」という表現はよく出てくるが、思えば今まで私の身の回りで「日本人」以外の呼称を持つ人はほぼいなかったような気がする。なので、Tさんが何系何人なのか、ずっと日本に住んでいるから中国系日本人なのか?国籍はカナダだから日系カナダ人なのか?それすらもよく分かっていない自分にちょっとガックリした(今もイマイチ分かっていない、多分中国系カナダ人?)

Tさんとは3回目のデートで浅草に行ったのだが、その日は外国人観光客で溢れていた。普段だったら「外国人多いね〜」と何の気なしに言うところを、ある意味外国人である彼の前で何と言えばいいか分からず、結局「外国からの観光客が多いね」と言った覚えがある。普段人と会話をする際、必ず自分も相手も同じ国・同じ民族であることを前提にしており、選ぶ言葉もそれを前提にしているから成り立っているのか…と気付かされる経験だった。

なお、現在Tさんからは未読スルーされています。

2人目:Yさん 国家公務員、かなり日本人

2人目に会ったのは、2歳年上のYさん。彼は愛知県に生まれ、金沢の大学に行き、社会人3年目まで三重県勤務、今年の7月から東京に転勤になったらしい。小学校から高校までは野球部(だけど全然野球部に見えない)、大学一年生で友達とビーチテニス部を作ろうとしたが、ラケットを買う前に自然消滅し、その後は焼肉屋のバイトに打ち込んだという。会った日はその後にバイト時代の先輩と飲みに滋賀まで行くと言っていた。これだけいろいろ話し、もちろん私とは全然違う人生を送ってきているものの、日本出身の日本国籍を持つ日本人であるという揺るぎない共通点があり、何を話されても大きな驚きや戸惑いがなく、安心安全の良い人、と言う印象だった。アプリで会った初対面の人で、みんなさまざまに性格や趣味の違いを持っていると言えども、多くの人は日本人である点で、大きな共通点があるんじゃないか、と思った。

なお、現在Yさんにも未読スルーされています。

3人目:Rさん 外資系IT勤務、アメリカ寄りの日本人

3人目に会ったのは、外資系企業に勤めるRさん。あらかじめ予約の名前を伝えられていたので、店内に入り席に座っていると、奥からRさんらしき人が現れる。3人目とはいえ、初対面の何の接点も思い入れもない人と何て挨拶しよ〜💦と思っていると、Rさんから「よろしくお願いします」と右手を差し出される。生まれて初めて、出会い頭に人と握手した。

Rさんは完全に(こういう言い方は正しいのか?)日本人だが、昔から海外に関心があり、学生時代は2回ほどアメリカに行ったと言っていた。1日目にApple本社に行き、2日目もApple本社に行くApple信者。もちろんiPhoneは常に最新の最上級モデル、朝はバナナ1本とナッツ30g、昼はプロテインとオートミール50gを毎日食べ、週3回ジムに行っているらしい。おもしろ

と、まあ彼も私と同じく日本人ではあるが、文化はアメリカの空気をまとっており、私なんかは握手を差し出されただけで身構えてしまったりして、私はどれだけ普段同質的な空気の中で生きているんだ、と実感した経験だった。

なお、Rさんからはその後一度も連絡が来ていない。

LOVE IS BLIND 3

マッチングアプリを通して出会った3人の男性を通して、自分の普段の生活がどれだけ「日本人」のみで構成されていたのかを体感したのだが、さらにその意識に拍車をかけたのが、Netflixで現在配信中の「LOVE IS BLIND 3」だった。

この番組は、男女がお互いの姿を見れない環境で対話を重ねプロポーズをした上で、初めてお互いの外見を目の当たりにし、果たして無事結婚まで辿り着けるのでしょうか!?というものである。日本でも開催されていたが、3はアメリカ編。マジで多様な国からの参加者が集まり、心の通じあうパートナーを見つけ出していく。

※ここからネタバレあり

男女ともに12人ほど参加し、カップル成立は5組のみ。中でも印象的だったのが、レイブンとSKのペアだった。レイブンは黒人と白人のハーフで、自立し自由な感性を持つ根っからのアメリカ人女性。片やパートナーのSKはナイジェリア人で、「妻が一番するべきは家にシチューを切らさないこと」というくらい保守的な家庭観念を持つ部族の出身者。付き合うだけならまだしも、婚姻関係を結ぶにあたり、お互いの文化を知り合うところから始まり、譲れる/譲れない部分のすり合わせを行い、生きてきた価値観の違いを乗り越え・・という途方もない苦労の上でようやく「結婚」に辿り着くことができる。

現実的にはあり得ないが、マッチングアプリで出会った3人と結婚する場合を考えてみる。

Tさん:絶対大変。ご両親が日本人女性に対してどんな価値観を持っているのか分からない。本人がどの国の文化に最も親しみを持っているのか分からない。自分の両親が相手の出自に対して不安を持ちそう。とにかく大変そう。

Yさん:簡単そう。公務員だし、何の反対も受けずすんなり進みそう。

Rさん:結婚自体は簡単そうだが、共同生活をした時に文化の違いが出てきそう。相手の交友関係には外国人が多そうなので、英語が喋れない私が苦労しそう。

など。じゃあYさんでいっか、などと考えてしまえるのが、島国日本のかなり特殊な特徴であり、このガラパゴス社会を成り立たせる重要な要素だろう。海外ではTさんやYさんで想定されるシチュエーションは当たり前で、当然のようにその壁を乗り越えている。だから日本は遅れているんだよ、なんていう話では当然ない。

最後に:箱根駅伝

日本が世界に着いていけてなくてダメ、という話ではないと言いつつ、時代は変化しているのだから多少は変化しないと良くないんじゃないの、と思ったのが、先日の箱根駅伝である。

とは言っても私は1秒も見たことがないのだが、私の上司が大の箱根駅伝好きで、会社の新年会でお局とその上司が盛り上がっているのを横で聞いていた。

大学生が一生懸命タスキを繋ぎ、感動必至ものの箱根駅伝だが、ある特定の大学では、選手に外国人を投入しているらしい。やはり体格に差があるため、外国人選手の人数には上限が設けられているのだが、お局的には外国人がいるのはズルで、気に食わないという。「日本人だけでやらなくちゃ」と言っていた。これがアメリカで、「白人だけでやらなくちゃ」なんて言ったら、すぐさま暴動が起きそうなものだが、日本では「ほんとだよね」なんて言って許されてしまう。

争いたい訳ではないので許されても別にいいのだが、あ、日本、と思った経験でした。箱根駅伝に見るナショナリズム・・


話がいろんな方向に行ってしまったが、とにかく、

個人の孤立化が進み、ナチュラルな出会いの消失が叫ばれる中で、「マッチングアプリ」が、今までなかった人と文化の出会いを生み出す、重要な結節点となっているのでは?という気づきをシェアしたかった。(結局そこ?)

マッチングアプリは「属性」では明確にソートすることができても、そこをすり抜ける文化や背景はソートできないので、そこのみが不確定要素かつ最も重要な要素になってくる。本当はその意味とかをしっかり書ければ「マッチングアプリの社会学」で論文書けそうだけど、三連休明けの仕事終わりにそんな体力は残っていないので、またの機会に回したいと思います。たった1ヶ月もしない間に、海外旅行にでも行ってきたかのような満足感が得られて面白い体験でした。みなさんもぜひ。

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