MとLの谷間
服を選ぶ時に何を考えるだろうか?
デザイン、色味、ブランド、着心地、選択肢はいくつかあると思うが、俺が一番重要視しているのはサイズ感だ。
ファッションに興味を持つまでは親が買ってきてくれた服を着ていたが、当たり前のように普通の子供らしい服を買い与えられて育っていた。
エキセントリックな親でもないのでちゃんと体に合ったサイズ感の服を近所のダイエーで選んで買い与えてくれるのは当然の流れである。
90年代巷では腰パンやB系、古着、ストリート系など流行りのファッションが沢山あった。
当時は多感な時期である中高生だった俺は、あえてオーバーサイズの服や薄汚れて穴の空いたリーバイスを腰まで下げて身に付けていた。
今考えると全くもってHIPHOPも聴かないし、古着にも精通していた訳でもないが【流行ってるから】の理由で着ていたと思う。ファッションについて考えていたというよりか、流行りに乗っていたというのが正しそうだ。
でもその当時、【服はサイズに合ったものを着るのが当たり前】の固定概念を、【サイズを崩して着るのがカッコいい】という当たり前をぶっ壊された時の感覚は未だに覚えてたりする。
その頃はサイズ感ちょっと大き目でダラッと着るのが正義!なんてずっと考えていた。
しかし時は流れ、歳を重ねる毎に次第にジャストフィットなサイズ感へと変わっていった。
時には過度なフィット感を求め過ぎてピチピチになってしまうミスを犯しつつも、自分の体に合うサイズを見つけていった。
もう数十年ほど基本はMサイズでちょうど良い、という結論に至ってからは迷う事なくMを選択して生きてきた。
しかし最近とある異変に気付いてしまった。
俺が子供と遊ぶ動画をお上のスマホで閲覧している時に珍しく自分の服に目がいった。
「あれ?なんかシャツ小さくね!?」
そのシャツは長年愛用しているブランドのシャツで、それこそ数十枚と持っている服である。
今までサイズが小さいかも?と疑った事も無かったのでその現実に驚きを隠せない。
ここ最近の筋トレ成果で胸筋は多少発達したからかもしれない。
それからと言うもののずっと服のサイズ感が気になってしまい、夜な夜な服を引っ張り出してきては玄関の姿見でサイズ感を確認する事を繰り返していた。
これは第三者機関に見立ててもらうしないと、お上や友人に相談してみるも、
『うーん、どっちもアリかな‥』
と気のない返事。そりゃそうか、
『コイツ何でそんな事で悩んでんの?』
って感じだろう。
コリャもう自分で判断するしかないって訳か。
ひと月ほど悩んだ挙句導き出した答えは、
「俺のちょうど良いサイズ感はMとLの谷間」
という非常に中途半端な答えだった。
サイズの谷間に落っこちてしまったのだ。
長年愛用しているブランドはMだと小さすぎる、Lだと大きすぎるので思い切ってこれを機にほとんどを手放した。
着る服が無くなるというアクシデントはあったものの、断捨離になったのでスッキリしている。
さて今後はどちらのサイズにするか?の悩みは根本的に解決していないので、またしばらくMとLの谷間を彷徨う事になりそうだ。
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