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【展示】展示の位置付け

自身初の個展『Absolute Photographs』の搬入も本日無事に終わり、いよいよ明日からスタートします。

設置しながらの雑談の中で、展示の位置付けはどこにあるのだろうという話しがでてきました。


当然ながら、展示とは第三者に作品を観てもらうために行うものであり、「発表」の意はもちろんあります。それとは別に、今回の展示が私にとってどうゆう位置付けにあるのだろうか、と。

今回展示する作品は、修士論文をベースに記した自書『絶対写真論』に掲載したものからピックアップして提示しています。

修士論文の実践編のひとつの場として展示を行う意も当然ながらあります。ただ、それだけではなく、今回の展示をどのように位置付け、そして今後どのように展開していくのか。

展示は決してひとつのゴール(到達点)ではなく、次へのステップであるべきだと私は思っています。そのため、単なる自己満足のためだけに展示をしようとは思っていません。故に、これまでレンタルギャラリーでの個展は行ってこなかったのです。

今回の展示は「写真とはなにか」に対する私なりの答えです。それは、写真とはカメラによって撮影するだけのものではなく、アルゴリズムによって各種デバイスが認識可能な画像データさえ生成できさえすれば、「それが写真となる」ことを提示しています。

ただし、これらは作品全体を総括しての話しであって、個々の作品についてはそれぞれストーリーを持ち合わせています(今回提示するのは4シリーズ)。


制作のモチベーションは日常生活におけるズレや思い込み、違和感などです。この漠然とした非言語的な状態をどうすれば「写真」として提示できるのかと考えたときに得た解法のひとつが「アルゴリズム」であったのです。

そのため、「写真となる」ためにはアルゴリズムが必要であったとしても、テーマを提示するためにはアルゴリズムである必要は当然ながらありません。極論、写真である必要すらないとさえ思っています。しかしながら、それでもなお「写真」に固執しているのは、写真の可能性を追求する好奇心が勝っているからだと、今は思っています。

今回の展示を端的に表すのであれば「写真」と「アルゴリズム」になるかと思いますが、あくまで作品制作の根底には提示したいテーマが存在します。

そのため、もし次回展示することになったとき、表面的には今回同様にアルゴリズムによって制作された作品であるかもしれません。しかし、そこだけフューチャーされてしまうのはいささか不本意でもあります。


たとえば今回展示している《Velocity = Distance / Time.》。

本作は宇宙に周回する人工衛星に搭載されたカメラを用いて、シャッタースピード1秒で撮影したとしたとき、どのように「みえる」のかをイメージした作品です。

これは、地球の自転とは赤道直下においておおよそ460m/secの速度で反時計回りに回転しています。この「地球の自転」という現象は誰しもが理解していたとしても、われわれは自転を体験することはできません。

こうした当たり前に起こっている現象や事象について鑑賞者が考えるきっかけを提供するために、私は作品として物体化しています。その物体化するための手法のひとつに「アルゴリズム」が存在するのです。


だからこそ、展示は自己満足のためにするものではなく、作品との対話、そして自身との対話を行うための場の提供ではないでしょうか。すくなくとも、私はそういう思いでこれまでも、そしてこれからも展示を行っていきたいと考えてはいます。

今回の展示は否応なくアルゴリズムで括られてしまうでしょうが、ひとつひとつのシリーズは全くテーマが異なるものです。そのため、初個展であるにも関わらず4パターンの作品が提示されており、私はどこかひとりグループ展のような印象を受けた次第です。


明日(2022/9/23)から始まる『Absolute Photographs』展、どうぞよろしくお願いします。




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