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寶井久貴

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2021年7月の記事一覧

『あと一歩』

6月某日、晴れ。暑い日差しが降り注ぐ中、校長先生の声がマイクから響き渡る。話が長く単調なせいか欠伸をしたり頭が揺れている奴もいてそんな生徒には先生が近づいて注意していたり肩を揺らしていたり。確かに面白くはないし、いやに長い退屈な時間ではあるもののこれからの時間を思えばそれも気にならない……というのは言い過ぎでやっぱり長いものは長い。それでも注意されるなんて情けないことにならないように欠伸を噛み殺し

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寶井と神田くんメモ

川はさんで隣
小学校の学区が違う
親同士が仲良い生まれた時から一緒

寶井バスケ始めたのが小2
神田くん小3

寶井は小学校のバスケクラブで活動。小4から週1
(弟が生まれたりなんなりでバタバタしててクラブチームに入るタイミング逃した)
神田くん地元のクラブチーム

小学校高学年から身長負け始める

中学、学ラン、セーラー
おさなな3人同じ学校、近所の中学がスポーツに力を入れているところでバスケの

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『試合開始』

4月。次の大会でのスタメンが今日発表される。
一度呼ばれたあの日以外俺は名前を呼ばれたことがなかったし、高校では一度だって無かった。呼ばれたいと思うけれどほんの少しだけ怖い気がしたのも事実で。聞きたくないような聞きたいような気持ちを抱えつつ、顧問がこちらへ向かって来ているのを確認し主将から指示に返事をして整列した。

「大会第一試合のスターティングメンバーを発表する」

高校2年の春。4月某日。天

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『紙飛行機』

遠くとおく、全部飛ばして。

「進路って、困っちゃうよね。全然見えないよ」

ぽつり、落ちる声。それが2人きりだからこそ零れる本音だと俺は知っている。だってそれは自分も同じだから。問いには応えず机の上に軽く腰をかけたままふわりふわりと風で揺れるカーテンをなんとはなしに眺める。

声は聴こえるけれど決して近くはない距離でこうして話をするのは2度目だ。まだ手元にあるこの白い紙を提出していない生徒に対し

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