まめ丸

企画や自創作でかいたものを纏めるところ。

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  • あのね、

  • はちいよのしあわせごはん

    ふたりで今日もおいしいごはん。

  • 寶井久貴

  • とある王道学園の物語

    身内王道学園の話

  • はちいよ🐝

    しあわせごはんシリーズ以外の話。

最近の記事

『忘れないでと願う弱さ』

「ごめん」 ペンを落とした。いつも通り空き教室で必要なフェイク情報の書き出しをしていた時だった。窓から差し込む西日をカーテンで遮っているこの部屋は少し薄暗く、手が滑ってカツンと音を立てる。面倒だと思えば手を伸ばそうとする前に目の前の金髪が視界から消えまた顔を出した。手にペンが戻る。この時の俺はきっと、どうかしていた。黄昏時の虚しさが何処と無く漂う哀愁がそうさせたのか、弱い心がふと顔を出して勝手に言葉を吐く。 「あは、気にしなくていいのに」 ゆるりと瞳を細め"ごめん"なん

    • 『離別』

      「わたしは!幸せにしてほしいなんて頼んでないよ!!」 そう叫んで目の前にある手を反射的に弾いた。青紫の瞳が驚きと悲しみに満ちて行くのを見て失敗したと、思った。兄を拒んではいけなかったのに。わたしだけは、絶対駄目なのに。それでも謝罪の言葉も引き止める言葉も口に出すことは出来なくてただ嗚咽が漏れる。床に落ちる複数の雫が広がって行く。いつもならわたしが泣いていたらすぐに駆け寄って抱き締めて慰めてくれる声も体温もここには無く。「りりあ……ごめん」それだけを囁いて去っていった兄の手に

      • 『食堂イベント』

        鈍い音の後。ギャアともキャアともとれる周りの叫び声にびくりと肩が揺れ、ゆでたまごを剝いていた手をとめる。顔を上げてあたりを見まわすと我らがせーとかいちょーが何やらよろめいていた。え、おなか壊した? 「…………気……た」 「…………だ!…………!!」 どうやら、良くは見えないけれどかいちょーと何だかもふっとした黒髪の子が何やら言い争いをしているらしい。未だに類を見ない騒がしさの食堂で周りから聞こえるのはかいちょーともふもふくんがチューしたらしいということと、もふもふくんが

        • 『願い』

          「……安直だな」 しんとした教室に響く自分の声を聞いて初めて口に出ていたことを知る。思わず撫でてしまった手を頭からそっと離し詰めていた息を吐きだした。 羽衣石 巡。 一目で分かった。あの頃の俺の弟のような存在。本来であればこんな所に居ていい人間ではない。いくら以前親しくしていたからと言って前と今では立場も関係も何もかも変わってしまったのだから。ひとつ、瞬きをして途中のままだったノートの続きを書く。淡々と作業をしながらそれでも考えるのは目の前の人物についてで本当に嫌になる。

        『忘れないでと願う弱さ』

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        記事

          タグSS

          羽衣石くんと田中と渚 「え!じゃああの時遊んでくれたのってかいけー様?」 「あは、みたいだねぇ〜」 通りがかりに聞いた宇宙人と会計の会話が耳にするりと入り込んで来た。ちらりと盗み見るように振り向けば楽しげな会話と笑顔が転がってきて舌打ちした。その音に気がついたのか、目敏く宇宙人が「なぎなぎ先輩〜!」などとふざけた呼び名を叫んで手を振ってくる。不快感がひどい。顔を戻し後ろの騒がしい声は無視、誰?とでも言いたげな会計の顔にも無性にイラついた。──覚えているのは俺だけか。

          『鍋』

          「さあ、白黒つけようか」 「.......望むところだ」 窓の外では雪が降り積もり辺りを白く染める中、こたつを挟み向かい合う。目の前に座る蜂谷はいつもニコニコと笑顔でいることが多いけれど、今回ばかりは真剣な表情だ。それも当たり前だろう、これは真剣勝負。目の前の相手に負ける訳にはいかないのだから。どちらともなく目を合わせ、息を吸い言葉を吐き出す。 「冬の鍋と言えば水炊きだよね伊代田くん!」 「冬はキムチ鍋が一番に決まってるよな蜂谷!」 むっ、と蜂谷が上目遣いでこちらを

          『ガトーショコラ』

          ぐるり、卵黄に砂糖を加えて混ぜる。ざりざりと砂糖をすり潰すように手を動かしマヨネーズ程度の硬さになるまで滑らかに。手早くけれど慎重に。 じゃりじゃり、ざりざり、ぐるりぐるり。 砂糖と溶かしたチョコレートの甘いにおいがする。 蜂谷は、美味しいと笑ってくれるだろうか。 7月も半ばを過ぎた頃。高校時代は夏休みとセットでこれでもかと積まれた課題があったものだが、今では約2ヶ月の長い夏休みと大した量もないレポートその他数種の課題があるのみで休みの日数と課題量が明らかに釣り合わない

          『ガトーショコラ』

          『はちみつレモンソーダ』

          『今年の暑い夏にはコレ!「蜂蜜」がオススメなんです──』 とある夏の暑い日。冷房の効いたシェアハウス共有のリビングで誰かがつけっぱなしにしていたテレビからはそんな言葉と軽快なBGMから始まった特集が流れていた。蜂蜜は実は熱中症対策には最適な食材でカロリーも砂糖に比べ低く、更に健康や美容にも云々と映像と共にその効果を解説するもので、実際どの程度それが正しく効果があるのかは分からないもののアナウンサーと料理研究家という人物が実演で「簡単!手作りはちみつレモンソーダ」なるものを作

          『はちみつレモンソーダ』

          『行方は、』 前編

          鳴り止まない心臓、 滲む汗、 近い、関係 この心の行方は、 ・ 『伊代田くん?』 『はち、や』 大学1年の今年の春。大学の敷地の広さが見慣れてきて、生活にもそれぞれ自分のペースが出来上がってきた頃。唐突に迎えた淡い初恋との再会は只々驚きにみちていて。甘く柔らかそうな昔とは違う蜂蜜色に染められた髪に、昔と変わらぬ髪と揃いの色の瞳を視界に映してからというもの自分の記憶がひどく曖昧で朧気で、正直蜂谷には申し訳ないとは思うけれどその後の会話など何を話したのかろくに思い出

          『行方は、』 前編

          とある王道学園簡易まとめ

          生徒会 明香 陽向(あすか ひなた) 2年S組 生徒会会計 チャラ男を装っているが半分は演技。みんなの理想の明香様であることにこだわっている。素の自分が好かれるはずがないという気持ちと本当は素の自分を好きになって欲しい気持ちとで揺れ動いているが結局嫌いな演技を手放すことが出来ない。愛されたがりの臆病者。元天才子役?母親に過度な期待を寄せられヒステリックに叫ばれたせいで女性が少し怖い。自分の親衛隊のチワワも実は女の子に似てるので苦手だった。(しかし後に心の拠り所になる)セフレ

          とある王道学園簡易まとめ

          『追伸』

          「嫻ー。」 自分とわかるように呼びかけながら東は扉を数回鳴らす。が、返事が無い。少し嫌な予感がしてもう一度声を掛けてから扉を開けた。 瞬間、目に飛び込んできたのは白い紙、紙、紙。そして、椅子に残る、灰。 嗚呼、アイツは。 「……馬鹿だなあ、」 思わず漏れたそんな言葉。でも、そうだろう。それ以外の言葉なんて見つからない。こんな……こんな死に様を見せられた側からしたらたまったものではないのだから。ふいに部屋に溢れた白を一つ、手に取る。また一つ、一つ、ひとつ。その手紙になり

          『手紙』

          「拝啓 初春の日差し麗らかな頃、ようやく寒さも緩んでまいりましたがいかがお過ごしでしょうか。」 僕はひとり、口に出して読んだ堅苦しい手紙に思案する。たった一言を書くためだけの前置きにするにはあまりに固すぎるだろうか。何だか無性に可笑しくなってくすりと笑い、僕は目の前の机から部屋へと体をぐるり、動かして部屋の床へと視線を落とした。 そこには、大量の白。 くしゃくしゃに丸められた手紙だったものの残骸。しかしそのどれもが、大して文字など書かれてはいない事を僕は知っている。何故

          『恋』

          中学の頃、私は恋をしていた。 初恋だった。 憧れが恋に変わるとか、ずっと一緒にいた人に気がついたらとか、そんなキラキラしたものじゃなかったけれど。敢えて言うなら、その人に戦友のような仲間意識やライバル意識を持っていたのだろう。気持ちの大半がそうであるならこれは恋とは言わないかも知れない。でも確かにあったんだ。それ以外のほんの少しが。 だから、私はこれを 恋と呼ぶ。 ・ 「何よ、なによ!もう知らない!!アンタなんて知らないわよ!!!!」 「諦めるの!?やめてよ、アンタ

          『試合開始』

          4月。次の大会でのスタメンが今日発表される。 一度呼ばれたあの日以外俺は名前を呼ばれたことがなかったし、高校では一度だって無かった。呼ばれたいと思うけれどほんの少しだけ怖い気がしたのも事実で。聞きたくないような聞きたいような気持ちを抱えつつ、顧問がこちらへ向かって来ているのを確認し主将から指示に返事をして整列した。 「大会第一試合のスターティングメンバーを発表する」 高校2年の春。4月某日。天気、晴れ。 「────、────、寶井久貴。以上だ」 名前を、呼ばれた。 反

          『試合開始』

          寶井と神田くんメモ

          川はさんで隣 小学校の学区が違う 親同士が仲良い生まれた時から一緒 寶井バスケ始めたのが小2 神田くん小3 寶井は小学校のバスケクラブで活動。小4から週1 (弟が生まれたりなんなりでバタバタしててクラブチームに入るタイミング逃した) 神田くん地元のクラブチーム 小学校高学年から身長負け始める 中学、学ラン、セーラー おさなな3人同じ学校、近所の中学がスポーツに力を入れているところでバスケの強豪校だった。 中1バスケ楽しー!!身長以外何も憂うことがない楽しい期 中2 神

          寶井と神田くんメモ

          『あと一歩』

          6月某日、晴れ。暑い日差しが降り注ぐ中、校長先生の声がマイクから響き渡る。話が長く単調なせいか欠伸をしたり頭が揺れている奴もいてそんな生徒には先生が近づいて注意していたり肩を揺らしていたり。確かに面白くはないし、いやに長い退屈な時間ではあるもののこれからの時間を思えばそれも気にならない……というのは言い過ぎでやっぱり長いものは長い。それでも注意されるなんて情けないことにならないように欠伸を噛み殺し少しダレていた姿勢を正す。視界には赤と青と白の衣装に身を包んだ生徒達に目に染みる

          『あと一歩』