見出し画像

密かに成長中のNetflixゲーム:グラセフがTOPで1900万DL

こんにちは、AdMelの高橋桃花です。
最近Netflixで「Game Dev Tycoon」というゲーム開発会社の経営をするシミュレーションゲームをプレイしたのですが、まるで実際のスタートアップ経営のようで、リアルなビジネスの厳しさを感じさせる内容でした。起業家やゲーム開発者の方々などへおすすめなので、最後に紹介します。


2021年、Netflixがメンバー向けにモバイルゲームを提供開始

そもそもNetflixゲームってどういうこと?と思われるかもしれません。モバイル環境でしかゲームの表示自体がされないため、その存在を知らなかったという人も多いでしょう。実際にNetflixゲームについて日本人を対象に行われたアンケートでも、13%の人しかNetflixゲームの存在を認知していないそうです。
Netflixの有料会員であれば広告やアプリ内課金なしでゲームをプレイでき、現在約90本のゲームタイトルがリリースされています。お手元のスマホからNetflixを開いてみてください。実はワンスクロール目に表示されています…!プレイするには、それぞれの端末へアプリのダウンロードが必要です。

Netflixは、ストリーミングサービスの巨頭として知られる一方で、最近ではモバイルゲームにも力を入れています。2021年にゲーム部門を設立し、既存のサブスクリプションモデルにゲームを追加する形で、ユーザーに新たな価値を提供しようとしています。このnoteでは、Netflixのモバイルゲーム戦略とその現状について、観測した事例を交えてゆるくお伝えしていきます。

なぜNetflixがゲームに進出したのか

まず、なぜNetflixがゲームに手を出したのか。シンプルに言えば、ユーザーを飽きさせないためです。以下の目的があると推察しています。

  1. エンターテインメントの多様化:映画やドラマだけでなく、エンターテインメントの幅を広げることで、ユーザーの関心を維持し、競争力を高める

  2. サブスクリプション価値の向上:ゲームの追加することで、既存のサブスクリプションの価値を高め、ユーザーの離脱を防ぐ

  3. ユーザーデータの活用:ゲームを通じてユーザーの行動データを収集し、パーソナライズされた体験を提供することで、さらなるエンゲージメントを促進する

まだゲームの存在を知らしめられていないNetflixですが、サブスクリプション価値の向上という点においては一定の成果を残し始めています。

Netflixゲームダウンロード数推移

2023年 8,120 万回
2022年 2,870 万回
2021年 520万回 

Netflix Games gains traction with installs up 180% year-over-year in 2023, thanks to GTA and others

全体のダウンロード数推移。Netflixゲームの認知の低さや有料会員数(約2.7億人)を考えるとまだまだな数字ではありますが、急成長しているのが伺えます。

展開ゲーム事例と戦略

Netflixは、アクションアドベンチャー、パズル、ストーリーテリング、シミュレーション、クッキング、レースなどのゲームを提供しており、最終的にはメンバー全員が Netflix でお気に入りのゲームを見つけられるように、多様性と幅広さのあるポートフォリオを構築することに取り組んでいるとしています。

以下は、最近発表されたNetflixゲームの累計ダウンロード数ランキングです。(2024年5月時点)

mobilegamer.biz より

ライセンスゲームやIPコラボ

1位は大人気アクションアドベンチャーゲームのGTA(Grand Theft Auto)San Andreasで累計1920万ダウンロードされています。日本ではグラセフとしてお馴染みのゲームで、PS2 ゲームのリマスター版として公開されました。8位にもGTAのゲームがランクインしていますが、全部で3作品のGTAシリーズがリリースされており、シリーズ合算では2023 年のゲーム ダウンロード数の約 17%を占めていますグラセフがNetflixで無料でプレイできるぞ!ということで一部のファンを沸かせていました。同じくランキング入りしているFootball ManagerもApple Arcadeから奪い取る形でとってきた他社の人気ライセンスゲームで、このような、大型のライセンスゲーム獲得が、インストール数増加に大きく影響しています。

もうひとつNetflixゲームの大きな特徴として挙げられるのが、Netflixオリジナル作品に基づいたゲームです。Netflixの代表作の一つである「ストレンジャー・シングス」シリーズはゲームにおいても人気を誇っており、ファンがさらに作品の世界観を楽しめるように作られています。
個人的には、近々イカゲームもNetflixゲームの発表がアナウンスされており、まだトレーラーは公開されていないものの、他プレイヤーとの対戦もできるとのことで楽しみにしています。

Netflixは、他にもIPコラボレーションによるゲーム制作も積極的に行なっており、みんな大好きハローキティもNetflixゲームの題材になっています!(キティ様はどこでもお見かけする、本当にすごい…日本の宝🇯🇵)

ゲームスタジオの買収やインディーゲームのサポート

また、自社/外部スタジオでの開発だけでなく、ゲーム開発会社の買収や独立系ゲーム開発者とのコラボレーションなども進めています。2021年のNight School Studioの買収を皮切りに、Next GamesやBoss Fight Entertainmentなどのスタジオを次々と買収し、その制作体制を強固なものとしています。

インディーゲームの事例では、「Downwell」の開発者として知られるもっぴん氏がNetflix上で新作「Poinpy」をリリースしたことも話題になりました。これは日本人クリエイターとして初のNetflixゲーム提供の事例です。

小ネタですが、この「Downwell」は2022年にTBSで放送されていたドラマ「アトムの童」で主演の山崎賢人が演じる開発者が、学生時代にインディで大ヒットさせたゲームという設定で使用されていました。胸熱ですよね!

そして余談を付け加えると、2023年に日本ゲームメーカーSNK社の人気シリーズ「SAMURAI SPIRITS」もNetflixモバイル版がリリースされているのですが、わずか4ヶ月ほどで告知なしに提供が終了しており、どんな契約だったのか気になっています💭

まとめ

Netflixは多様なコンテンツライセンスと積極的なスタジオ買収・連携戦略などによって、他のプラットフォームでは見られない独自のゲーム体験を提供しています。

Netflixのゲーム戦略はテック企業の成功のモデルとなれるか?

テック企業のゲーム展開といえば、Googleのクラウドゲーミングサービス「Stadia」は2023年1月に中止、Amazonも無料ゲーム部門で大規模なリストラを行いましたし、ByteDanceもゲーム部門で約1,000人を解雇するなど、ミニゲームの追加という流れはやや下火に感じます。

そんな中ではありますが、昨年2023年末から同じく動画系サービスであるYoutubeも、Netflixの後を追うようにプレミアム会員向けにゲーム機能の提供を実験しています。
「Playables」というクラウドのミニゲーム機能をベータ提供しており、モバイルとWebでプレイ可能な環境を整えています。
なお2024年3月までの期間限定提供としていましたが、例えば人気ゲームのAngry Birdsは執筆時点(2024/05/15)でまだプレイできる状態でした。今後の動向もウォッチしたいと思います。

参考:有料会員数
Netflix:2億6960万人(2024年4月時点)
Youtube Premium:1億人(2024年1月時点・Youtube Music Premium合算)

過去多くのテック企業がゲーム領域への進出を諦めてきましたが、Netflixの強みは、そのコンテンツライセンスの多様性と強力さにあります。その豊富なコンテンツライセンスを活かして多様なゲームを提供し続けることで、これまでの挑戦を歴史を塗り替えられるのか、注目です。

非モバイル、クラウドゲームにも参入の意向

一番下が「Game Controller」画面

他に気になる動きとして、数ヶ月前からGame Controllerというアプリをリリースし、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、スペインといった地域限定でクラウドゲームのテストを開始しています。会員が携帯電話をゲームコントローラーとして使用し、スマートTVやFire TV、ChromecastなどのTVに接続されたデバイスでゲームをプレイできるようになりました。クラウドゲームというとMicrosoftのXbox Cloud Gaming、Nvidia GeForce Now、 PlayStation Plus 、Amazon Lunaなども思い浮かびますが、Netflixは会員向けに無償提供している点で他のクラウドゲームサービスとは異なります。(Game Controllerアプリ単体のインストールは日本でも可能です。)

おまけ:おすすめNetflixゲーム「ゲーム・デベロッパー・タイクーン」

お待たせしました。おまけに最近私がNetflixでプレイした『Game Dev Tycoon』を紹介します。このゲームは、1980年代にゲーム開発会社を立ち上げてゲーム業界の歴史を再現するシミュレーションゲームで、1人のガレージから始まり、ゲームのファンを作り会社を大きくしていくものです。受託で食い繋ぐか新しいテクノロジーやトレンドへの研究に投資するか、IPとコラボするリスクを取るかなど、いろんな選択を迫られます。ゆっくり考えているとどんどん時間が進んでしまう、リアリティあふれるゲームです。

私は前職ベンチャーキャピタルで働き、現在はモバイルゲーム内で新しい広告フォーマットを作る事業で起業・奮闘中しています。「Game Dev Tycoon」では、過去の経験や今の自分と重なって感じるアクションもあり、苦し楽しい気持ちになります。決断力を試されるゲームです。

最後に、私がGame Dev Tycoonのプレイ中苦しかったシーンの一部を貼って締めたいと思います。

はじめて開発したゲームへのレビュー、もっと酷いものもありました
会社の生死を分けたライセンスゲーム、、
受注を選んだ結果、力尽きて違約金を請求される☠️
色々あったんよ…

いかがでしたか?Netflix有料会員なら誰でもプレイできるので、課金している方はぜひ遊んでみてください。
Netflixの狙い通り、何かひとつはお気に入りのゲームが見つかるかもしれません。

Netflixゲーム遊んでみたよ、Game Dev Tycoonプレイしたよなどの感想や、AdMelの事業気になるよなど、いつでもDMお待ちしています✉️ 

X:https://twitter.com/momo19nam 
Facebook:https://www.facebook.com/momokatakahashinam      


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?