たかが知れている
『たかが知れている。』
君はそう言った。君の腹に指先を乗せなぞる私に君はタバコを吸って上を向きながらそう言った。
以前より君は頬が欠けていて。
以前より君の腕は骨が顔をだしている。
テーブルはやけに綺麗なのに、キッチンのゴミ袋は瓶や缶がこれでもかというくらい詰まっている。
君の目には何も映っていない。
人気者でムスクの香がする君からは不穏な空気が流れている。
そんな君の指に私は頬をさすった。
少しでも長く居られるように。
少しでも記憶に残れるように。
クレマチスの花言葉を知っているかい?
私も彼女のように君に蔓を伸ばして君を離さないでいてもいいかい?
誰も信じられない君はそんな私の気持ちさえも『たかが知れている』というのかい?
そうかい。
きっと君にとって私は、穴を埋める綿にも満たないのだろう。
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