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一人カラオケ好きが一人で手持ち花火をやったら、楽しくもつまらなくもなかった

初めて線香花火をやったのは、田舎の祖父母の家だったと思う。親だったか親戚だったか、とにかく大人が私に言った。

「他の花火とは違って、落とさないように、じっと動かないで持つんだよ」

私は思った。

「じゃあ、他の人と話しながらやるのは変じゃない?」


昔、親が撮ってくれたみたいな、周りの白い写真が撮れた。左上はマック

今ならわかる。大人は、喋りながらでも、玉を落とさないことにある程度集中できるのだ。それに、線香花火の目的は玉を落とさないことではなく、楽しむこと。玉を落とさないことは手段に過ぎない。

しかし、子供の私(同時に2つのことなんてできない&集中しているときに話しかけられるのが大嫌い)にとって、線香花火は矛盾した存在に見えたのだ。あのとき、私は一人でやりたかった。

今、私は一人カラオケを趣味にしている。自分の好きな曲だけを入れ、思う存分格好をつけて歌う。騒ぎたいなら友達と行くほうが楽しいだろう。ただ、歌うこと自体を楽しむのなら、一人のほうが断然いい。

一人だと、コンテンツそのものを楽しめるのだ。

花火だって、実は一人でも楽しめるのではないか。手持ち花火の美しさを、じっくり鑑賞したことがあるだろうか。

そう思って、やってみた。

ちなみに、計画を話した友達(撮影には同行していない)は、無になっていた。問題ない。いくぞ。

結論:つまらなくはない。ただ、おすすめするほどでもない。

My Summer

結論から言うと、特別楽しくもつまらなくもなかった。

通いなれたスーパーや駅への道を散歩したときと同じ。暇つぶしになる程度の楽しさはあるけれど、エキサイティングというほどではない。発見も少ない。

せっかくなので、複数人でやる花火との違いを書いてみようと思う。

しんみりする

火花を見つめていると、心が落ち着き、だんだんしんみりした気分になってくる。「わびさび」という言葉が浮かんでくる。もう少し季節が秋に近ければ、虫の声がよく似合っただろう。

普通の花火が派手すぎる

線香花火以外の手持ち花火は、一人には派手だ。「しんみりする」と書いたが、「もう少し落ち着いた火花ならもっとしんみりできるのになあ」とも思った。勢いよく飛び出す火花の勢いが、騒ぐことを前提とした遊びだと主張しているみたいだ。

公園の真ん中で静かに体育座りをする黒い帽子の人間と、はじける花火の落差が大きすぎて、周りからはどう見えているんだろうと気になった。そのくせ、光が消えたときは、とても切ない。

消えかかった花火に少しだけ残った火薬から生まれる、ほんの小さな火花がちょうど良かった。地面に落ちる、つややかな朱色をしたまんまるの火の粉も。

一人でいるからそういうところを鑑賞できたのか、私が細かいところを見るのが好きな性格に育ったからなのかは、よくわからない。

線香花火に集中できる

これは思った通りだった。誰にも話しかけられないのだから当然だ。

火花の小ささも、一人にちょうどいい。線香花火自体にも、しんみりした雰囲気がある。ぴったりだ。

一人用花火として、線香花火だけをまとめて売ってほしい。いろいろな色に光るのがあるといい。それか、火薬を少しだけ練りこんだ蚊取り線香。縁側で火をつけて、ときどき火花が出るのを眺めながら夕涼みしたい。

花火の説明がじっくり読める

「ススキ花火」っていうんだ

何事もルールを把握してから動きたい私にとって、これはいいことだ。どんな花火があるか、何に注意したらいいのか、しっかり把握できる。

と、始める前は思っていたのだが、結局大きなメリットは感じなかった。

ただ、花火の裏の注意書きに「大人といっしょに遊びましょう。」とあるのを見つけたときは、胸が痛くなった。

「君はもう自由だよ。一人で花火をしてもいいんだよ。」と言われた気がしたのだ。

花火を比較できる

似たような花火に、両方同時に火をつけた。赤い火から白い火花が出るものと、白い火から赤い火花が出るものだった。

「カードゲームに出てくる対になるドラゴンだ……!」と思い、少年のように胸を熱くしたが、冷静に考えると私はポケモンカードしかわからない。なんでそんなたとえが出てきたんだ。いるんだろうか、対になるドラゴン。遊戯王とかに。

ほぼ同じ見た目だが、よく見ると火花の大きさが違うペアもあった。その違いを生み出しているのは何なんだ。

遊び方は特に変わらない

カラオケの場合、一人か複数人かで、選曲や歌い方などが大きく変わる。それに比べて、花火は大して違いはなかった。

しんみりするかはしゃぐか、というテンションの違いは大きい。しかし、上に書いたように、花火の説明を読んだり花火を比較したりするのは、複数人でもできることだ。

カラオケを人数によって行動が変化する(が、盛り上がりたいという気持ちは同じ)遊びだとすれば、花火は行動が同じで(テンションによって)見方が変わる遊びだと言える。

ひさしぶりの花火で発見したこと

火がつく瞬間

一人だということとは関係なく、花火に関して発見したことを書いていく。

花火は電器屋で買うと安い

一人なので、大きな花火は必要ない。加えて、金欠だったので、少しでも安い花火が欲しい。

そう思っていくつかの店をうろうろしていたのだが、一番安かったのは、意外にもショッピングセンターの電器屋だった。小さい花火セットが300円台。電池を買いに入ったところだったので、相当驚いた。電気に関係がない。

私が入った電器屋には、子供向けのおもちゃコーナーがあり、電池を使うものをメインとしつつも季節ものは販売していたようだ。イルカの浮き輪も売っていた。

線香花火のパッケージが派手だ

平成ギャルの携帯っぽい

わびさびが0である。

買うときに気づき、同じ値段で別の花火を買おうとしたのだが、そちらもほぼ同じパッケージだった。全く同じ花火(Facebookのいいねマークに似た形のもの。時代を感じる)も入っていたので、同じ会社のものかもしれない。

私の知っている線香花火とは違ったらどうしよう……と心配したが、中身はきっちり普通の線香花火だった。安心する。

そういえば、子供の頃は「線香花火って地味だな」と感じていた。こういうパッケージのほうがわくわくしただろう。私も大人になった。

この線香花火に火をつけると、見たことがないくらい大きな玉ができた。しずくのようにふるふると揺れていて、溶鉱炉で溶かされた金属みたいだ。コマ送りのような火花を大きく散らし、ピークに達したとき突然落ちた。「早逝」という言葉が頭に浮かぶ。やっぱり、大人になった。

でも、後で考えると「急逝」だな。

使い捨てのバケツがある

初めて見た

バケツというより自立する袋。そのまま捨てられて便利だ。

凝固剤が入っていて、「水を入れると2分でゲル状になる」とのこと。スライムみたいにプルプルになるのかと思ったら、ぶよっ……と指がめり込んだ。弾力がない。

自分は線香花火を競技として捉えている

線香花火の端には薄い紙がついているが、そこを持つと全く安定しない。「もっと下の安定した場所を持つのはレギュレーション違反なのか……?」などと考えてしまった。

私は金魚すくいが好きで、全国大会があるのを知っている。「お椀を手で持ってはいけない」などの公式ルールも知っている。だから、線香花火にも、公式ルールがあるように思えたのだ。

今、袋を見たら、「薄紙のつけ根を持って」と書いてあった。気兼ねなく持てばよかった。

失敗したこと

今回、一本目の花火に火がつく瞬間を、確実に捉えたかった。だから、スマホのカメラで連写した。

スマホの容量がなくなった。

連写したもののうち、必要ない写真を消したが、なぜか容量は増えなかった。そういえば、この前友達に「スマホの容量が減ってきている」と話したとき、「16GBは少なすぎる」と言われた。最近のは128GBとかだったりするらしい。

この記事に写真が少ないのはそういうわけです。ごめんなさい。

花火の写真は3枚のみ(全部同じ花火の連写です)

さらに、花火を使い切る前に、ろうそくが使えなくなった。私が持って行ったのは、「ろうそく」というよりも「キャンドル」と呼びたくなるような、背の低くて平べったいもの。

3つ持って行ったのだが、どれも使いかけだったからか、すぐ消える。風でも消えるが、花火の近づけ方が悪くても消える。空気が遮断されるらしい。

消えたものに火のついた花火を近づけて点火しようとしたら、ろうが全て溶けて、芯が沈んでしまった。金属製の入れ物に入っていてろうが逃げないし、燃えると真ん中がへこむ形なので、ろうが溶けすぎると芯が水位の下に来てしまうのだ。

泥が混じって黒くなったのが2つある

そして、ライターの使いすぎで爪が欠けた。ネイルを剥がしたときに薄くなっていたのだ。

写真は撮れない、火は使えない、爪は欠ける、おまけに時間もかなり遅い。仕方なく、残った花火を持って、家に帰ることにした。

「もっとやりたかった」というより、「まだ楽しいところまでたどり着いていない」という気分だった。記事のためにいろいろメモしてばかりで、集中できなかったし。

小さい頃も、なぜか似たような気分だった気がする。花火が足りなかったからか、会話と花火に同時に集中できなかったからかは覚えていない。

月の写真ならある。この日の月はなぜかオレンジがかっていた

結論

  • 一人で花火をすると、複数人とは違う感情になる

  • が、めちゃくちゃ楽しいわけではない

  • スマホの容量は大事

  • 使いかけのキャンドルは花火に向かない

終わった後、どっと疲れが出た。体育座りをしていたのに、太ももの裏が痛む。汗もすごい。自分で思う以上に、周りの目を気にしてしまっていたのかもしれない。あるいは、初めての花火の準備が大変だったか。

ドチャアァァァ

余った花火、どうしようかな……


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