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『テクノロジーの〈解釈学〉』草稿第3版について

概要

『テクノロジーの〈解釈学〉』は、人工知能など先端的で影響力の大きなテクノロジーをめぐる問題について、ここ数年間で私が考えてきたことをまとめた論考です。今のところ、特に出版する予定は決まっておらず、より多くの方に読んでいただけるようPDF版を無償で公開中です。

最新版である草稿第3版は大まかに次のような構成になっています。

  1. 人工知能をめぐる議論:現在のテクノロジーの中でも影響力の大きなものとして人工知能に着目し、画像やテキストなど生成系と呼ばれる人工知能を中心に諸問題を概観した上で、可能性と課題について議論する。

  2. 技術の哲学:技術論に取り組んだ哲学者たちの議論を概観し、代表的な立場を紹介した上で、一元的で普遍的なものに思えるテクノロジーを多様なものへと開くためのアイデアとしてテクノロジーの〈解釈学〉を提案する。

  3. Maker Faire:テクノロジーの〈解釈学〉が既に実践されている現場として、メイカームーブメントの祭典「Maker Faire」に着目し、テクノロジーを自在に解釈し多彩な〈作品〉として表現している人々の活動を紹介する。

  4. ネオ・サイバネティクス:現在における具体的なテクノロジーの分析・記述に留まらず、そのあり方を探求するための視座として、サイバネティクスに胚胎していたもう1つの可能性に着目するネオ・サイバネティクス(特に基礎情報学)を紹介する。

  5. Bergson の時間論:哲学者アンリ・ベルクソンによる、過去・現在・未来という時制ではなく相(アスペクト)に着目した時間論と、そのマルチ時間スケール解釈を紹介する。その上で、伝説化されているメディアアート作品《Light on the Net》をケーススタディーとして分析・記述を試みる。

  6. テクノロジーの〈解釈学〉へ:第2章、第4章、第5章で提示した、ポスト現象学、基礎情報学、ベルクソンによる時間論およびそのマルチ時間スケール解釈を道具立てとして総合し、ケーススタディーによりその有効性を確認する。

これまでの議論にはほとんどない点としては、その経験に基づいて私たちが手触り感を持って議論できる〈作品〉に着目していることと、全体の基盤としてベルクソンを参照していることが挙げられるでしょう。

読書会

まだ草稿段階ではあるものの、できる限り明晰に書いたつもりではあり、恐らく第4章までは比較的すんなり読めるのではないかと思います。しかしながら、既に読んでいただけた方より第5章は難解だという感想をいただくこともしばしばです。著者としてもこの点は自覚しており、第5章を中心にもう少し読みやすいものへと書き換えていきたいと考えております。そうしたこともあり、1つの試みとして読書会を開催してみることにしました。

全ての章を読破している必要はありませんが、開催までにいずれか1章を読み、感想や質問を共有していただけることが参加条件となります。感想や質問というとハードルが高く感じられるかもしれませんが、「読んでみ(ようとし)たけどここで挫折しました」みたいなコメントでも構いません。

詳細をリンク先のフォームにてご確認の上、ご興味とご都合の合う方はぜひお気軽にご参加ください。


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