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7番セカンドはやらねばならぬことが多い

10/28にテレビ東京の「あちこちオードリー」という番組のオンラインライブがあった。オンライン限定ということで、地上波では言えないようなぶっちゃけトークが繰り広げられた。いわゆる番組でいうところの“不用意”発言はSNSへの投稿は禁止されているので、核心に触れずに少し書かせていただきたい。

テレビで最もラジオに近い番組

あちこちオードリーを見たことがない方に簡単に説明をしよう。まず、こちらの記事をご覧頂きたい。

「相方がネタを書かないの、どう思ってる?」オードリーのトークが今、抜群におもしろい理由 #あちこちオードリー https://bunshun.jp/articles/-/41137

通称「テレビで最もラジオに近い番組」と呼ばれるテレビ番組だ。ただのトーク番組ではあるが、他の番組と大きく違うのは、トークの内容があまりにもぶっちゃけているということだ。そのため、ゲスト、オードリー(主に若林)の発言が度々、ネットニュースになる。一応、気をつけているのだが、止められないのだそう。セット内には、「不用意な発言禁止」「ライターがすげぇ観てる」「ラジオじゃない」との言葉が貼ってあるくらいだ。その不用意な発言がとても面白いのだ。

あちこちオードリーの魅力

上の記事に魅力はまとまっているし、それに同意する。さらに付け加えるとするなら、この番組は、オードリーの若林がやるからこそ、深みが出ると思う。それは、佐久間宣行のオールナイトニッポン0で語られていたことに凝縮されている。バカリズムをゲストに呼んだこの回では、オードリーに言及していた。

佐久間「若林は悩んでいることも話した上で、そういう変わっていくこともいとわないのをドキュメント的に話す。」
バカリズム「オードリーのオールナイトニッポンは、北の国からじゃないですか、長い年月をかけて変わっていく成長が見られる。」ー佐久間宣行ANN0(2020/10/21放送回)

若林は、ラジオの中で自分が芸能界でした恥ずかしい体験、日々テレビに対して思っていることを素直にぶっちゃける。
春日がMVSをとったことに対して本気で悔しがり、アカデミー賞でスベったことを語り、芸人なのに人見知りをしてしまうことを語り…そんな弱さを見せることが若林の大きな魅力だと思う。
そこにリトルトゥース(ダサいくくり方をしたが)は惹かれているのだと思う。現に、ヘビーリトルトゥースであり、若林の友達のDJ松永もこう語っている。

「俺が平凡な日常で感じて来た、格好悪くて、情けなくて、後ろめたくて、ちっぽけで、恥ずかしいあまりずっと蓋をしていた気持ちを、あなたは話していましたね。」ー若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の解説文・DJ松永(文春文庫・2020)

あ、芸能人っていう遠い世界の人もこんな悩みを抱えているのか。こんな醜悪な感情を持っているのか。ということを世の中の人に伝えているのがオードリーのANNであり、あちこちオードリーなのではないかと思う。

地上波ではできないオンラインライブ

今回のオンラインライブは、次のようなお願いが視聴者に向けて出された。今回は限られた人にお届けする生放送であるからこその爆弾トークがウリだ。若林が言うような「ホントのことを言わない国」での治外法権が適用された場として、話すというものであった。

実際、ライブが始まると、不用意発言の応酬で大爆笑しながら観た。ゲストのパンサーの向井も不用意な発言を連発。本当に、一緒に居酒屋で飲ませていただいている感覚でトークを楽しむことができた。3人の考え方、仕事への取り組み方、人生観に関することまで深く知ることができた。あちこちオードリー通常回、今回のオンラインライブを通して感じた私の感想を次に簡単に述べさせてもらいたい。

7番セカンドはやらねばならぬことが多い

7番セカンドとは、若林さんが自分を例えて言った表現である。以下の記事をご覧頂きたい。

これは、ほんとに秀逸なたとえである。日頃からネタも書いてなくて、打ち合わせでも一言も喋らない春日が持ち上げられて、いつも若林は損をする。ということが多い。その中での他の例えを少し紹介してみる。

「ビーグルはあんなに一生懸命、トランクで何重にもなってる、持ち込んじゃいけない肉とかを見つけているのに、ちょっとトイプードルがお前、お手をしたら「かわいい!」って言われて。そんなトイプードルをビーグルはどう見てんだよっ!(略)春日はゴールデンレトリバーであり、トイプードル。スター犬ですよ。」ー若林正恭「オードリーのオールナイトニッポン」(2020/07/04放送回)

この話を受けて、オードリーの2人をよく知る佐藤満春さんのブログがこちら。

野球においてセカンドというポジションは、非常に地味なポジションだが、たくさんやることがある。
ピッチャーが投げるたび、キャッチャーからの返球がそれたときに備え、バックアップに走る。
さらに、セカンド以外に内野ゴロが飛んだ際、ファーストの後ろにカバーに走る。常に頭を動かし、周りのポジションをフォローしているのだ。
これを称賛されることはほとんどない。野球が好きな人でも、そこに注目してみている人は少ない。だが、そのカバーをしてないと批判を浴びる。褒められることはないが、批判される危険性はある。それがセカンドというポジションなのだ。
さらに、7番という打順もまた難しい打順である。ある局面ではホームランを狙い、ある局面では、確実にバントを決める技巧派にもならないといけない。7番という形容が難しいポジションであるからこそ、オールマイティーなプレーが要求されてくるのだ。若林さんも向井さんも失敗は許されない。ただ、脚光を浴びることも少ない。そんな理不尽に耐えながら、芸能界でもがいているのだ。

ビーグル犬も7番セカンドもとても重要な役回りだ。なくてはならない存在だ。しかし、その頑張りが表立って褒められることはない。オードリー若林も、パンサー向井も、影に隠れ、いつまでも損な役回りを受ける“じゃない方”芸人なのだ。でも、仕方ないと彼らは腹をくくる。

今回のオンラインライブでは、テレビに出ている人がタブーとしているような理不尽に対しても、惜しげもなく思いを吐露していた。こんなに満足感が高いライブでも、若林も向井も反省ノートを書くのだろう。(春日は日記かもしれないが)

我々の日常も理不尽にまみれている。褒められることも少ない。失敗には厳しい。
テレビの前で楽しそうに笑っている芸人にもそんな悩みがあり、悩みもがき苦しみながら、こちらに娯楽を提供してくれているのだ。と感じた。芸人のプロフェッショナル精神をひしひしと感じた。そのもがき苦しんだ結果生まれた芸を楽しみ、それを我々の抱える理不尽に打ち克つパワーにしていきたい。

今回のオンラインライブ、11/1までアーカイブ配信があり、まだチケットが買えるので、もしよかったら、ぜひ見てください!


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