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二日目の味噌汁には敵わない

目次
・二日目の味噌汁に関するお話 2700字程度
・料理紹介

二日目の味噌汁に関するお話

二日目の味噌汁が好き。
二日目の味噌汁ってどうしてあんなに美味しいのかな。
それに、卵をぽとんと落として、半熟卵をちょっと硬くしたくらいまで熱を入れる。
全部一緒に頬張る。
至福💕

それは私が子供の頃のこと。夕ご飯に食べた味噌汁が少し残った。母はその少し残った味噌汁の鍋に蓋をし火にかけた。蓋をしてしっかり過熱して軽く煮詰めれば明日の朝までもつから、とのことだった。

翌朝、母は味噌汁を再度火にかけた。昨日と今日とそんなに煮たらしょっぱくなるんじゃないのかな、と私は少し気になった。昨日ちょうどいい塩加減で食べた味噌汁だったからしょっぱいのはな~と思って母に聞いた。母はニヤッと笑って「これにね、卵を入れるのがママ好きなんだ~。美味しいのよ」と言うと、冷蔵庫から卵を取り出した。え、味噌汁に卵?

ポコッポコッと沸騰し始めた味噌汁に卵をポトンと割って落とす母。味噌汁にそのまま卵を割って入れるんだ。かきたま汁みたいに溶いてから糸状に入れていくんじゃないんだ。どんな感じになるんだろう、と私は卵から目が離せなかった。

卵にも次第に火が入っていく。透明だった白身が少しずつ白くなってきた。更に真ん中の黄身の部分もうっすら膜が張っていく。置かれている土台が違うだけで、目玉焼きができていく工程と同じような光景だ。ちょっと違うのは土台が平らでなく液体なので少しずつ沈む。目玉焼きと半熟卵の中間みたいな感じだろうか。
「黄身が硬めと柔らかめどっちが好き?」と母に聞かれた。目玉焼きは少し硬めの黄身が好きな私。「硬め」と答えた。母はおたまで軽く汁を掬って卵にかけながら言った「こうすると満遍なく火が入るし、味が入って美味しくなるのよ」

お椀に味噌汁が注がれる。前の日に食べた味噌汁より色が濃くなっていた。鍋に残っていた人参や大根なども少し茶色みを帯びている。味がしっかり浸みたということが見て取れる。それだけ煮詰まったという証だろう。その上に朝新しく加わった新参の卵を上に置く。

いただきます。一口味噌汁を飲む。思った通り塩気が強め。でも肉や野菜が煮込まれたからなのか、昨日とは違った旨味も感じた。そして、合うのかちょっと不安な卵を一口。

美味しい! なにこれ、美味しい! 卵がほんのり塩気を帯びてその塩気には野菜や肉の旨味も一緒に凝縮されていて。卵に味噌汁をかけながら周りからじっくり火を入れたことでできるのかもしれない。そして、硬めに仕上げてもらった卵は黄身が流れ出さないギリギリの火の入り方だった。これより早くお椀によそっていたら黄身が流れ出したかもしれないし、これよりもうちょっとでも火が入っていたら黄身が硬くてぽそぽそした仕上がりになっていたかもしれない。そういうほんとに狭間の、しっとりした弾力が残っている、ここ、というタイミングの状態だった。私はそんな状態の卵を食べるのが大好きなので嬉しかった。

そんな卵と前の日から入っている具材とのコラボ。旨味が凝縮されて味が濃くなっている野菜や肉だからこそ産み出せる味。朝食べた味噌汁は前の日とは全く違う一品になっていた。私はこの卵を入れる味噌汁が大好きになった。夜ごはんに味噌汁が出ると翌日が楽しみになった。そんなに好きになるとは思わなかった、ママの朝の楽しみだったのに~、と言われるほどの好物になった。

大人になり自分でも作るようになった。簡単そうに見えて結構難しい。まず第一に味噌汁を少し多めに作っておかなくてはいけない。多めに作るのはいいのだけれど、いかんせん私は食いしん坊なので翌日まで残すことが中々できない。目の前にあると食べて、食べきってしまう。

そして次に、これが一番難しいんだけど、卵にどれだけ火を入れるか。母は絶妙なタイミングで火を止めていた。クツクツ煮立たせた鍋は火を止めた後も結構余熱で卵に火が入る。味噌汁の残量によっても卵への熱伝導が変わってくる。この余熱を計算して火を止める感覚が中々掴めない。私はうっかり火を入れすぎてしまう。

難しいと思いつつ何度も作った。そのうちに、その日のうちに二日目の味噌汁を再現できないか考えるようになった。その日の味噌汁でも具材にしっかり味を染み込ませることができれば同じになるのではないだろうか。何度かやってみたが何かが違っていた。二日目の味噌汁はどうやったらできるのだろうか。そんなことを想い乍ら作った。好きだったけど1つ厄介な点があった。作った後の鍋のこびりつきが結構すごくて鍋洗いが大変になることだ。それがちょっと面倒で次第に味噌汁自体そんなに食べなくなっていった。

先日久しぶりに味噌汁を作った。実家から手作り味噌が送られてきたことがきっかけだった。そう言えば最近味噌汁飲んでないな、卵の味噌汁飲みたいなと思い出した。その日に二日目の味噌汁が飲みたかった。具材を少し煮詰めてみようか。弱火でじっくり火を通す。豚肉と大根と人参が入った豚汁にした。大根と人参は早く火が通って味が染み込むように、両方とも薄いいちょう切りに。しっかり味が染み込んだなと思ったらいったん火を止め少し冷ました。肉や野菜は、加熱したものをいったん冷ます時に味が浸透すると聞いたことがある。ちゃんとその過程も踏んだ。そのうえで再度火にかけ、ここで卵を割って入れる。

完成。途中かき混ぜる時に卵を崩してしまった。それはそれで美味しいと母は言っていたし、それも何度も食べて好きだった。特に追い卵はしなかった。ちょっと塩気が強かったけど美味しい味噌汁だった。ちょっと作りすぎたのか残った。

翌日、ガスコンロには少し煮詰まって一晩おいた味噌汁があった。人参と大根を大きめに切ってプラスして少し煮詰めた。昨日も卵を入れたけど、今日も入れてみることにした。煮詰めたため汁が少ない状態のまま卵を割って落とす。卵が結構汁を吸う。完成。

食べる。やっぱり二日目の味噌汁が美味しい。前の日の具材が残った味噌汁があるから新しい具材を加えても味がまろやかになる。その日だけで作った味噌汁はサラッとしてすーっと染み込む感じなのに対し、二日目の味噌汁は、角が取れてまろやかになってちょっとしたとろみが出る感じだろうか。私はこのまろやかさが好きなんだと思う。このまろやかさが卵に絡むから何とも言えない味わいを生むのだと思う。このまろやかさは、味を染み込ませる工程だけでは再現できないことが分かった。

新たに加えた人参も大根も、前からいる人参と大根のまろやかさがあるから、少し角が取れてまろやかさの仲間入りをしている。やっぱり二日目の味噌汁には敵わない。

料理紹介
<二日目の味噌汁+卵>
材料
前の日に作った味噌汁 1~2杯分
卵 1個
※好みで野菜、肉を付け足してもいい

作り方
1、味噌汁を作る。

2、蓋をして隙間を無くし、しっかり加熱してから一晩おく(※)。
3、2を火にかけ、煮立ってきたら卵を割って落とす。(写真は大根と人参を加えたもの)

4、器に盛って召し上がれ(^^♪
※気温や湿度が高い季節は冷蔵庫で保存した方が安全。20~50度は菌が繁殖しやすい温度帯らしいので、室温がそのぐらいの時は放置を避けています。

今回は具沢山な豚汁よりのアレンジ味噌汁になりました🍀

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