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淡々と

NHKの番組「ドキュメント72時間」を見た。
2014年の再放送で、スポットは「大病院の小さなコンビニ」。

内容は、大きな病院の一角にある24時間営業のコンビニでカメラを72時間回し、来た人にインタビューをするドキュメント番組。訪れるのは、病院勤めの人や患者さんが多い。

昼間は、入院患者さんや付き添いの人などが多かった。大きな病院のためか、がんで入院の話が複数。生活用品や手術後の気晴らしの買い物、など。
日が暮れて、夜になると、仕事の合間をぬってお医者さんや看護師さんなどの病院勤めの人が増える。夜遅くなり仕事で根詰めているから、ちょっと10分ほど何も考えない時間、みたいなお医者さんもいた。

2014年、6年前の放送時、私は何をしていた時だっただろうか。会社勤めをして、好きな料理教室に通って、という感じだろうか。2014年、私は元気だった。料理中に包丁でちょっと切った、とかちょっとした怪我をした、風邪を引いた、くらいで大きな病気はあまりなかった。だから、当時私がこの番組を見てどれだけ理解できたかはわからない。今回の様にnoteなど何かに書き留めておこうと思ったかもわからない。

でも今回の2020年再放送を見た時は、痛いほどにわかってしまった。インタビューを受けている人たちが、表面で笑って心で重いものを抱えていて、と言うのが見えてしまった。インタビューされた人の一言一言が私の中に広がる。ずっしり重みを増す。

数年前がんで入院をした。手術をした。幸い命に別状はないタイプの部分のがんだった。2週間ほど入院をした。手術は初めて経験した。心配そうに見守る身内にひらひら手を振り、へらへら笑って手術室へ入った。朝から数時間。手術を終え病室に戻った時にはぐったりで動けない。ナースコール用のボタンが届く範囲に置かれる。

でもそのボタンを押すことは殆どなかった。30分から1時間おきに看護師さんが見回りに来てくれた。声を掛けてくれた。痛む箇所が無いか聞いてくれた。痒い所を聞き、掻いてくれた。私用の担当はいたものの、当番制で時間交代で違う人が様子を見に来てくれた。ほんとに入れ替わり立ち代わり。至れり尽くせり。私の心の声が駄々洩れなのかと思うくらい的確に接してくれる。こんなに甘えてしまっていいのかと躊躇したくらいだ。

見回りの間隔は少しづつ空いたものの、それでも何かあったらと、いつも気にかけてもらっていた。私は4人部屋だった。4人部屋がいくつもある大きな病院で、いつだれが呼ぶかわからない緊張状態の中で看護師さんは仕事をしている。常に気を張っている仕事だ。病院の中に入ってみなければ、入院しなければ全く見えないことだった。

他人事でなく、自分がちょっとだけでも経験したから見えたこと。私が入院中に見たのは看護師さん。そして看護師さんが天使と言われる所以が分かった気がする。

常に明るく照らすような笑顔なのだ。誰もがそう。患者に接する時そうするよう言われているのかもしれない。そうであったとしても、笑顔で接し、楽しくなるように会話し続けるのは並大抵のことではない。そうやって笑顔で何かあればてきぱきと作業する。大変そうな顔は見せない。

そして、お医者さん。私の手術をした担当の外科医は、私の後にも2人手術が入っていた。それを毎日の様に行う。1人として同じがんはない。似たようなものはあっても同じものはない。いつも神経を尖らせて、いつも人の命の重みを感じて仕事をする外科医。外科医に限らずお医者さんは、命を重みを心に置いて仕事をしているだろうと思う。

この番組は静かに淡々と実際に見たものを綴る。時折入るナレーションも淡々と静かに。静かにゆっくりと体に染み渡るような感覚を覚える。じわ~っと広がる。この方たちの負担を増やしたらいけない、と肌で感じる。

こういう番組を、ただ静かに淡々と伝える番組をもっと増やしたらいいのではないかと思った。強く言うのがいい場合もあるけど、今は1人1人の心に少しずつ染み入る番組が必要な気がする。

自分には何ができるか、または妨げないか、日々変わる現状に振り回されず、感情に流されすぎることなく過ごしていけたらいいですね🍀

※画像は「みんなのフォトギャラリー」から緋呂さんのイラストをいただきました。ありがとうございます。

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