熱い思いは電話で伝えたくなる
あ、それわかるーー! 私もそんなことあった!
たまたま見ていたNHKの番組に思いっきり共感の言葉を掛けたくなるシーンがあった。それは「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんの言葉に対するものだった。
私はお昼ご飯と共にNHKの番組「ごごナマ」を見ていた。この番組はMC3人とNHKのスタジオに招かれたゲストが一緒にトークするものだ。いつもはMC3人(NHKアナウンサーと俳優2人)がゲストの話を楽しく聞き話が弾んでいる。でも今は、感染力の強いウイルスのが猛威を振るっているためNHKアナウンサーのみがスタジオにいて俳優2人は電話で参加するスタイルになっている。ゲストも呼ばない様にしているようで、放送は専ら過去に放送したものがいくつか組み合わさった内容になっていた。
その過去放送分の中に2019年がNHKの長寿番組「おかあさんといっしょ」が60周年ということで、人気のあった歴代の歌のお兄さんがゲストで来ているものがあった。「おかあさんといっしょ」の初回の映像などを流したり、彼の歌のお兄さん時代の思い出話などに花が咲いていた。
話は彼が歌のお兄さんになった理由へと進んだ。高校生の頃から歌のお兄さんになりたくて、どうしたらなれるか考えて音楽学校に通った。それでも歌のお兄さんは一般公募されていなかった。そんな折、その時の歌のお兄さんが劇団四季出身との情報を得た。早速劇団四季の入団試験を受けて受かり機会を待った。自分からもオーディションがないか問い合わせも何度もしていた。それだけ入れ込んでいた。ところが、ちょっと問い合わせ期間を空けていた時に第一次オーディションがあったとの話を耳にした。ショックを受けながらも駄目もとでNHKに直接電話をした。すると偶々その日に第一次オーディションの追加募集決まったと教えてくれた。そのおかげで今がある、とのことだった。
テレビを見ていた私は「わかるー! 私もそんなことあった!」と声に出しそうになった。もう10年近く前になるだろうか。私は料理教室を探していた。いくつか見学やワンデイ講座にも参加した。どれも勉強になったし楽しかった。でも、定期的に通うとなると、場所が遠かったり時間が合わなかったりした。それからもネット検索したりと色々見ていた。そしてある料理教室を見つけた。興味を持った教室があって募集要項を読み進めた。楽しそうだなと思った。ところが、この教室は3月で募集を締め切っているとの一文が目に入った。この時は4月。残念に思ったが諦めた。
料理教室が決まらないまま1年が過ぎた。この頃にはあの料理教室のことはちょっと忘れていた。そんな時にあるビュッフェに参加することになった。それは、私が興味を持ったけど締め切っていて、参加できなかった料理教室の料理が食べられるものだった。とてもワクワクした。ずらっと並んだ美味しそうな西洋料理たち。少しずつ色々よそって席に着く。一口食べる。好き。これ好き! どれも素晴らしい料理の数々。中でも焼いたお肉にかかったソースが美味しくて、美味しくて。ビーフストロガノフもまろやかで濃厚で美味しくて。カレーも野菜の旨味が凝縮されていて何杯でも食べたくなる。重厚感のあるどっしりしたソースに私は魅了された。あとで知ったのだが、これは西洋の古典的な料理だった。私はここまで重厚感のある西洋料理を食べたことが無かった。
やっぱりこの料理を習いたい。私はこの料理教室のホームページを開いた。そこで目にしたのは、1年前と全く同じ光景。「今期分は3月で募集は締め切りました」。そしてこの時も4月だった。うっかりしていた。1年前に来年こそは、と思っていたのに忘れていた。でもどうしても習いたい。あの味が忘れられない。私の舌に強烈に残っている。駄目もとで電話をしてみよう、駄目でも美味しかったことのお礼が言いたい。いつもは躊躇する私がすぐに電話を架けた。どれだけ美味しかったか、そして習いたいかを伝えた。すると、「ほんとは駄目なんですけどね。褒めていただけて嬉しいし、そういう人に来てほしい」ということで入れてもらえた。
テレビに映る歌のお兄さんの話で私はあの時の情熱を思い出した。気持ちが昂ると電話するよね! 駄目もとでも想いを伝えたくなるよね! 歌のお兄さんのオーディションを受けられることになった彼も相当嬉しかっただろうなあ、と思いっきり共感した。
気持ちを伝えるための方法はいくつかあるけど、電話でもしっかり気持ちは伝えることができるという経験をした。少し忘れかけていた。あれから定期的に料理教室に通って数年が経った。通えることが当たり前になりつつあった。当たり前になったのは自分が気持ちをしっかり伝えられたから。ちゃんと1歩を踏み出したから。今の私は次に繋がる1歩を踏み出せているだろうか。考えるいい機会をもらった出来事だった🍀
※画像は「みんなのフォトギャラリー」から、ウーリィユミさんのイラストをいただきました。ありがとうございます。
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