映画「ゴールデンカムイ」感想 再現度は高い

映画「ゴールデンカムイ」観ました。
人気漫画の実写化作品。
僕は原作がかなり好きなので、前からこの実写化も気になっていました。
正直、期待はそれほどしていなかったけど。

高い再現度

本作はそれなりに評判も良いようで
その理由はやはり再現度の高さだと思います。
原作を読んでいればわかりますが、この作品はかなり原作に忠実に作られている。
特にキャストの見た目は
原作の登場人物が現実にいたらこうだろうな
と、思わされるほど似ている。

まあ、主演の山﨑賢人は山﨑賢人でしかなかったが
それ以外のキャストは見た目も演技も漫画で読んだキャラそのもので、初登場時でもどのキャラかわかるほど。
メイクの技術で原作に似せているというのはあるものの、原作キャラに合わせた配役がなされていたのではないかと思う。

中でも
鶴見中尉役の玉木宏、土方歳三役の舘ひろしは役者の存在感も相まって、漫画の中から飛び出してきたのかと思えるほど。
主役を食ってるレベルの存在感だった。

アシリパを演じる山田杏奈に関しては
初めは成人した女性が12歳の少女を演じるので
大丈夫か?と不安に感じたが
実際に見てみるとかなりハマり役だった。
実写アシリパの年齢は定かではないけど、本作を観る限りでは全然違和感はなかった。

ストーリーも原作に忠実で、余計な改編はなくほぼ原作通りと言ってもいい。
原作ファンも安心して観れる作品ではないでしょうか。

チープさはあまりない

邦画にありがちなチープさも本作からは感じなかった。
背景の北海道の大自然は壮大で、北海道の広大さが伝わってくる。
町並みも本物っぽかったし、アイヌの集落などもリアルに再現していた。
アイヌの文化を映像として再現するというのは、この作品を実写化した意義も感じれる。

邦画ではチープになりがちなCGのクオリティも悪くなく、さほど引っ掛かりがなく観ることができたと思う。
そりゃ、ハリウッド大作と比べてしまうと、やはりCGのクオリティが低いのは否めないが
邦画としては全然良い方だったかな。

アクションシーンもハラハラさせられる場面が多く、痛々しい場面はちゃんと痛いのでリアリティを感じれた。
若干グロい映像もちらほらあった。
そういうのを含め、しっかりと原作を再現し実写化しようとしている心意気は感じれたので
本作には好感を持てる。

再現度が高いからこその弊害

本作はとても原作を忠実に再現している。
だからこそマイナスな部分もあった。

正直言うと、本作は一本の映画として盛り上がるところが全然ない。
原作で言うとおそらく5巻くらいまでのストーリーだと思うが、これは物語の序盤中の序盤だ。
この辺りまでは
世界観や設定の説明、キャラクターの紹介、物語の方向性など
ストーリーの地盤を固めている段階だと言ってもいい。
もちろん、この段階でも面白い展開や描写などたくさんあって楽しめる作品ではある。
でも、これは長編の連載漫画というのがあり、長い目で見ているからこその面白さでもある。

やはり、2時間ほどの映画となると
これだけだとパンチに欠ける。
本作は一つの作品として、いまいち何も起こらずに終わってしまった印象だった。

一番の山場となるエピーソードも、捕らわれた杉本が脱出するだけの話なので
終盤になってもカタルシスはなく、あまりスッキリとしなかった。
これから刺青人皮の争奪戦が始まるぞ!!
で終わってしまうので、もはや始まってすらいない気がしないでもない。

登場人物も多く出てくるが、多い割にはそれほど活躍せず次回に持ち越しという感じだ。
土方歳三なんて
やたらと存在感を放っていだけど、本作ではほぼ何もしていない。

2時間かけてこの進み具合だと、完結するまでには何部作になるのだろうか?
下手するとアシリパがオバサンになってしまう…

越えられない壁

こういう実写化作品を観るとつくづく思うけど、やはり漫画の実写化は難しい。

本作のように原作を忠実に再現すると、それが原因で映画としてはいまいちになってしまう。
かと言って、原作をあまりに改変してしまうとそれはそれで批判されてしまう。

実写化だけでなくアニメ化なんかでも感じるが
原作が素晴らしいほど、それを忠実に再現すれば原作を越えれない。

結局は実写化にしろアニメ化にしろ、原作の再現で終わってしまえば
それなら原作を読めばいいや
と、なってしまう。

原作の方が作者のセンスや思想をストレートに受け取れるし、作品の表現も直接感じることができる。
実写化やアニメ化は余計なフィルターを通して作品を届けているようなものだ。
特に原作を忠実に再現したものは、原作のプロモーション以上のものにはなれないように思う。

昔は解釈が全く違う原作とは別物な実写化作品やアニメ化作品もそれなりにあったが、今は少しでも原作から外れると原作ファンからのクレーム対象になりかねない。

いろんな意味でかなり窮屈になり、表現の幅も狭くなってしまったなと感じたりもする。
個人的には原作を大きく改変した作品も嫌いではないので、今の“原作に忠実”ブームはどうもつまらないなと思わされる…

と言うか、そもそも原作ありの作品が多すぎる。
オリジナル作品をもっと作るべきだと思うけど…
やはり、金儲けを考えると人気作を下敷きにすると安定するよな…

実写「ゴールデンカムイ」も結局は金儲けのために人気漫画を利用しただけの実写化映画だったのかな…

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