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ぼくにとってのSMAP

「WELCOME ようこそ日本へ」

キラキラした歌声がぼくの耳に入ってくる。

「君こそ我が誇り Dear WOMAN」

消臭剤の匂いとはちょっと違うような、

平成ど真ん中を象徴するような匂いがする車内。

父の車内ではいつも彼らの曲が流れていた。

小さい頃の記憶がほとんどないぼくでも、この場面の記憶はかすかに覚えている。


「No.1にならなくてもいい」

「もともと特別なOnly one」

まだ幼かった自分。

きっと歌詞の意味なんてわからなかったと思う。


「あれからぼくたちは何かを信じてこれたかな」

「夜空のむこうにはもう明日が待っている」

意味なんてわからなかったけど、なぜか好きだった。

そう、なぜか好きだった。


ぼくにとっての彼らの記憶というのは、その時が最も古い。

日本で一番有名で、愛されていて、かっこよくて、色んな人から必要とされていたグループ。

「SMAP」

今回は彼らについて書いていきたいと思う。



ぼくが小学生だった20年くらい前、

SMAPというアイドルは、すでに国民的人気を誇っており、お茶の間にとって当たり前の存在だった。

歌番組、バラエティ番組、ドラマ、CM

スマホがなく、テレビをずっと見ていたあの頃。

彼らを見ない日はほとんどなかった。

中でもぼくが一番印象に残っているのは、

"資生堂"のCMである。

女性の髪のダメージケアのCMだった気がするけど、

そのCMと彼らが歌う「Dear WOMAN」という楽曲が、今でも頭に残っている。

「なんで頭に残っているのか」

文章を書いている今も考えているけど、しっくりくる表現が見つからない。

ただ今でも「SMAPといえば」と聞かれたら、

「資生堂のCM」

と答えるだろう。



しかし、ぼくらの世代というのは、いわゆる"SMAP世代"ではない。

SMAP世代というのは、たぶんもう一個か二個くらい上の世代で、

ぼくらの世代とともに歩んできたグループは違う"五人グループ"だった。

彼らは名の通り、勢いよく日本に現れ、大きな旋風を巻き起こした。

「嵐」

そう、ぼくらはど真ん中の"嵐世代"なのだ。

テレビや雑誌などはもちろん、学校の会話の話題になることも多く、運動会では彼らの曲が流れていた。


個人的な見方にはなってしまうけど、

この両グループは、ちょっと"歳の離れた兄弟"って感じがする。

「嵐」がちょっとヤンチャな弟

「SMAP」が遊びつくして落ち着いている兄

そんな風に見えた。


若い学生の頃というのは、ヤンチャで勢いのある人を好きになる。

きっとアイドルにも同じことがいえて、

世の中のブームを作るとされている学生は「嵐」を好きになっていった。

とはいっても「SMAP」の人気がなくなったというわけではなく、

ただ「嵐」の勢いが凄すぎたというのもあるし、

ぼくたちの生活には「SMAP」が存在して当たり前になっていたというのもある。



そんな数年後の2016年。

「SMAP」の解散が発表された。

解散発表前から新聞などで解散報道が出ていたので、何かあったのだろうと思っていたが、いざ正式に発表されると、なんともいえない感情になった。

「解散」

今でこそ"グループ解散"というのは増えてきているけど、当時はあまりなかったので、かなり衝撃を受けたのを覚えている。

アイドルが解散すること

ましてはあの"SMAP"が解散すること

「そんなことがあるんだ」

素直にそう思った。

あんなに居て当たり前の存在だったSMAPが2016年を最後に見れなくなる。

素直に悲しかった。



「SMAP×SMAP」

約20年間続いた彼らの番組で、最後に歌を生披露することが発表された。

当時ぼくは大学受験を控えており、いつもであれば塾の授業が終わった後、自習室に行くのだが、その日は授業が終わるとすぐに自転車を漕いで家に帰った。

リビングには家族全員が集合していて、すでに番組では過去20年の振り返り映像が流れていた。

その時にようやく、

「本当に終わるんだ」

と実感した。


過去の振り返り映像が終わると、

黒いスーツを着た彼らが横に並んでいた。

心ここにあらずという表情をしているようにも見えたし、何か決意を固めて、最後の歌唱を噛み締めている表情にも見えた。

最後に彼らが歌った曲は

「世界に一つだけの花」

彼らの一番代表的な曲でもあるし、ぼくが一番好きな曲でもある。

"一番にならなくてもいいんだよ"

"もともとオンリーワンなんだから"

当時はあまり理解できなかったけど、大人になりかけている今、ようやく少し理解できるようになった。


そんな曲の終盤。

リーダーが右手を広げ、親指から順番に指をたたんでいき、最後たたんだ指を大きく広げ、こちら側に手を振っていた。

「あれにはどんな想いが込もっていたのだろうか」

きっとぼくには理解できないし、理解したくもない。

だけど、あの手の振り方の意味だけはぼくも知っている。


キムタク

吾郎ちゃん

つよぽん

慎吾ちゃん

森くん

これまでSMAPに関わってくれた人たち

そして、ファンの人たち

その人たちに向けて、リーダーの中居くんは手を振ったのだろう。


「じゃあまた明日ね」

「SMAP×SMAP」の放送作家だった
鈴木おさむさんの本を読んで
この文章を書きたくなりました。
放送作家業お疲れ様でした。


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