ぼくにとってのSMAP
「WELCOME ようこそ日本へ」
キラキラした歌声がぼくの耳に入ってくる。
「君こそ我が誇り Dear WOMAN」
消臭剤の匂いとはちょっと違うような、
平成ど真ん中を象徴するような匂いがする車内。
父の車内ではいつも彼らの曲が流れていた。
小さい頃の記憶がほとんどないぼくでも、この場面の記憶はかすかに覚えている。
「No.1にならなくてもいい」
「もともと特別なOnly one」
まだ幼かった自分。
きっと歌詞の意味なんてわからなかったと思う。
「あれからぼくたちは何かを信じてこれたかな」
「夜空のむこうにはもう明日が待っている」
意味なんてわからなかったけど、なぜか好きだった。
そう、なぜか好きだった。
ぼくにとっての彼らの記憶というのは、その時が最も古い。
日本で一番有名で、愛されていて、かっこよくて、色んな人から必要とされていたグループ。
「SMAP」
今回は彼らについて書いていきたいと思う。
*
ぼくが小学生だった20年くらい前、
SMAPというアイドルは、すでに国民的人気を誇っており、お茶の間にとって当たり前の存在だった。
歌番組、バラエティ番組、ドラマ、CM
スマホがなく、テレビをずっと見ていたあの頃。
彼らを見ない日はほとんどなかった。
中でもぼくが一番印象に残っているのは、
"資生堂"のCMである。
女性の髪のダメージケアのCMだった気がするけど、
そのCMと彼らが歌う「Dear WOMAN」という楽曲が、今でも頭に残っている。
「なんで頭に残っているのか」
文章を書いている今も考えているけど、しっくりくる表現が見つからない。
ただ今でも「SMAPといえば」と聞かれたら、
「資生堂のCM」
と答えるだろう。
*
しかし、ぼくらの世代というのは、いわゆる"SMAP世代"ではない。
SMAP世代というのは、たぶんもう一個か二個くらい上の世代で、
ぼくらの世代とともに歩んできたグループは違う"五人グループ"だった。
彼らは名の通り、勢いよく日本に現れ、大きな旋風を巻き起こした。
「嵐」
そう、ぼくらはど真ん中の"嵐世代"なのだ。
テレビや雑誌などはもちろん、学校の会話の話題になることも多く、運動会では彼らの曲が流れていた。
個人的な見方にはなってしまうけど、
この両グループは、ちょっと"歳の離れた兄弟"って感じがする。
「嵐」がちょっとヤンチャな弟
「SMAP」が遊びつくして落ち着いている兄
そんな風に見えた。
若い学生の頃というのは、ヤンチャで勢いのある人を好きになる。
きっとアイドルにも同じことがいえて、
世の中のブームを作るとされている学生は「嵐」を好きになっていった。
とはいっても「SMAP」の人気がなくなったというわけではなく、
ただ「嵐」の勢いが凄すぎたというのもあるし、
ぼくたちの生活には「SMAP」が存在して当たり前になっていたというのもある。
*
そんな数年後の2016年。
「SMAP」の解散が発表された。
解散発表前から新聞などで解散報道が出ていたので、何かあったのだろうと思っていたが、いざ正式に発表されると、なんともいえない感情になった。
「解散」
今でこそ"グループ解散"というのは増えてきているけど、当時はあまりなかったので、かなり衝撃を受けたのを覚えている。
アイドルが解散すること
ましてはあの"SMAP"が解散すること
「そんなことがあるんだ」
素直にそう思った。
あんなに居て当たり前の存在だったSMAPが2016年を最後に見れなくなる。
素直に悲しかった。
*
「SMAP×SMAP」
約20年間続いた彼らの番組で、最後に歌を生披露することが発表された。
当時ぼくは大学受験を控えており、いつもであれば塾の授業が終わった後、自習室に行くのだが、その日は授業が終わるとすぐに自転車を漕いで家に帰った。
リビングには家族全員が集合していて、すでに番組では過去20年の振り返り映像が流れていた。
その時にようやく、
「本当に終わるんだ」
と実感した。
過去の振り返り映像が終わると、
黒いスーツを着た彼らが横に並んでいた。
心ここにあらずという表情をしているようにも見えたし、何か決意を固めて、最後の歌唱を噛み締めている表情にも見えた。
最後に彼らが歌った曲は
「世界に一つだけの花」
彼らの一番代表的な曲でもあるし、ぼくが一番好きな曲でもある。
"一番にならなくてもいいんだよ"
"もともとオンリーワンなんだから"
当時はあまり理解できなかったけど、大人になりかけている今、ようやく少し理解できるようになった。
そんな曲の終盤。
リーダーが右手を広げ、親指から順番に指をたたんでいき、最後たたんだ指を大きく広げ、こちら側に手を振っていた。
「あれにはどんな想いが込もっていたのだろうか」
きっとぼくには理解できないし、理解したくもない。
だけど、あの手の振り方の意味だけはぼくも知っている。
キムタク
吾郎ちゃん
つよぽん
慎吾ちゃん
森くん
これまでSMAPに関わってくれた人たち
そして、ファンの人たち
その人たちに向けて、リーダーの中居くんは手を振ったのだろう。
「じゃあまた明日ね」
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