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【台湾有事】Xデーはいつなのか? ~米中戦争の考察~

既知のとおり、台湾では新たに民進党総統が誕生しました。

​民進党は中国とは距離を置く政党なので、『台湾統一』を悲願に掲げる習近平中国共産党(中共)にとっては非常に不都合な状況です。

​一部の保守言論人やネットからは「早ければ数年以内に中国が台湾に侵攻してくる」との意見も散見されますが、前回も書いたように私はやや異なる立場をとっています。

​確かに、世界情勢を俯瞰すれば、現在、アメリカはウクライナやガザでの紛争で疲弊。武器・弾薬は底をつきかけ、資金ショート。この状況は中国にとっては、まさに千載一遇の機会であるとも言えます。

​しかし、強かな中共が、早計に武力侵攻を仕掛けたりするでしょうか。

1.中共の視点


​では、ここで『中共の視点』に立って見てみましょう。

1.台湾に侵攻すれば、アメリカが軍事的・経済的支援に出てくる。

2.アメリカは同盟国日本にも「参戦」させようとする。

3.アメリカとの軍事力の差は年々縮まってはいるが、本格的な紛争となれば、現在のロシアとウクライナのように長期化が避けられない。

4.欧米諸国からの厳しい経済制裁は避けられない。

​このような状況に置かれる中共が勝てるかどうかもその見通しが立たないなか、「数年以内」に台湾侵攻を仕掛けるような悪手に踏み切ったりするでしょうか。

もしあるとすれば、その背景に中共にとってそれ相応の理由や狙いがあるということになります。

ここで考えたいのが、習近平がもし台湾侵攻を仕掛けるとしたら、どのような条件が揃ったときなのか、ということです。

2.習近平がもし台湾侵攻を仕掛けるとしたら(1)


まず第一に、「中共にとって戦況が圧倒的有利にあると判断したとき」です。

上述のとおり、ウクライナとイスラエルへの支援のため、アメリカの武器弾薬は枯渇し、資金もショートしています。

この状況は中共にとっては好ましい状況ではあります。

しかし、同時に3つの懸念点があります。

1.ウクライナ紛争は停戦の動きがあること

⇒今後戦況が変わることはなくロシアの占領地域の奪還する望みはなく、ただでさえウクライナ支援疲れがあるところへガザ紛争が発生。ウクライナに回す武器・資金がイスラエルに回されている。

2.ガザ紛争への介入にアメリカが消極的であること

⇒ハマスのテロ攻撃への報復から始まったイスラエルのガザ侵攻ではあるが、報復の域を超えるほどの甚大な犠牲者数が出ており、国連では停戦決議が採択されている。

(イスラエルの狙いはパレスチナ人をガザから排除し、併合することだが、そこに大義はなく、世界が見放しているため、アメリカは武器・資金の支援は継続しても、この紛争に積極的に介入ができない。)

(イスラエルはハマスを攻撃し、ハマスを支援しているイランをこの紛争に引きずり込むことで、アメリカに「参戦」させようという意図が見え隠れするが、お見通しのイランは静観し、中立を保っているし、今後の参戦もしないだろう。)

中共が台湾に侵攻するうえでもっとも有利な状況・条件とは、世界の1つ以上の地域で大規模の米軍が出動していることであり、それが長く続けば続くほどよいわけです。

しかし、ウクライナ紛争は水面下で停戦に向けたオペレーションが進んでおり、ガザ紛争も停戦への動きが出ています。

1,2によりアメリカは疲弊してはいますが、米軍は温存されており、中共にとって圧倒的有利な状況とはなりませんよね。

3.トランプ再選が目前であること

⇒今年、アメリカ大統領選でトランプ再選の見込みが高く、もしそうなれば、トランプはウクライナ紛争の即時停戦を約束どおり実行することがほぼ確実。トランプは国益第一であり戦争を好まず、ネタニヤフとも折が合わないため、ガザ停戦に動く可能性が高い。

​トランプはプーチンと良好な関係であり、中露を分断する外交を活発化させる見込みが高く、これも中共にとっては好ましくない動きとなりますね。

習近平がもし台湾侵攻を仕掛けるとしたら、どのような条件が揃ったときなのか...

3.習近平がもし台湾侵攻を仕掛けるとしたら(2)


第二の条件としては、国内における習近平の威信がなくなり、「国家主席としての地位が揺らぐ状況に陥ったとき」

当局に対する国内の不満を外に向けるのは定石ですし、中国人民は『台湾は中国の一部』と教え込まれているので、台湾侵攻は、国威を発揚し、習近平と中共政治への支持と信頼を一気に取り戻すことができます。

4.2.習近平が台湾侵攻を仕掛けるその他の条件


他の条件としては、

・「軍事力比較でアメリカより優位に立っていること」

・「BRICS通貨が運用され、基軸通貨米ドルが弱体化していること」

・「非欧米経済圏が成長し、欧米諸国との貿易に依存しない状況が実現していること」

などが加わってくれば、中共にとって台湾侵攻を仕掛ける圧倒的有利な状況が整ってくると考えられますね。

ここまでの条件・状況が「数年以内に」中共に揃う可能性はいったいどれくらいあるでしょうか。

私は低いと考えます。

そして、トランプが再選することがあれば、中共も慎重にならざるを得なくなります。中共にとって最大の懸念は、トランプの再選でしょうね。

とはいっても、台湾侵攻のリスクがないと言っているわけではありません。

数年以内には起こらないとしても、5年から10年という中期的な時間軸で考えれば、「想定しておくべき有事」であることは変わりません。

・もし中共が台湾に侵攻したら、日本政府はどう対応するのでしょうか。

・憲法を改正して、自衛と謳い、自衛隊を「派兵」するのでしょうか。

・その時、米軍は出動するのでしょうか。

・アメリカは「日本は同盟国だから当然米軍を動員させる。ウクライナ紛争と同じように武器弾薬と資金の支援しかしないということはない」と確約するでしょうか。

と、考えなければならない論点は山積みですね。


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