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【店舗ロゴの制作過程、1から100までぜんぶ見せ】一貫したイメージづくりは、「コンセプト」から始まる

大切な事業だからこそ、ロゴだけで完結させないことが重要です。


いつもご覧いただきありがとうございます。
ロゴデザイナーのかべちゃんです。

皆さんは
製品やサービスの「魅せ方」を総合的にデザインできていますでしょうか?一貫したイメージを持たせることができていますでしょうか?
製品やサービスに関わるメンバーの皆さまと、共通認識を持って動けていますでしょうか?

もっというと、
まずは「コンセプト」ちゃんと作れていますか?
というお話をしたいと思います。

ロゴの前に、「コンセプト」を定義

私はロゴを制作する時、ロゴ単体で考えることは多くありません。
デザインに入る前に「コンセプト」で製品やサービスの価値を定義し、ロゴデザインをする。
そしてロゴから派生する世界観も見据えて提案することが多いです。

コンセプトをまもりつつ、ロゴをもとに世界観を拡張する


ロゴを作るのがゴールではなく、
ロゴを作る対象のアイデンティティをつくる。


今回ご紹介するのは、とある店舗のトータルデザインの事例です。
「製品やサービスをより魅力的に見せたい」と考える経営者の方に向けて、コンセプト、ロゴ、トータルデザインのプロセスを公開します!


そうすることで、チームでどのように共通認識をもって作っていくのか、そのなかでまずは「コンセプトをつくること」がどれほど重要かを感じてもらえるようなnoteが書ければと思っています。

全体像はこちら。

では、順番にご紹介していきます!


【❶事業背景のヒアリング】

クライアントは、静岡県下田市老舗寿司屋美松」の、
4代目寿司職人、植松さんです。

2024年秋、下田に副業寿司職人育成の場となる立ち食い寿司の新店舗、
寿しらぼ302」をオープンさせるにあたってのロゴデザインが必要となり、お声がけ頂きました🍣 ( 寿しらぼ302について知りたい方はこちら )

まず最初に私が植松さんにお伝えしたことが、こちらです。

「寿しらぼ302が、要はどんな存在でありたいのか、
目指す方向がなんなのか、どんなストーリーや空気感をまとっているのか。
それをまとめた"コンセプト"を作りましょう。

事前のヒアリングで寿しらぼ302がやりたいことの "輪郭は" 、伝わっていました。ただ、明文化されていないがために、植松さんが都度関係者に1から伝えないといけないコミュニケーションコストが発生していたり、「寿しらぼ302」づくりに関わるメンバー間で、誰もが納得する形で共通認識が取れていないという課題を感じました。

ですので、まずはデザインを作る前に、寿しらぼ302の核となるコンセプトをしっかり明文化し、植松さん自身も、そして寿しらぼ302を一緒につくるメンバーの皆さんも立ち返ることのできる判断軸をつくることが重要でした。

そうすることで、店舗のデザインから実際の体験、SNSにいたるまで、発信するメッセージにブレや迷いをなくすことができます。

マインドマップを用いて実施したヒアリングはなんと…4時間

植松さんの人柄、過去の経験、失敗、学び、現在の悩み、大事にしている価値観、目指したい未来、お話している時の空気感…全てがヒントになります。

【❷ロゴデザインのヒアリング】

ここまでは「想い」の話。
ここからは、ではそれを「視覚でどう伝えていきたいか?」の話。

案外、「視覚でどう伝えていきたいか?」をはっきりイメージすることは誰でも難しいです。
ですので、前半のヒアリングで出てきたワードをもとに、視覚的に「これは近い」「これは違うかも」でゴールイメージの統一を図っていくことがポイントになります。

今はぼかしていますが、実際は他のロゴの参考事例をもとに、
どのあたりを目指すかを話し合いました。

ここで決まったのが、

A. 4代続く寿司屋の歴史を感じさせる、the 和風のロゴ
B.  新しい寿司屋の在り方を伝えるような、シンプルandモダンなロゴ

2つの方向性で見てみよう、ということでした。

いったんここで材料集めは完了です!
さあここからどのように寿しらぼ302の信念を表現していくか!?

【❸コンセプトの提案】

ロゴデザインに入る前に、まず、コンセプトを提案します。
紙に書き出しながら、ヒアリングの内容を1週間ほどかけて整理していきました。

寿しらぼ302が、要はどんな存在でありたいのか、目指す方向がなんなのか、どんなストーリーや空気感をまとっているのか。植松さん自身も、そして寿しらぼ302を一緒につくるメンバーの皆さんも立ち返ることのできる判断軸を明文化するための作業

出来上がったのもがこちらです。↓

「一言コンセプト」+「ストーリー文」の構成でご提案。
自分がやりたいことがこの1ページに集約されていて、人にも伝えやすいです!と、1発OKをいただきました。

植松さんのこれまでの経験、そこで得た価値観、課題感、それを踏まえてなぜ寿しらぼ302をやりたいのか…それが「つながる、実験」という言葉に集約されました。

一言コンセプトに加えてストーリー形式で補足することで、なぜ「つながる実験」がしたいのか、その背景や文脈を知り、立体的にコンセプトを理解できるようになります。

今までの話が、一旦「コンセプト」に集約されました。ここから、コンセプトをもとに各要素を展開していきます!

【❹タグラインの提案】

タグラインという言葉をご存知でしょうか?

「私たちが要は何なのかを端的に表す言葉
「アイデンティティを印象的に伝える言葉」と定義されることが多いです。

お口の恋人LOTTE、ひとのときを想うJT、あったらいいなをカタチにする小林製薬、みたいなかんじの、アレです。

私はこのように提案しました。

つまり、寿しらぼの「らぼ」は、
いわゆる機械的な実験室とか、真面目な探究のような意味合いではない。

面白い出会いが生まれたり、寿司を通して新しい自分の可能性を発見できたり、なにかワクワクが創造されるような、そんな空気感が漂う意味での「らぼ」。だからこそ「クリエイティブスペース」という言葉がふさわしいと考えました。

「つながる、実験」というコンセプトをふまえて導けた言葉です。

ちなみにキャッチコピーも制作しました。
「つながる、実験」という寿しらぼのコンセプトを、
未来の副業寿司職人の皆さまにダイレクトに伝えられるように、新たなメッセージに変換します。

【❺ さあ、やっとロゴデザイン! 】

こちらのセクションは、制作の裏側覗き見、というような感じでお楽しみください🎨(肝心な部分なのでちょっと長いです)

アイデア探しのポイントは2つ。

一つ目のポイントは、最初に頭の中にいくつかのキーワードを持っておくこと(左脳)。↓

頭の中でこんな感じで連想ゲームをしています

2つ目のポイントは、偶然の産物で生まれるアイデアもあるため似たカタチでも良いのでたくさんラフを描くこと(右脳)。↓

紙で自由に描いていく。すると・・・

とにかく地道にラフを描きまくって描きまくって、泥臭くのたうち回りながらアイデアを探しています笑

ひらめきました。ロゴの神様降臨、ありがとう。私はこの現象を「ロゴの魔法」と呼んでます

家紋風に ◯+三 を描いてみたら、
お皿にのったお寿司に見えてきました。

デザインソフトでアイデアを起こし、ブラッシュアップします。

🤝・🤝・🤝 第一回ご提案🤝・🤝・🤝

今回は7割の段階で2種類ご提案し、選ばれた1案をブラッシュアップする進め方でいきました。

提案資料の抜粋。Aは伝統寄りのデザイン。3つのお寿司のお皿を並べて、寿司を通して職人とお客様がつながれる場所であることを表現。Bはシンプルモダン寄りのデザイン。9つの寿司の絵皿を並べ、多様な職人がそれぞれのクリエイティビティを発揮しながら寿司を握れる場であることを表現。

ここで出た意見は下記の通り。

「新しい」感も大事だが、下田や創業88年の美松の「伝統」のDNAを表現したい。
敷居を下げつつも、しっかり寿司握りが学べる。「本格的」であることを伝えたい。

その結果、Aのデザインの方向性で決定しました。7割段階で見え方の方向性をざっくり共有することで、今まで言語化できなかった理想の見え方を議論することができ、納得感を持って進むことができます

🤝・🤝・🤝 第二回ご提案🤝・🤝・🤝

3つのお寿司のお皿で、寿司を通した「つながり」を表現する。
ここからは、「神は細部に宿る」のブラッシュアップ作業です。

を使ってのロゴ作り。

デジタルでは出せない、アナログの魅力を存分に発揮させたいと思います。半紙を使って実際に書いて、デザインソフトにスキャン、ロゴらしくカタチを整えていきます。

半紙に実際に書く。アナログとデジタルの行き来。
手書きで描いたザラザラ感が残っているのがわかりますか?✨
「より良いカタチ」を見つけるために泥臭く検証していく。


こうして時間をかけてブラッシュアップした最終案がこちらです。

ロゴデザインの解説

ブラッシュアップ作業は必ず行います。
産みの苦しみを一番味わうポイントですが、ここでの作業が、
クオリティの高さと、アイデンティティの強さに影響するからです。

【❻デザインコンセプトの定義】

最後、他のクリエイティブへの拡張をしていく・・・のですが、

つくったロゴを、そのまま貼り付けていけばいいんじゃないの?

というのは100%そう!ではありません。

アイデンティティが守られていれば、ロゴをそっくりそのまま使わなくても良く、もっと魅力的な方法で事業のオリジナルの世界観を表現していくことができるのです。

「つながる、実験。」のコンセプトに内包されるデザインの形容詞(デザインコンセプト)を作ると、世界観づくりの判断軸になります。

今回は、植松さん&店舗空間設計チームの皆様との打ち合わせからもヒントを得ながら、この5つのキーワードを導き出していきました!

形容詞をつくると、チームでプロジェクトを進める場合は特に、目指すべき方向性が感覚的にイメージしやすく、共通認識が持てて良いです。この5つキーワードを感じるようなかたちで、各種クリエイティブに展開していきます!

【 ❼各クリエイティブへの展開 】

やっと最後のフェーズです!作ったデザインコンセプトを軸としながら、各クリエイティブに展開していきました。見て頂けるとわかると思いますが、全てコンセプトを元にデザインに降ろしてきているので、どのクリエイティブからも一貫したイメージを感じて頂けるのではないでしょうか。

🍣・🍣・🍣 店舗のれん 🍣・🍣・🍣

大きな白地ののれんに、家紋風に上品な大きさで「三」「◯」「二」を配置。伝統的な感じを出しつつも、両端には「美松」の落款印とキンメダイ型の「下田」があり、遊び心も感じるデザインに。
ボツ案。のれんの大きさや巾の数も含めていろいろ検討しました!


🍣・🍣・🍣 職人服 🍣・🍣・🍣

胸ポケットには、ロゴで使用されている丸と「寿しらぼ」を組み合わせて、伝統的な和の雰囲気に。一方、袖にもロゴの要素を縦に大胆に配置することで、一般的な寿司屋ではないような、ちょっと面白そうな感じを出しています。
ボツ案。色々と検証しています。この他にも10種類くらい。


🍣・🍣・🍣  名刺 🍣・🍣・🍣

紺色は、下田の街に見られる原風景「なまこ壁」のカラー。
寿司屋の伝統感もありつつ、三◯二のパターン柄で手触り感も感じられるデザインに。

現段階ではカタチになっていないですが、想定される他のツールも色々作成していました。今後さらにデザインを展開していくことになった際に参考になると思います。

箸袋のデザイン
お寿司お持ち帰り用の紙袋
掛け紙。


〜最後に〜

ロゴ制作のnoteかと思いきや、実際はロゴ以外の話も多かったのではないでしょうか。
事業全体で考えればロゴデザインはほんの一部の話、とはいえ事業の判断軸となるコンセプトと密接に関わっていることも感じてもらえたのではないかと思います!

全ての要素の判断軸となるコンセプト。

ロゴ制作の本質とは、

いかに価値を引き出して、コンセプトを的確に伝えるか。

コンセプトとは事業の"信念"のようなもので、
事業の"信念"が定まっていない段階でデザイナーに頼んでしまうと、
デザインの判断基準がバラバラになってしまい、魅せ方もバラバラになって何を伝えたいのかわからなくなってしまいます。

逆にいうと、コンセプトが定まれば、中長期的に様々な意思決定が楽になりますし、結果お客様にも事業の魅力が伝わりやすいです。

ただ綺麗にビジュアルを表現するデザイナーではなく、信念を可視化する伴走者として、皆様が本質的に伝えたいことを魅力的に伝えられるよう精進してまいります!

💐・💐・💐
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