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テレワークが人工知能(AI)と労働者の代替を進める?

1.はじめに

 新型コロナウィルスへの感染対策として、テレワークを導入した企業も多いと思います。かくいう私が所属する事務所も、テレワークが導入されており、私もテレワークを取り入れた働き方をしています。

 実際に自分がテレワークを行なって見ると、テレワークのメリット、デメリットが色々見えてきましたね。顧客へのアドバイスも実体験を踏まえできるようになったと思います。
 さて、私が実際にテレワークをしてみて感じたことは、テレワークは、従来の日本的な働き方とは馴染みにくいものであるなというところです。
 他方でテレワークはいわゆるジョブ型とは相性がいいようにも感じました。

今回はテレワークとジョブ型雇用、ジョブ型雇用と人工知能(AI)の関係性について、自分なりの考えをまとめてみました。

2.職能型の働き方と職務型の働き方

(1)職能型の日系企業

 従来型の多くの日系企業では、賃金を職能制度に基づく格付けで決定しています。そして、この格付けは、基本的には、勤続年数によって上昇していくものとして考えられ、その結果、年功型序列型の賃金システムが採用されることになります。このような賃金制度のものでは、仕事に対して人が割り振られるものではく、人に対して仕事割り振られることになり、その業務も多岐に渡ることが多い傾向にあります(ジョブローテーションで色々な業務を担当する会社員が多いです)。このような制度の下では、個々人が対応すべき、業務の範囲は不明確になりがちでした。

(2)職務型の欧米企業

 他方で、欧米企業では職務型の賃金システムが多い傾向にあります。この制度では予め決まっている業務に対して、人が割り振られるため、個々人の業務の範囲は明確です。特定の業務を行うために従業員は雇い入れられ、業務の範囲もジョブディスクリプション(職務記述書)で明確に定められている傾向にあります。

3.職務型の働き方とテレワーク

 ところで、初めてテレワークを導入した際に、会社が直面する問題の一つは業務管理の問題です。テレワークでは、会社の業務管理の度合いはオフィスでの勤務の場合と比べて弱まります。そのため、会社は、従業員に明確な職務指示を出し、その業務をどの程度の時間で、どの程度のクオリティで実現したかで評価を行う必要があります。今まで、従来型の働き方で曖昧にしていた業務範囲も明確にしなければなりません。この結果、会社内で業務分析、業務の切り分け及び明確化が進むのではないかと思います。
 そのためテレワークを導入すると、会社は職能型の働き方から、各々の役割分担が明確化されていき、緩やかに職務型の働き型に徐々に移行をしてゆくと考えられます。このように考えるとテレワークは職務型の働き方と相性が良いと考えられるのです。

4.職務型の働き方と人工知能(A I)の関係

 ここまでは、テレワークと働き方の関係でした。
 では、テレワークを導入し、職務型の働き型が定着した会社は今後どうなるでしょうか。
 一つの傾向として、業務の外注がより進むと考えられます。業務の分析が進むと、必ずしも自社の社員に行わせる必要がない業務、外注した方が採算の合う業務も発見されると思います。会社としても生産性という観点から、全ての業務を従業員に行わせるのではく、外注を広げていくと思われます(もちろん、「労働者性」の問題等があるため、慎重に進めるべきですが)。

 さらに想定される事態は、人工知能(A I)と従業員の代替がよりスムーズに行われるということです。

 先にも述べましたが、従来方の職能形の働き方は、個々の従業員の職務範囲が不明確な傾向にあります。その結果、特定の業務が人工知能に代替されたとしても、別の業務に配置すればよいということになるでしょう。また、従業員に求められる業務が明確に特定されていないことから、従業員と代替する人工知能に学習させる入力用の訓練データも出力のために必要となる正解データも作成が難しいため、人工知能にどのような業務を行わせるか命令がしにくいことになります。その結果、職能型の働き方では、従業員が人工知能に完全に代替されるという事態は起きにくいと考えられます。

 他方で、職務型の働き方の場合、従業員は特定の業務を行うために雇用されているため、その業務が人工知能で代替されるとなると、その従業員の配置を変えてまで、雇用を維持することを会社も想定されていないと思われます。また、業務範囲が明確である以上、人工知能の学習用に入力するデータも、出力のための正解のデータも比較的容易に作成できるため、特定の業務を行う従業員との代替は容易です。この結果、職務型の働き方を採用している会社では、人工知能に任せられる業務は従業員は雇用せずに、人工知能に行わせ、人工知能ができない業務を行う従業員を雇用していくという傾向がより顕著になると思われます。

5.終わりに

 以上が実際にテレワークをしてみた雑感です。コロナウィルスは大きく社会を変えました。今まで、テレワークを導入していなかった企業も、この機会に真剣に検討し、実際にテレワークを導入した会社も今となってはたくさんあります。
 その意味で一連のコロナウィルス騒動は、日本の働き方を改革のきっかけとなった出来事となるのではないかと思います。

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