ジャン・ポール・ベルモンドの映画「レ・ミゼラブル」1995年制作版を見て思ったこと
監督 クロード・ルルーシュ
音楽 フランシス・レイ
ミシェル・ルグラン
主演 ジャン・ポール・ベルモンド
過去に何回も映画化ミュージカル化されたビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」
今回新宿武蔵野館でジャン・ポール・ベルモンドの特集の中にレ・ミゼラブルがあった。映画化された中で最高の出来と聞いていたが、未見だった。監督も音楽も俳優も素晴らしいので、気合いを入れて見に行った。
主演のジャン・ポール・ベルモンドは、ひとり三役をこなしている。
①主人公のアンリ・フォルタン役
②アンリの父親役 名前が同じくアンリで、ややこしい。
③レ・ミゼラブルのジャン・ヴァルジャン役
ビクトル・ユーゴーの原作は1815年から1833年辺りの物語だが、
ルルーシュの映画では、第二次世界大戦前後のフランスに舞台を置き替えている。ナチスドイツのフランス占領、連合軍のノルマンディ上陸が描かれている。
それにしてもフランス映画でナチスドイツによる占領を題材にしたものが、なんと多いことか。それだけ人々の心に深く根差した感情が、いつまでも受け継がれているということだろう。
予備知識無しで映画を見始めて間も無く、昔読んだレ・ミゼラブルと話の展開が全然違うのに気がつく。ルルーシュが原作を好きなようにアレンジして、全く独自のストーリー展開で映画を作っているのだ。「男と女」以来のルルーシュ節ですね。
ベルモンドが三役こなしていると言ったが、その三役とも、時代こそ違えど、それぞれ時代に翻弄された人間の生き様が描かれている。
注意!ネタバレ有り
①主人公のアンリ・フォルタン
元ボクサーだが引退後、運送屋の運転手になる。レ・ミゼラブルの話を聞き人間愛に目覚めユダヤ人家族をスイス国境まで運ぶ。
②アンリの父親
父親は伯爵殺しの冤罪で収監。母親は再審費用のため売春までする。父親は脱獄に失敗し死亡。母親は後を追って自殺。
③ジャン・ヴァルジャン
幼い頃に両親を亡くし、姉に育てられた。姉の子のためにパンを盗み服役。四度の脱獄のため19年の刑で出獄。行く先々で冷遇されたが、司教は温かく迎え入れる。しかし司教が大切にしていた銀食器をヴァルジャンは盗む。翌朝、彼を捕らえた憲兵に対して司教は「食器は私が与えた」と彼を許した上に、残りの2本の銀の燭台も彼に持たした。人間不信と憎悪ヴァルジャンは司教によって改心させられた。
映画の挿入歌は、パトリシア・カースが歌った。これがめっぽう良かった。
La Chanson des Miserables
作詞 ディディエ・バルブリヴィアン
作曲 フランシス・レイ
Avant d'avoir été coupable
Tout le monde a été misérable
On a tous été Dieu et diable
On a tous été Jean Valjean
Avant d'avoir été minable
Tout le monde a été formidable
On a tous été admirables
Dans nos habits de pauvres gens
Des misérables
Des femmes et des amants
Des voyous, des charmants
Des banquiers des manants solvables
Des misérables
Des Saints, des innocents
Victimes à cent pour cent
D'avoir fait des châteaux de sable
Avant d'avoir été capable
Tous le monde a été misérable
On a tous été incroyables
On a tous été Jean Valjean
Avant d'avoir été pendable
Tout le monde a été intouchable
On a tous été perméables
Aux souliers d'or, manteau d'argent
Des misérables
Des femmes et des amants
Des voyous, des charmants
Des banquiers des manants solvables
Des misérables
Des Saints, des innocents
Victimes à cent pour cent
D'avoir fait des châteaux de sable
示唆に富んだ歌詞から、
かいつまんでみると、
私たちは皆誰でもジャン・ヴァルジャンだった。
神であり悪魔である。
誰でも二面的な善悪を持ち合わせている。
職業・性別・地位に関係なく誰でも心の弱さを持っている。
人生は砂の城のように儚い。
でも誰でも回復力を持ち合わせていて、
変化していける可能性がある。
私たちは皆誰でもジャン・ヴァルジャンだ。
なんだか泣けてくる歌詞だ。
ジャン・ポール・ベルモンドが三役こなした理由がわかるような気がする。
若い頃もカッコよかったが、
歳を重ねてシワの増えた顔の表情が実に味わい深かった。こんなジジイになれるものならなりたいねえ。
もう一度見てみたい映画に出会えました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?