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禁忌のタイムマシン ~第一章 タイムマシンの禁忌~

前回のお話はこちら


第一章 タイムマシンの禁忌

研究所に着いた。午後11時、あたりは真っ暗で人気がない。玄関から研究所へ入り、廊下を歩く。”タイムマシン開発部”ここも明日には取り壊されるのだろうか。そう思いながらドアを開いた。中には時間軸の資料や、数式の書かれた用紙が散乱している。俺はタイムマシン本体のある奥の扉を開いた。そこにはまるでドラゴンボールのサイヤ人、ラディッツやベジータが乗ってきたような球体の乗り物があった。俺は隣にあった説明書を読んだ。

  • このタイムマシンは未来にいくことは出来ません。

  • 過去を変える時は、周囲に気を付けて下さい。バタフライエフェクトが起こります。

  • 過去に着いたらまず自分を探してください。自分には絶対に見つからないでください。

  • 過去のものを現代に持ち帰っては行けません。

ふと説明書の下に走り書きのようなメモを見つけた。

時間を操作することは禁忌
禁忌を犯してはならない

「禁忌・・?これが取り壊される原因か?」

そう思ったが、ここまできてもう後には引けない。
俺は美咲に会うためにタイムマシンを使う。それが例え禁忌だとしても。

一通り説明書を読み終え、タイムマシンに乗り込む。球体のタイムマシンは一人用だ。狭いコックピットのような座席には無数のレバーやボタンがある。”20X5年8月9日”俺は5年記念日の前日をモニターに打ち込んだ。

「ピピッ!20X5年8月9日ガ入力サレマシタ。ヨロシケレバ出発ボタンヲ押シテクダサイ。」

球体内に機械音が響く。俺は赤く光っている「出発」と書かれた四角いボタンにそっと指を置いた。「もうすぐ会える。」そう言って、目を閉じ、ボタンを押した。エンジン音とキュイーンという機械音が鳴り響く。

「到着シマシタ。ココハ20X5年8月9日デス。」

気が付くとエンジン音は消え、球体内は静まり返っていた。「着いたのか。」そう思い、俺はタイムマシンから出た。「ここはどこだ?」あたりを見渡すとそこは森の中だった。「そうか、タイムマシンを隠せるよう着地場所は自動になっていたんだ。」ポケットからスマホを取り出す。スマホの画面は20X5年8月9日午前0時10分を表示していた。「俺が持ってきたものも過去のものになるのか。」ひとつ学びだな。そう思いスマホの地図アプリを開く。どうやらここは研究所の裏にある森らしい。地図アプリで現在地に印を付け、歩き出した。

「まずは自分に見つからないよう、自分を探すか。」

そう言って自分の住んでいるアパートを目指した。
俺はスマホの時間が20X5年8月8日23時55分になっていることに気づかず歩き出した。

アパート2階の部屋には電気が付いている。
「明日のプロポーズの練習でもしてるのか?」そう思い、過去の俺が寝るまで少し待つことにした。俺はポケットにあるスマホを取り出し、画面を付けた。”20X5年8月8日22時50分”「8月8日・・?!」時間が巻き戻っている。スマホアプリの時計を開くと秒針は見慣れた方向とは逆向きに回っている。「なんだこれは・・」このまま行くと俺は8月9日にたどり着くことができない。俺は一旦タイムマシンに戻ることにした。

再びタイムマシンの中に戻った俺は整理した。

  • 着いた日付は8月9日

  • 現在は8月8日22時

  • 今も時計は巻き戻っている

俺は過去に着いたとたん時間が巻き戻る世界に来てしまったのか。

近くにある公園の時計は午前1時を回っていた。俺はひと眠りしておこうとネカフェへ向かった。ネカフェには店員はおらず、受付のモニターが並んでいる。モニター画面の受付を押し、適当にブースを選択する。QRコードのついた紙が排出され、そこに書かれた番号の部屋へ向かい、腰を下ろした。「タイムマシンで俺は本当に過去に来たのか?」そう疑問に思い、ブース内のパソコンの日付を見た。20X5年8月9日1:30と表示されていた。ここは確実に1年前の過去だ。そしてそのまま眠りについた。

目が覚めた。スマホで時間を確認すると、20X4年8月9日と表示されている。「20X4年?!」俺は飛び起き、目の前のパソコンを見た。確実に20X4年8月9日だ。頭が混乱する。一度整理をしよう。

  1. タイムマシンで過去に来た日付は20X5年8月9日

  2. この世界の時間は巻き戻っている。

  3. 現在は20X4年8月9日

眠っていた間に俺は更に1年前にタイムスリップしてしまった。

序章 
第一章 タイムマシンの禁忌


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