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Epsode 8 -Life Theme 青年期 3


ありがたく内定を頂いた会社は、飲食業界の老舗で全国に350店舗展開する名古屋では誰もが知るソウルフードのお店である。
学生の時に飲食を選ぶ条件とは全く違ったが、飲食業界ということであまり心配はしていなかった。同期は30名以上はいた。なんでこんなに?
その時はわからなかった。スーツを着たのは最初の2週間くらい。あとは、私服とユニフォームだ。さすがに悲しくなった。そのころは、かなりスーツ
にもお金をかけていた。たしか、イタリアのブランドやアメリカの老舗ブランドだった。今ではとてもじゃないが買えない。。。
毎日、ラーメン屋の店舗で働く、2週間くらいで違う店に行き、いろんな店を回って修行する。
何をやっているんだ俺は?
と考える暇もなく肉体と精神が蝕まれていく。(鍛えられるのではない)
3ケ月後、よくわからないまま店長になる。数値管理からバイトの面接、
仕込みから閉店まで全部ひとりでやる。このころから、ぽつぽつと人が辞め始める。
きっかけは、同期が店で腹痛を起こし緊急搬送されたのだ、原因は胃潰瘍だったが、話に尾ひれ背びれがついて、ラーメンを食ったら胃が破れて運ばれた!とか怪情報が流れた。でも、その頃は「ありえる」と思っていた。このころから、急にやめる人が増えた。まあ、明日は我が身だ。。。
そんな中でも、若い連中と働くのはそれなりに楽しかったのと、バイトを面接して自分で選べるというのはよかった。この頃から、人との関わりには興味があったのだ。

7月初旬一宮で大きなお祭りがあるその朝、本部からの助っ人などなく、一人で仕込みをしていた時、かき氷のシロップの大きな瓶にぶつかって割ってしまった。慌てて拭くと手に痛みが。。。当たり前だガラスも一緒に拭いてたから刺さったのだ。こぼしたのがイチゴのシロップで、血なのかシロップなのかわからず、必死で片付けを終わらせた。
一番忙しい日に限って、けがはするし仕込みは間に合わないし、もう泣きそうだった。
とりあえず、チャーシューの肉がきれない。手が小さい傷で出血しているので食べ物は触れないのだ。タオルで巻いてほかの仕事を片付け、パートがきてからビニール手袋を買いに行き
なんとか、仕込みは終わらせた。忙しい日だったので、バイトを早めに入れていたことが幸いして、なんとかその日はクリアーできたが、心身ともにボロボロになった。
このころから、やめることしか考えられなくなった。

大学の悪友とも、休みが合わず遊べなくなり孤立した。パチンコで無駄な時間とお金を浪費し、なんでこんなことしているんだ、大丈夫か俺?と自己嫌悪の日々だった。
精神崩壊直前のとき、本部からゾーンマネージャーといわれるかなり上の人が来た。玉子ラーメンを注文、俺のラーメンをひとすすりして、「スープがぬるい」とだけ言って
返却棚に置いて、そのまま何の言葉もなく、帰っていった。
実は玉子ラーメンはスープの温度がよくわかるのである。熱いと白身が煮えすぎるし、ぬるいと白身が白くならない。
そんなことはどうでもいいのだ、人を馬鹿にした態度に嫌気がさした。ブチ切れて殴りそうになったが、どうせやめるし自分が不利になるので我慢した。
その日は業務をつづけ、次の日、本社に辞表を出した。自分でもよく我慢した1年だった。
ようやく、ブラックな環境から脱出した。新卒で入るとその企業が普通だと思ってしまうが、それは間違いである。
ある程度の我慢も必要ではあるが、精神を蝕むまで我慢する必要ない。
会社はそれこそ星の数ほどあるのだ。相性だったある。
こうして、今までのキャリア人生の中でもっとも地獄だった時代に終止符を打った。

次回は第二のキャリア人生について。

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