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【女性活躍推進法】改正されたことご存知ですか?|今さらではなく今から

ー女性活躍推進法がスタートして2020年で4年。

施行から3年目となる2019年5月29日に一部改正する法律が成立し、同年6月5日に公布されました。

この度の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、女性活躍推進法が改正されたことやその詳細までを知る人はまだ少ないのではないでしょうか。

今回、改正された内容と共に、改めてこの「女性活躍推進法」に取り組む理由を理解し、ポストコロナ「NEW NORMAL」時代の、男女共に働きやすい社会実現に向けて進化していきましょう。

女性活躍推進法の改正内容

この度の女性活躍推進法改正では、より幅広い事業主が対象となり、公表する情報の区分も強化されました。概要を下記の通り時系列で整理しましたのでチェックしてみましょう。

2020年4月1日施行
一般事業主行動計画の数値目標設定の仕方が変更
常時雇用する労働者数が301人以上の事業主が、2020年4月1日以降に一般事業主行動計画を策定する場合

<達成しようとする目標内容>
・新たに定められた下記の2つの区分ごとに1つ以上の項目を選択
「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」
「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」
・それぞれの数値目標を定め、行動計画の策定届を管轄の都道府県労働局へ提出従来は、全項目から1つ以上の数値目標を定めることが要件でしたが、改正後は①と②からそれぞれ1つ以上(計2つ以上)の数値目標を定めることが義務付けられました。

2020年6月1日施行
女性の活躍推進に関する情報公表の強化
常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表においても、数値目標と同様に2つの区分が設定されます。
「①職業生活に関する機会の提供に関する実績」
「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」
の各区分から1項目以上(計2つ以上)の情報を公表することが必要となります。

特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設
女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定である、現行の「えるぼし認定」よりも水準の高い「プラチナえるぼし」認定を創設。「えるぼし認定企業」のうち、取り組みの実施状況が得に優良であるなど、一定の要件を満たした場合に「プラチナえるぼし」として認定され、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。
(参考:厚生労働省『女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定)』)

2022年4月1日施行
義務の対象が301名から101人以上の事業主に拡大
「一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表」の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大。
常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業は、“努力義務”から“義務”へと変更となります。

女性活躍推進法とは?

「女性活躍推進法」(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、2016年4月に施行された10年間の時限立法です。少子高齢化により将来的な労働力の減少が予想される中で、女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律です。

女性活躍推進法において、企業が求められている実施義務
① 自社の女性の活躍状況の把握・分析
② 上記①の課題解決のための数値目標と行動計画の策定および届出
③ 自社の女性活躍に関する情報の公表
女性活躍推進法の対象
▼2016年4月〜
実施義務:常時雇用する労働者が301人以上の企業
努力義務:常時雇用する労働者が101人以上の企業
▼2022年4月〜
実施義務:常時雇用する労働者が101人以上の企業
(※上記労働者とは、パートや契約社員であっても1年以上継続して雇用されているなど、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を含める)
えるぼし認定
行動計画の策定・届出を行った企業のうち、実施状況が優良な企業は、「えるぼし認定」を取得できます。2020年6月1日から現行の「えるぼし認定」よりも水準の高い「プラチナえるぼし」認定を創設。
「採用」、「継続就業」、「労働時間」、「管理職比率」、「多様なキャリアコース」という5つの項目それぞれに基準が定められており、取り組み状況に応じて3段階の認定レベルがあります。
「えるぼし」認定のメリット
●社員のワークライフバランスが向上し、男女ともに働きやすい環境の整備に繋がる。
●自社の商品や広告などに認定マークを使用できる。
●自社の働きやすさを採用やサービスでなどでアピールでき、会社のブランディングに繋がる。
●各府省庁の公共調達や低金利融資において加点評価を受けられたり、両立支援助成金(女性活躍加速化コース)を受給することが可能になる。
●世界的にSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資が拡大しつつある中、企業を評価する基準として女性の活躍に関する情報は重視されており、経営のプラスになる。
(「なでしこ銘柄」:経済産業省と東京証券取引所が、女性活躍推進に優れた企業として選定し、投資家に紹介する取り組み)

女性活躍推進の現状

女性活躍推進法に企業も取り組みを進めてはいますが、現状はまだ目標との開きがあります。

出産後に退職している女性
「46.9%」平成30年11月 内閣府男女共同参画局)
女性管理職比率
【目標】
2020年までに企業内で指導的地位に女性が占める割合を30%に
【平成29年現在】
10.9%(課長職以上に就く女性管理職比率)
(参考:内閣府男女共同参画局「階級別役職者に占める女性の割合の推移」)

「ジェンダー・ギャップ指数」G7最下位
世界の中でも遅れを取る日本

ジェンダー・ギャップ指数2020
121位:153か国中
世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダー・ギャップ指数2020」報告書が、2019年12月17日に世界経済フォーラム(以下、WEF)により公表され、日本が前年の110位から順位を下げて153カ国中121位で過去最低。

1位:アイスランド
2位:ノルウェー
3位:フィンランド
4位:スウェーデン
5位:ニカラグア

10位:ドイツ
15位:フランス
19位:カナダ
21位:英国

53位:米国

76位:イタリア

106位:中国
108位:韓国

120位:アラブ首長国連邦

121位:日本

122位:クウェート

150位:シリア
151位:パキスタン
152位:イラク
153位:イエメン

<分野別>
・教育:91位(0.983)
・健康:40位(0.979)
・経済:115位(0.598)
→管理職やリーダーで女性が占める割合はわずか15%で131位/所得は男性の半分(108位)
・政治:144位(0.049)
→女性議員(衆議院)の割合10%(135位)で世界最低レベル/過去50年間で女性国家元首がいた国:68カ国 日本:女性の首相ゼロ

経済、教育、保健、政治の 4 分野の中で、日本が後れを取っているのが、経済分野と政治分野。いずれの項目においても、意思決定への参画やリーダー層の男女比において女性の存在が際立って低いといえます。(参考:Mind the 100 Year Gap

出世・昇進を望まない女性たち

管理職登用を望まない女性が「86%以上」
「そもそも女性たちが昇進を望んでいない。」という声が多くの企業から聞かれます。
日本総合研究所が、2015年実施した「高学歴女性の働き方に関する調査」によると、就業している女性(546人)のうち、管理職への登用を希望しない人の数は471人で、実に86%以上に達しています。

出典:日本総合研究所「高学歴女性の働き方に関する調査」

1位)48.4% :出世・昇進に対して関心が無い
2位)47.8% :私生活(育児・介護含む)の時間を重視したい
3位)45.2% :長時間労働を前提とした働き方は望まない


登用を希望しない理由をみると、「仕事と出産・育児両立の難しさ」や「ロールモデルの不在」など、女性にとって制度の問題や今の職場環境で出世することへの魅力の欠如、生き方に対する「女性の意識」の問題がありますが、これは今では男性も女性も似たような結果になるのではないでしょうか。

今まで男性社会が築き上げてきた、いい大学から有名企業に入り「出世・昇給すること」が幸せに繋がるとされてきた昭和の価値観。もちろん間違いではないですが、そのために、出世競争が全てで、無駄な長時間労働や無慈悲な単身赴任に耐える必要がありました。片や、出世競争に加わらない人間は、生涯役職も収入も上がらない事態に。

その価値観を変えていく流れが「働き方改革」ですが、まだまだ男性目線でつくった価値観と女性の価値観にはズレが生じている状況が続いています。
「女のくせに…」や「長時間労働」など、男性型の社会構造を見直し、女性も働きやすい環境や制度を経済や政治分野で整え、女性リーダーを周りが支援し、女性自身もリーダーになる主体性を持てる社会を作っていく必要があります。

女性の身体・健康問題も重要

男性と女性の身体は違います。男女の身体の違いや、女性ならではの特徴について男性が理解することも重要ですが、女性自身も特有の身体の機能や特徴をよく理解し、対処する必要があります。

経済産業省が発表した「健康経営における女性の健康の取り組みについて(2018年7月)」によると、月経随伴症状(腹痛、腰痛、眠気、イライラ、便秘など)による1年間の社会経済的負担は6,828億円、そのうちの労働損失(会社を休む、労働量・質の低下)は71.9%。

出典:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営における女性の健康の取り組みについて」

また、日本は乳がんや子宮頸(けい)がんの検診受診率が、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では最低レベル。仕事に家事に忙しい女性が増える中で、なかなか検診の時間を取れない状況にあり、病気の把握の遅れが懸念されます。

健康に対する取り組みは、男性はもちろんのこと、全従業員の約半数を占める女性の健康に対する取り組みを増やすことが、企業の更なる活性化につながると考えられます。

日本の社会風土から見直し、持続可能な社会づくりを

男性目線で築き上げてきた働く社会のプラットフォーム
アンコンシャスバイアス=無意識の偏見が根付く日本社会

「家事や育児は女性の役割」という日本社会におけるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏⾒)によって、今までは⼥性の⽅がキャリアを犠牲にせざるを得ない状況にありました。

「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という役割分担の考えが日本には色濃く残っています。

「女性はすぐに感情的になって場を混乱させる」
「女性はちょっと注意するとすぐに泣くから困る」

「女性は気配りが上手だから、アシスタント業務がむいてる」
「女性は機械系が苦手だから、パソコンの設定はやってあげよう」
「子育て中の女性に負担をかけないように仕事の量は減らしてあげよう」

など、「女はこうであるべき」といった無意識の偏見が女性活躍を阻んでいると言われています。この偏見が女性の成長機会や能動性を失っているきっかけになるのです。

女性活躍を推進する政界や官公庁の幹部
会社の役員や管理職はまだまだ男性が多数派

今後は、政策立案にあたっても、ビジネス社会においても、女性でなければ分かりにくい事情をくむことが重要になってきます。“男性目線”に偏った社会活動だけでは成り立たない時代です。

女性の意見を積極的に聞く風土づくり、それを柔軟に受け入れる変化のできる企業が増えることを期待しています。

ポストコロナのNEW NORMAL時代と言われる中、この女性活躍推進も過渡期にあります。新たな日常、新たな働き方に向けて改めてこの法律と向き合い、自社の現状や現場のニーズを把握することが大切です。

「うちの会社は大丈夫」、「今さら女性活躍なんて」、という会社こそ改めて見直しを。

日本の女性活躍推進はまだまだ。

今さらではなく今からです。
https://happywoman.online/academy/lifedesign/work/suishin_law/

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