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【長編小説】#2「私の生まれ変わりは、君がいい。」

《灯莉の友達②》

「…私、ずっと大好きな人がいるんです。」

 ハーブティーを一口飲んだあと、私は大切な宝物に触れるように、大事にその言葉を呟いた。

 落ち着いたおしゃれな音楽が、店内に流れている。カランカラン、と鳴る入り口のベルと、ほろ苦いコーヒーの香りが心地いい。初めて入るお店のはずなのに、どこか懐かしさを感じさせる。そんなカフェだ。だからだろうか。先ほどノースポールを見てからというもの、このお店に入ってからもずっと、彼女との思い出がどんどん脳裏に蘇ってしまう。

「彼女は、私にとってかけがえのない人で…。大切な友達なんです。」

 言っていて、ハッとした。私は真咲さんに何を言っているんだろう。彼女のことを思い出すと、無意識に気持ちが溢れてしまう。

「ごめんなさい。急にこんな話…。」

 俯いた私に「いいんだよ。」と、真咲さんが言う。ティーカップに添えられた私の両手を、彼が優しく包んだ。

「もし良かったら、聞かせてもらえないかな。灯莉ちゃんの…、大好きな人の話を。」

 その言葉に、私は顔を上げた。真っ直ぐに真咲さんを見る。穏やかに微笑んでいるのがわかった。

「はい。喜んで。」

 満面の笑みで、そう答えた。

 盲導犬のハルは、私の足元でおとなしく伏せており、今も私を守ってくれている―。

 私には、大好きな友達がいる。もう、この世にはいない。だけど、私の恩人で、大切な人で、ずっと大好きな人。もし叶うのであれば、もう一度会いたい。話したい。抱きしめたい。それらの夢が、この先もう二度と叶うことはないと、頭では分かっていても、願わずにはいられない。それほどまでに、私にとっては唯一無二の、かけがえのない存在。

 ―新村優葵(にいむらゆうき)。

 彼女は、生まれつき目が視えない、盲目の少女だった―。

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